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コラム
90話:人材育成、ITSS/UISS活用、人材評価、人事制度の関係 〜その1
 「企業のビジネス目標達成に貢献する人材を育成する」ことに企業は投資します。繰り返しお話しているように、ITSSやUISSの活用はあくまで手段であって目的ではありません。企業間比較や自社のバリューを表すことも、手段であって目的ではありません。
 では、目標達成のための人材育成と人事制度はどのような関係になるのでしょうか。
活用の考えと人事制度
 ITSSやUISSを活用する大きなメリットは、企業としての競争力、技術力にかかわる強みと弱みをスキルベースで認識できることにあります。したがって、経営者は経営資源としての人材の戦略的活用、経営戦略の見直しを進めることが可能です。一方、技術者個人にとっては、自らの市場価値を把握できる点で有益な指標と言えます。
 そう考えれば、ITSSやUISSの指標をそのまま自社の人事制度に導入する施策が意味をなさないことを理解できます。人事制度は企業の経営戦略上必要な制度であり、ビジネス貢献や市場価値と連動した処遇制度にすることで、企業と技術者の活力を高めていくものです。それを標準化することができるでしょうか。もちろん評価のために生かしていくことは大切ですが、まず企業の目標や戦略を議論した上で、取り組むことが前提になります。ITSS/UISSは参照モデルであり、人事等級制度ではなくIT戦略実現のための仕組みです。
 
活用成果の位置づけ
 重要なのは、ITSS/UISSを正しく理解して活用することであり、ビジネス目標実現のためのIT人材戦略の策定や企業間などでのスムーズな人材調達、また個人のモチベーションアップのために活用すること。この意識を徹底した計画立案や実践が、効率的、効果的なプロフェッショナル育成の推進につながります。
 ただし、導入すればすぐに大きな効果につながるわけではありません。製品のように、最初から完全な状態を求めるのではなく、企業としての明確な意志に基づき、継続的な活用を通じて改善していく姿勢が重要です。
 P.F.ドラッカーは、著書『経営者の条件』の中で、あらゆる企業が必要とする成果を次の3つの領域に分類しています。

・直接的な成果の領域
・価値の創造と価値の再認識の領域
・明日のための人材育成の領域

 この分類で言うと、ITSS/UISSの活用は、「直接的な成果の領域」ではありません。結果として成果につなげることを目標とするとはいえ、成果は自らの組織の外にあるためです。ITSS/UISSを企業の人材育成のために活用するのであれば、企業内の「価値の創造と再認識の領域」、「明日のための人材育成の領域」に照準を合わせる必要があります。
 また、一般的に使われている人事考課は、臨床心理学者や異常心理学者が治療用に開発したものが原点になっていると言われています(P.F.ドラッカー「経営者の条件」)。これがうまくいっていないこと、つまり人間の弱みを診断するために人間を評価する方法論と考えると、人材育成と評価は相対する位置にあることになります。ここからも、ITSS/UISSをどう活用するか、目的は何かを議論し明確にした上で導入を進めることが重要なことがわかります。

 その2に続く
▲▽ 関連サイト ▲▽
高橋秀典著「ITSSエンジニアリング」の本
登録:2011-01-30 15:52:05
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