2002年12月に発表されたITSSですが、その基本的思想をしっかり捉えている方の圧倒的少なさに、驚きを隠せません。ITSSを有効に活用するには、基本思想を必ず理解しておく必要があります。自分はよく理解できていると思っている方でも、思わぬ落とし穴にはまっている可能性があります。是非再確認してください。
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「ITSS導入は、企業戦略から入らなければならない」・・の呪縛 |
以前からことあるたびに取り上げていますが、ITSSはいかに顧客にサービスできるかの観点のみの定義体・記述しかありません。自社の戦略を云々することはできません。では、どのように企業戦略から入ればいいのでしょうか。
さらに、キャリアフレームワークや各種定義体は、IT人材視点で記述されています。このような個人視点のものを、どのように企業に当てはめればいいのでしょうか。
上記の問題を解決できずに、多くの導入担当者は次のような行動を取りました。
・標準なのだから変えてはいけないので、そのままキャリアフレームワークのどの職種のどのレベルに何人いるかを明らかにすればいいのではないか。 ・経営者も、うちの会社はIT業界でどのくらいの位置づけなのか知りたがっている。 ・以上から、情報処理試験のように何人持っているか外部にアピールするのに使えそうだ。 ・そのまま人事等級枠に使えそうだ。
このような論理でスキル診断という手段に入って、そのまま毎年続けているという企業もあります。しかし、真剣に人材育成を考えている方々は、そのままでは共通フレームワークの中で現状把握しているだけだ、自社の意志が入っていない、To Beがないので次のステップがない、ということに気づくのです。スキル診断で気付きを得ることはできますが、そのまま続けてもあまり意味はありません。これでは導入しているとは言えないのです。
図のように活用の視点は次の2つで考え方が異なります。
・IT業界内での企業間比較、または調達など ・企業目標達成に貢献する人材の育成
人材育成と言いながら、左側の視点でしか活用できておらず、比較ばかりしているという状態の企業が、いかに多いことでしょうか。人材育成の観点が、完全にずれています。 |
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ITSS V.1.0に記載されていた重要ポイント |
今では取り上げる方もおらず忘れ去られた感がありますが、2002年に発表されたものには、現在のITSS V3のドキュメントにはない大変重要な基本思想が記載されています。
■ITスキル標準に基づいて人材育成、スキル開発を行ったとしても、その人材・スキルを効果的に活用し、統合していくビジネス戦略がなければ、企業の競争力向上には結びつかない。
■ITスキル標準は、辞書的機能を想定し、パブリックドメイン(公文書)として取りまとめて提示する。
■職種/専門分野はいわゆる人材像ではない。ITスキル標準は、辞書としての活用性を高める観点から、固定的な役割や職務のモデル化をまず行うのではなく、市場において顧客が必要とするスキルをまず浮き彫りにして、そのスキルの標準化を行う。
■辞書的機能としての一覧性や利便性、メンテナンスの容易性を確保する等の観点から、プロジェクトの局面に応じて短期的に必要となる個別の製品・サービス及び適用業務知識に関する要素スキルや、個人の適正や資質にかかわるような人間系のスキルについては、詳細な記述を行っていない。
特に3つ目は要注意で、「職種/専門分野は人材像や役割ではない」と明確に定義されています。この思想は今後も変わるものではありません。スキル標準の導入コンサルタントとして活動されている方々の多くは、職種を人材像・役割だと勘違いしています。
UISSもベースはITSSですのでITSSに対する深い知識は必須であり、受け売りや人まねだけでなく本当にスキル標準をよく理解しているコンサルタントかどうかは、この点を問うだけではっきりします。 |
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登録:2011-01-30 16:00:01
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