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コラム
第127話:ITSS/UISSの活用 〜ITスキルとヒューマンスキル・コンセプチュアルスキルをどう組み合わせるか
 未だに質問が多いのは、ITスキルとコンピテンシー(ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキル)の関係です。ITSSやUISSは参照モデルであり部品ですから、人材像として組み立てるロジックが必要です。
仕事をするために必要な能力と、成果を出すための能力
クリックすると拡大  スキルは、カッツモデルの表現でいくと、専門能力、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの3つに分けられます。
 IT人材の場合、専門能力の主体がITスキルであり、ITSSやUISSはここだけを対象として定義されています。ただし、実際にはITスキルだけではなく、業務・業界系がないと仕事が出来ないのも事実です。これらの知識や能力も専門能力の分野に分類できます。

 図はITSSの第1部概要編に掲載されているものです。ITSSの範囲を示していますが、先の業界・業務、さらに要素技術系は入っていません。
 そして専門能力の定義体である「スキル熟達度」は、「仕事をするために必要なスキル」と考えることが出来ます。しかし、仕事をするための力があっても、必ずしも成果を出せるとは限りません。成果を出すためには、専門能力だけではなくて、遂行力、つまり一般的にはコンピテンシー呼ばれるヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルが必要なのです。


企業導入の目的と人材
 ITSSやUISSなどスキル標準を企業に導入する目的は、ほぼ間違いなく企業力・組織力のアップでしょう。個人のスキルアップを促しますが、ゴールは「ビジネス目標達成に貢献する人材の育成」に他なりません。
 そう考えると、企業や組織が持つべき機能から入るべきであって、いきなり人材やスキルから入ると、目的と合わせていくことが難しくなります。その方法で進めている担当者に、色々質問を投げかけても、うまく説明できないのは、これが原因です。
 この考えで進めると、人ではなく機能にスキルを紐付けることになり、はるかに分かりやすいアプローチになります。組織力強化を一番に挙げているUISSは、我々が進めるこの方法論を採用しています。

 人材像とスキルを結びつけるのは、人材像構築の最後の局面です。
各人材の役割分担を考え、人材が責任を持つ、もしくは関係する機能を特定し、そのサブセットとなっているスキルを、その人材のスキルセットとするのです。

 こうすると、組織力を上げる、そのためにどのような機能を持つべきか、さらに人材はどのようなスキルを持つべきか、という具合に導入を進めることが出来ます。IT系の方なら、このアプローチは容易に理解でき、社員の方にも説明責任を果たせることにもなります。
コンピテンシー(ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキル)の扱い
 ここで慣れない推進者の方は、機能にヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルをセットしようとする場合があります。これは、完全に考え違いです。
 機能に専門能力をセットすることは可能ですが、遂行能力に当たるコンピテンシーは、人材像に対してセットすべきものです。

・機能のサブセットとして、その機能を実現できる専門能力をセットする
・自社の目標達成に必要な具体的人材像を、人材類型・人材種別などを参考にして設定し役割分担した上で、関係する機能を特定する
・各人材像が受け持つ機能のサブセットであるスキルセットの総和が、その人材像が持つべきスキルセットとなる
・コンピテンシーは、その人材像に必要とされるものを付加する

 以上の流れですが、次に、各人材像にスキル標準のキャリアフレームワークのアーキテクチャを使って、レベルを付けていくことになります。そのときの、レベル共通にコンピテンシーを割り当てたり、人材像・レベルの単位で割り当てたりすることが一般的です。
「スキル」と「キャリア」
 スキル標準の導入検討時に必ず話題になるのが、「スキル」と「キャリア」です。
多くの方が企業に属している限り、自身のキャリアは企業から大きな影響を受けます。

 ITSSの作成の目的のひとつに、人材の流動化を促進するというものもありますが、企業の枠を越えて考えることは、現実的には難しいことでもあります。

 さらに企業導入する場合は、スキルアップさせることが一番に来ざるを得ない状態です。なぜなら、キャリアを語れるほど成熟している企業、組織、推進者が少なく、また人事制度的にもうまく連携したものを持っていないという現実があるからです。

 頭でっかちな方々は、理論やあるべき姿ばかり掲げて、現場を見ていない場合が多いと言えます。スキル標準はいい内容で理解はできても、やはり、いきなり全てを活用することは難しいのです。

 ITSSのような初めての仕組みに出会って、IT企業は右往左往しスキル診断のみに走りました。未だに続けている企業は論外ですが、それもきっかけ作りとしては間違ってはいません。
 UISSは誤解されないようなアプローチを取って、うまくフライしようとしていますし、ITSS初期の取り残された企業を除いて、今は次のステージに進んでいます。

 そのステージが、まさに説明できる方法で、機能や人材像を構築し、現状把握とあるべき姿へのスキルアップを図っていくというものです。

 キャリアについては、企業と個人が考えるものであり、標準化されたもののなかで定義していくことは出来ません。ITSS初期に多くの企業が、合わせることばかりに走ってしまったという苦い経験を活かし、キャリアに関しては、企業目標や個人のゴールを議論する中で、頭を使って創造して行きたいものです。
登録:2011-01-30 16:00:46
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