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コラム
第99話:UISS、ITSSの入りやすい利活用法 その3〜一歩踏み出すための解説・第3弾です!
 98話は、UISSのタスク(機能)一覧を利用した組織機能検証と、システム的思考からの抽象化した機能の位置づけについて説明しました。今回はそこから生まれる気付きや、人材モデルについて話を進めます。
機能検証からの気付き
 UISS提供のファンクション群は、組織として必要な機能が網羅的に用意されていますので、自社の実情と比較検証することによって、以下の点が明らかになってきます。

・自社で十分カバーできている機能
・実施しているが、満足度の低い機能
・実施しているが必要以上に手厚くしている機能
・自社で実施していなくて、実は重要な機能
 すぐに手当てするべき機能、まだ先でいい機能
・現在、情報子会社やITベンダーに丸投げしているが、実は自社で持つべきコア機能
・現在、自社で実施しているが、本来情報子会社やITベンダーに任せるほうが良さそうな機能

 このように、UISS提供の機能一覧と自社のものと比較検証することによって、客観的な組織力の見える化ができ、必要機能が主たる機能か従たる機能かも明確になります。言い換えると、どこまでが責任範囲かを明らかにすることができるということです。
ITSSとUISSの傾向の違い
 この問題解決型アプローチは、トップダウン型アプローチと比較して、かなり取り組みやすいことがお分かりだと思います。しかし、よくある「どういうスキルが必要か」や「現状のスキル診断から入る」という次のステップに行きづらいものではなく、あくまで目的思考の強いアプローチです。これは、UISS/ITSSの利活用を進める上で、大変重要ですので、しっかりと意識したいことです。
 企業でビジネスを推進する場合、一人の人間が何役もこなしている場合であっても、それらの役割や責任範囲を明確にして職務・職能などを定義することが必要です。あるべき姿を求めるためには整理をすることから始まるわけです。これをUISSでは「人材像」と呼んで参考職種名をつけています。ISストラテジストなどがそれに当たることになります。
 一方ITSSでも職種名がありますが、こちらは人材像ではなく、分かりやすく言うと「カテゴリ」という位置づけになっています。さらに言うと、職種専門分野のあるレベルに定義されているスキルは参考値であって、たとえば10個定義されていても、すべて満足しないとそのスキルレベルをクリアできないわけではないということです。この辺りがITSSが理解しづらいという当初の悩みでもあったわけですが、V2からはそれらの説明文も削除され、当初の考えは薄らいでいるように見えます。その結果、現在はあまりそれにこだわらず、ITSSもUISSも「職種名=人材像」というイメージで定着しつつあるようです。
 結局ITSSは、キャリアフレームワークにとらわれすぎる傾向が続き、自社の人材像を標準に合わすという奇妙な流れを是正することができないままでここまで来ています。人材調達ではなく育成の観点であるのに、自社のビジネスモデルや戦略を入れ込むことができない状態では、その取組み自体を企業として継続することが難しいのは、言うまでもありません。
 それに比べUISSは当初からトップダウンでの利活用を明確にしており、人材像は自社で作りこんでいくものだという方針を明確に打ち出しています。その方針が浸透している証拠として、ITSSやETSSは教育ベンダがいち早くスキル診断ツールを用意して、人材像を標準に合わすという流れを加速させましたが、UISSは登場して1年以上経つ現在でも、診断ツールを作れずにいます。作りたいので何とかできないかという声はよく聞きますが、よく理解できていないのと、何の目的でそう言っているかがよく分かります。
「人材モデル」とスキル定義
クリックすると拡大  ここでは、ITSSの職種(カテゴリ)やUISSの職種(人材像)という同じ名称で別のものを指し、しかも分かりにくいという混乱を避けるため、「人材モデル」と呼ぶことにします。
 「人材モデル」とは、企業におけるビジネス遂行上の役割・責任範囲を機能視点で明確にし、スキル定義によりその内容を具体化したものです。

 先に述べたように、人材モデルは企業の戦略やビジネスモデルに合わせて作りこむものですが、スキル定義はUISSやITSSのものをできるだけ活用するべきです。
 筆者がコンサルティングを進めて行く中で、必ず課題として出て来るのがコンピテンシーと呼ばれるヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルです。UISSやITSSではコンピテンシーは定義対象外であると明らかにされていますが、企業で必要なのは「人材モデル」であり、UISSやITSSで定義されている専門スキルだけではなく、コンピテンシー系も必要になってきます。

 スキルは次の構造に分類されます。

・専門能力
 仕事をする上で前提として持っていないといけないスキル
・ヒューマンスキル(人間理解能力)
 仕事で成果を出すための実行力
・コンセプチュアルスキル(概念化能力)
 他者のレベルに合わせて物事を概念化・抽象化するスキル

 UISSやITSSで定義されているスキルが、専門能力に当たるでしょう。また、専門能力やコンセプチュアルスキルは、あくまで仕事をするための前提スキルですが、ヒューマンスキルは、それらを使って実行し成果を出すためのスキルと位置づけることができます。
 この有名なカッツ教授の関係図は、企業での役割と3つの能力の関係を示したものです。これを見ても実行力であるヒューマンスキルは大変重要で、役割に関係なく同じ割合で存在することが分かります。それに対し、経営層に近づくにつれ専門能力の割合は減り、逆にコンセプチュアルスキルの割合は増えて行きます。
 UISS、ITSSともに参照モデルであるために、共通化できるスキルのみを専門能力として定義してあるということです。そうすればコンピテンシーは、「人材モデル」を策定する側の責任で追加していく必要があります。共通化されたスキルだけを使って自社の「人材モデル」を策定するのは不可能です。多くのITサービス企業が目標人材と人材調達を取り違えている、または別視点であることを認識できていないのは、この部分の理解不足が原因でしょう。自社の「人材モデル」を策定するには、ビジネスモデル、経営目標などが基本ですし、スキルとして追加しなくてはならないものに、コンピテンシー、業界スキル、業務スキルなどがあります。
 UISSはこの辺りを当初から明確にしていますが、ITSSは最終形を提供しているという思い込みがあります。しかし、V2で表現されている参照モデルというキーワードを考えれば、理解することはできるはずです。
ITサービス企業もUISS活用プロセスを使えるわけ
 ITSSは顧客にサービスを提供する視点で書かれています。自社の内部に向けての記述は、教育指導以外ありません。当初有識者たちが、ITSSにはMOTの観点がないと批判していたのもうなずけます。言い換えると顧客向けの現場でのトップが一番上であり、企業内の経営層の定義やそこに至るパスがありません。これでは、経営戦略観点で人財育成とは、と言ってもうまく表現しきれないことになります。
 UISSでは人材モデルを策定できる材料と、策定手順を提供しています。「U」が付いているからユーザー企業向けで、ITサービス企業は関係ないと思うのは大間違いです。ITサービス企業にも経営企画など戦略を立てる部署もあり、経営者がいるわけですから機能を主体にやるべきことを明確にした上で、そのために必要なスキルを定義し、社内認定のためのレベル達成度を定義していくという考えが成り立ちます。
 そうすれば大手ITサービス企業が、中小から人材調達するためだけにITSSを使うなどという情けないことはなくなるのではないでしょうか。
 UISSの活用プロセスは、どのような企業にも使えるということです。
▲▽ 関連サイト ▲▽
UISS v1.1 、 UISS有効活用ガイド
登録:2011-01-30 15:53:48
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