最近、ユーザー企業のCIO、IT部門長の方から、IT人材の育成に関する相談を受ける機会が増えました。経営トップが掲げる戦略をサポートするために優秀なITスタッフを確保しておくことが、いかに重要であるかということが、ユーザー企業の間でも強く認識されるようになってきた表れではないでしょうか。 UISSやITSSに対する企業の関心も確実に高まっており、自社のIT人材戦略を練り直そうという動きは、2008年においてもますます活発化することになりそうです。
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UISSの意義と普及度合い |
ITSSから多くを学習してUISSが誕生しましたが、その現状などを再認識してみましょう。
・ITSSは、単一IT業界の中での位置づけや比較に使われている あるべき姿ではなく、ITSSフレームワークのどこに何人いるかという診断から先に進めていないIT企業が多い (To Beがなく、As Isだけなので次のステップが見出せない) IT業界に限定されるため、ユーザー企業では使いづらいとの判断がされている (ファイザーやリクルートは、UISSが無かったため苦労している)
・UISSは組織のあり方、人材のありかたを明らかにする論理的手法 To-Be業務機能から必要スキルを求め、現状とのギャップから育成プランをたてる 取り組んでいるところはかなりの真剣度(アフラック、三菱UFJ証券、プロミス、ヤンセンファーマ、T&D情報システム、インフォセンスなど) |
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人材育成を念頭に置いたUISSへの取り組み |
IT人材の育成というテーマに取り組むにあたって、まず欠かせないのは、「あるべき姿(To Be)」を描くことです。 その際に、いきなり「人材像」をイメージして必要な「ITスキル」や「コンピテンシー」に着目するのではなく、まずはIT部門に必要だと思われる「ファンクション(機能)」を考えてみるというアプローチを取ることが重要です。つまり、自社のビジネスを支えるために、IT部門が持つべき業務機能をあらためて定義し、その機能を回していくために必要な要素として「スキル」を位置づけるというやり方です。 このように機能視点でTo Beをまとめておけば、「IT部門にどういったスキルが必要なのか」についての関係者のコンセンサスが得やすくなるし、業務機能の次の段階である「人材像」を考えたときに、その責任範囲を機能レベルで明確化することや、持つべき「ITスキル」・「コンピテンシー」で表すことも可能になります。また、アウトソーシングすべき機能とそうすべきではない機能の切り分け、情報システム子会社との機能上での役割分担の明確化──といったことにも活用できることになります。 このような、ファンクションを切り口としたTo Beの策定は、情報システムにかかわる方であれば元来得意とするところのはずです。しかも、責任者やリーダーが音頭を取れば、すぐにでも実行に移すことが可能です。UISSは、その強力なツールとなるでしょう。 |
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責任者、推進者に求められること |
CIOや責任者、また人材育成推進者に求められることをまとめると、次のようになります。
・組織の人材ポートフォリオを確実につかむ ・組織力(弱み、強み)を明らかにし人材投資のPDCAを廻す ・組織に必要なTo Be業務機能を策定し、機能観点で社員、派遣、情報子会社、ベンダの役割分担を明らかにして効率的に総合力を上げる ・適材適所の実現、将来を視野に入れた効果的アウトソース コア機能、非コア機能の切り分け ・仕組みを策定するだけでなく、PDCAサイクルに基づいて継続的に運用し、改善へとつなげる |
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IT部門の現実と責任者の姿勢 |
実際にコンサルティングの中で感じるのは、CIOやIT部門責任者の考えが、現場のスタッフ、とりわけ中間管理層との間で共有できていないということです。こうした状況では、人材育成を推進したところで十分な効果は期待できないでしょう。責任者が発するメッセージや行動から浮かび上がる姿勢は、関係当事者のモチベーションに直接的に作用するからです。責任者の方々には「考えを伝える」だけではなく、自ら率先して「現場に下りていく」というぐらいの意識を持って、主体的に取り組んでいく必要があります。 |
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登録:2011-01-30 15:57:29
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