スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
ITスキルスタンダード研究所
スキルスタンダード研究所についてニュースサービスドキュメントコラムお問い合わせ
コラム
第125話:ITSS/UISS、スキル標準導入失敗事例
 ITSSというキーワードが定着し、UISSはJUASの普及活動もあって、かなり注目を浴びているという状況です。スキル標準の活用を失敗に終わらせないために、今までの失敗事例を再度取り上げます。
定着しているITSS、これから企業が活用に乗り出すUISS
 ITSSやUISSの導入・活用について、各企業において様々な取り組みがされています。UISSは、JUASのセミナーやワークショップ開催による普及活動が功を奏して、今まさに盛り上がろうとしている段階ですが、ITSSについては一回りしてキーワードとして定着した感があります。
 しかし、その中で多くの企業が成功したとは言えない状況に陥っているのをご存知でしょうか?。再度それらを認識して、これからの取り組みに生かしていただきたいと思います。
スキル標準導入失敗事例の再確認
 次の4つの失敗事例は以前にも紹介しましたが、今回調べてみるとそのまま続けていながらフェードアウトしようとする雰囲気で有名無実であったり、担当者が替わっていて事実上活用を取り止めてしまっている企業がありました。

<ケース1 中堅SIベンダー>
・A社は、経営判断でITスキル標準を社内導入することを決定し、人事担当者をアサインして取組み開始。
・担当者が独自に調査した後、ほぼそのままの形でITSSを人事制度に導入。
 そのまま取入れたことで、会社のビジネスと食い違う役割・責任やスキルまで評価対象となり、技術者の評価が以前より下がる結果となった。役職にまで連動させたので、降格・減給になった技術者も出た。
・技術者の意見
 「長年かかって仕事をこなし会社に貢献して来た結果、役職も上がり給与も上がってきた。それがある日突然、ITSSを導入され、仕事の範囲とかけ離れた職種を割り当てられ、必要の無いと思われるようなことまで評価され、レベル2だと判定されて降格してしまった。ばかばかしくて続ける気がしない。辞めたい。」
 「事前にITSSの位置づけや係わり、評価との繋がりなどの説明を求めたが、納得できるような答えは無かった。単に国が決めたからの一点張りであった。」

<ケース2 地方ソフトハウス>
・B社人材育成担当者は、人材育成のためにITSSを取入れるべく調査開始するも、情報が少なく内容の理解ができなかった。大手ITベンダーに相談したところ、教育ベンダーを紹介された。
・営業が来て診断ツールを使った「スキル診断」をすることが、導入の一番早道だと説明を受け、デモを見て結果のグラフなどの説明を受けた。
・とにかくやってみようと技術者全てに、スキル診断ツールで自己診断させた。
・診断結果は、個人ごとにレベル、グラフや傾向など分かり易そうなものばかりで、その時点ではいい材料のように思えて満足した。
・その後教育ベンダーの営業は、診断結果をもとにしたトレーニング受講の提案を持ち込んできたが、大きな金額となっている上、今まであったトレーニングが並んでいるだけで、とても受け入れることができるものではなかった。
・それで、会社として次のステップは?と考えたとき、言われるとおりにした結果、トレーニングの提案を受けた事実しかなく、これでは今までと何の変わりも無いことに気づいた。

<ケース3 中堅SIベンダー>
・C社は、早くからITSSに注目していたが、自分たちでは理解度が低いし、上手く導入できないとの考えから、繋がりのある中堅SIベンダーに相談した。
・コンサルタントを紹介してもらったが、今までの人材育成コンサルの実績から信頼できると判断し契約した。
・コンサルタントは、技術者とのインタビューを繰り返し、何種類ものエクセルの表を使って、分析を実施した。約3ヶ月で終了したが、出てきた結果は様々な分析がされていて実態を表現しているように見えた。
・そのあと、自社でそのエクセル表を使って継続運用していく話しだったが、実際にやってみると現場技術者や、担当者に膨大な工数がかかって続けて行けるような内容では無かった。
・また、そのコンサルタントは分析や人事コンサルタントとしてはノウハウを持っていたが、ITSSについての説明が余り無く知識不足だった。結果として無理に合わせているような形になっていた。

<ケース4 中堅SIベンダー>
・D社は、経営者から指示を受けた人材育成担当者が、ITSS導入実施のため、調査をスタートした。
・情報が少なく理解が進まなかったので、経営者にコンサルタントの採用を提案したが、ITスキルのことを自社で出来ないのはおかしい、とはねつけられた。
・色々考えたが分からず、とりあえず診断ツールを使うことにし、XXXX万円かけてツールを購入した。
(考えることにお金を使うのはNGで、手段に費用が発生するのはOK?)
・1回目の診断を実施したが、実際と職種が合っていない、スキル内容が抽象的だなど、現場技術者からのクレームが殺到した。
・目標を決めずに、このまま続けても意味が無いと思いつつ、とりあえず1年後の2回目もやることになると考えている。
当たり前の「企業意志の注入」
 何かに合わせたり(この場合ITSS)、誰かの言う通りにするというのは、企業としてあまりに情けないアプローチです。経営者として、また人材開発・育成の責任者、推進者として、企業のあるべき姿を目指してスキル標準を活用するのは当たり前です。

 ITSSやUISSが難しすぎるのではなく、将来像を描くための意志、使命感、理解力、または能力が欠如していると、素直に認識して今までのしがらみを一掃しないと、何も見えてきません。

 スキル標準に「魂」を入れるための努力とコストが必要です。

 ビジネス目標とIT技術者・システム部門員、IT人材の将来を考えたプランニングのできない企業は、魅力のない企業となってしまいます。

 7年連続年間200本安打を達成したイチローは、こうコメントしています。
「低迷するチームの中にいて、自分のマインドを保つために必ず守っていたのは、試合後、一刻も早くクラブハウスを出ること」
登録:2011-01-30 16:00:24
 サイトの利用について | プライバシーポリシー | 情報資産管理方針 |
トップページへ戻る