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コラム
第126話:ITSS/UISS スキル標準で教育ベンダ・人材派遣企業が、顧客の真のソリューションパートナーへ
 アメリカ発の不況の波が拡大しつつあり、教育ベンダや人材派遣企業にビジネスの危機が忍び寄りつつある予感がします。
教育ベンダと人材派遣企業が置かれている現状
 ITSSやUISSというスキル標準が浸透しつつある中、人材育成の中核を担うべき教育ベンダは、ITSSキャリアフレームワークやUISSタスクフレームワークに、自社提供のトレーニングをマッピングして見せる、結局多くがそれだけしかしていないように見えるのは筆者だけでしょうか?
 また人材不足や企業のコスト意識の中で、人材派遣企業は順調に業績を伸ばしました。しかし、言われるままに人材を派遣してきて、この状況変化の中で、需要環境や受け入れ企業の考え方に左右されてしまい、結局戦略も何もあったものではない、そう感じるのは筆者だけでしょうか。
 全ての教育ベンダや人材派遣企業がこの通りだとは思いませんが、印象として強いものがあるのは確かです。

 これまでも同じような状況があり、企業は教育費のカット、及び人件費の削減を一気に進めました。結果として教育ベンダの売り上げは頭打ち、しかしコストがかかり企業責任もある正社員を敬遠して、いつでも切れる手っ取り早い派遣人材を使ってきた側面があります。
 ブラックマンディなど例外はあるものの、そのときに念頭にあったのは「時間が経てば元に戻りそう」という感覚で、事実ほぼそれに近い状態を経験してきました。

 しかし、残念ながら今回は、今迄のような単純なものではないようです。もちろん、教育費のカットや人件費の削減はあるでしょうが、並行して企業の成長やビジネスに貢献してくれる人材の保持・獲得・育成の機運は高まることになるでしょう。

 裏を返すと、企業側が選択に入り、今までのような「待ちのビジネス」ではなくて、プロアクティブなソリューションを提供してくれる教育ベンダや人材派遣企業しか残れなくなるということです。
自社の人材戦略を支援してくれる教育ベンダを選ぶ
 2002年末にITSSがリリースされて、2003年早々に教育ベンダは2つのことに手をつけました。1つは、ITSSキャリアフレームワークに、自社トレーニングメニューを紐付けること。もう1つはITSSのスキル診断ツールを作って、トレーニング受講に結びつけることです。

 2つの策とも教育ベンダとしては、至極当然な手段だと言えます。しかし、悲しいかな受け入れる側の企業の担当者の知識やスキルの低さを露呈した形となってしまいました。情報不足とは言え、その2つの策を何も考えずに受け入れて、それらを実施することがITSS導入・活用と勘違いしてしまったのです。また、研修メニューを作るだけの短絡的な考えも散見されました。
 125話でも失敗事例を紹介しましたが、今でも同じようなことを続けている企業が数多くあります。問題はそれでいいと考えているところでしょう。
 一方、それではダメだと気づいた企業もあり、大きく二分されています。

 企業のビジネスに貢献する人材の保持・育成・獲得をしっかり考えようとしている企業は、優秀な人材をその担当に当てています。しかし、どのような基準で考えればいいか、過去の経験からは、いい方策をなかなか導き出せないものでもあります。

 そうした企業は、次の視点で教育ベンダを選ぶことになると考えます。
もちろん、コンテンツ、人材などしっかりとした教育体制を持っているのは当然でしょう。

・スキル標準の考え方を理解しているか
・スキル標準導入のコンサルティングができるか、もしくはそれが出来る企業と組めるか
・人材育成プラン策定をコンサルティングできるか
・人材育成プロセスのPDCAをサポートできるか(教育の提供だけではNG)
・教育ベンダ自身がスキル標準を社内で活用しているか
人材派遣企業のこれから
 では、人材派遣についてはどうでしょうか。
パソナテックのように早くからITSSに着目し、うまく自社戦略に取り込んでいる企業はまれです。ほとんどの企業が、登録人材を独自管理し、企業のリクエストとマッチングする方法を取っています。また、教育ベンダなどが作ったITSSスキル診断ツールを使って、登録を促進することぐらいで、ほんの一資料にしか出来ていないのが現状でしょう。
 ここにきて派遣受け入れを拡張してきた企業が、歯止めをかけ出しました。その影響は、即座に人材派遣企業の売上減に現れだしています。人材不足から派遣単価も上がり続けてきましたが、逆に降下現象も出始めました。需要と供給のバランスが崩れてきたのです。
 さらに、受け入れ企業側が今後望んでいる方向性をしっかり把握できている人材派遣企業がどのくらいあるかは、?です。要望があるから人材を提供する、何とか登録人材を増やそうと努力する、送った人材のできが悪いとクレームを受けると別の人材を探してあてがう、この図式では需要側の都合でころんでしまうことになりかねません。

 受け入れ企業も、ファイザーのようにアウトソースも含めた総合力を意識し、それがゆえに人材育成も区別なく実施するという方向性が出てきています。
 つまり、単なる人の提供ではなく、パートナー企業としてみているということです。パートナー企業になるには、受け入れ企業に企業価値を評価してもらう必要があります。
顧客のソリューションパートナーへ
 今迄ITベンダやSIベンダが、顧客のソリューションパートナーを自称してきました。つまり、システム構築・運営のみに限定した話です。

 企業が求めるのは人材であり、人材の保持・育成・獲得を支援できる企業が、真のソリューションパートナーです。
 今後主役になるのは、教育ベンダや人材派遣企業が進化した姿です。

 今までの「待ち」のモデルではなくて、次のようなことができるソリューションカンパニーへと、トランスフォーメーションする必要があるのは、言うまでもありません。

・顧客の現状組織機能を検証する
・顧客の経営方針、事業戦略からあるべき組織機能を明らかにする
・組織機能を支える人材像を明確にする
・顧客の人材ポートフォリオ(A Is)を見える化する
・人材戦略やTo BeとAs Isのギャップから、人材育成計画、調達計画策定を支援する
・場合により、評価プラン策定なども支援する
・以上のプロセス運営(PDCA)を支援する
▲▽ 関連サイト ▲▽
第125話:ITSS/UISS、スキル標準導入失敗事例
登録:2011-01-30 16:00:35
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