V3になってどう変更されたかは、IPAからの情報をはじめ、日経コンピュータその他の媒体からも情報発信されており、詳しくはそちらを参照いただくとして、今回は「ITSS」そのものの基本的な考え方について見て行きます。
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「ITSS」活用の視点 |
「ITSS」活用の視点は次の3点と考えることが出来ます。
@企業間での活用 自社のバリューや業界での位置づけを確認する、つまり「企業間比較」目的で使われることが想定され、「ITSS」を共通フレームワークとしてそのまま使用することが効果的です。 この場合は、「ITSS」に一切変更を加えずにそのまま使う必要があります。 また、スキル診断ツールは効果的ですが、提供元が独自に手を加えているものを共通指標にすることは、上記理由から難しいと言えます。 (同じツールをお使いのグループ内では、そのツールの範囲での比較は可能です。)
A企業内での活用 企業のビジネスモデル、ビジネスサイズ、また戦略などはそれぞれ異なるために、IT業界の共通フレームワークである「ITSS」を、そのままの形で使っても効果は見込めません。 企業が独自に1から考えるのではなく、「ITSS」のアーキテクチャをベースにすることによって自社の「目標人材像」の策定や、キャリアデザインをする環境の構築が、飛躍的にし易くなるのです。 ただし、派遣業・人材紹介業・コンサルティングファームなどは、目標人材像というよりも、それぞれ個人が「何ができるか」を中心に捉えることになるため、「ITSS」をそのまま使用することも可能です。
B個人への適用 属している企業とは関係なく、ITサービスのエリアで現在の自分にどのような価値があるのか、何処に位置づいているかを、「ITSS」のフレームワークの中で考えることは大きな意味があります。また、さらに強みを伸ばしたり、将来のゴールを設定し自らのキャリアをデザインすることが、モチベーションアップにもつながります。企業で仕事をする上でも、自分の価値、キャリアパス、ゴールを認識することで、その仕事の中に自分の将来にとってどのような価値があるかを見出すことも可能です。 |
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企業で育成すべき人材像をどう捉えるか |
企業が「ITSS」導入に積極的で、エンジニア個人はクローズアップされていないという現状は、残念ながらいまだに変わっていません。これまでの状況から、個人に浸透していくのはかなり難しいということになりますが、企業導入がうまく行けばその先で個人の理解が進むということも考えられると思っています。
このように現在は企業での取り組みが前提であるとすると、先述の@とAが当面の対象になるわけです。そう考えると、多くの企業が@のみに偏った導入をしていると言えます。言い換えると「企業間比較」のみで、自社が将来どうあるべきという議論が、欠落しているということです。以前から何度も出てきているToBeとAsIsの議論です。 しかもToBeは、「ITSS」の”どの職種のどのレベルが何人くらい”ではないのです。これはあくまで目安であり、自社のビジネスを支える人材像は、自社のモデルに合わせてしっかり考えないと意味がありません。ここで「企業間比較」と同じく、そのまま「ITSS」を使ってしまうと、どこを切っても金太郎飴企業のIT業界になってしまいます。自社のビジネスに貢献する人材像策定には、自社の「思い」を、また「魂」を込める必要があるのです。
「企業間比較」のためのITSS人材像と、自社で人材育成するために、その目標となる「人材像」は明らかに異なります。これは、そんなに難しい話ではありません。2つの活用視点で導入するなら、その両方を満足しなければならないことは言うまでもありません。 また、これらの話は導入や活用の手段であって、はじめからそれを「理解は出来るが、どうやって実現するのか分からない」と、あきらめたり制限事項にすることは、よくないことです。手段から入ると目的が不明確になり、エンジニアの方々が納得する説明ができないことにもなりかねません。
システム構築と同じで、ToBeばかりで現状を無視することはできませんが、あるべき姿を語るのは、会社の将来や夢を形にすることと同じです。これが出来ない企業に、エンジニアが魅力を感じるはずもありません。 |
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登録:2011-01-30 15:58:42
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