コンサルタントという仕事柄もあり、経営者、経営層、CIOなどの方々とお会いすることが多い中で、すべての方々がIT人材の育成に関して、最優先事項として捉えられているのが浮き彫りになります。ITが経営を支える時代、さらに言うとIT人材が経営戦略策定にまで踏み込んで行かないと、競争力を確保できない世の中になってきたということです。
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経営層の心配事 |
社長やCIOを含む経営層の方々には、企業として目標を達成するために、どのような人材を必要としているのか、またどのようなタスク・プロセスが必要なのか、それを受け持つ人材の役割や責任範囲はどうなのか、という観点で、お話をお聞きします。 その中で、皆さんが口を揃えて言われる大変特徴的な内容をご紹介します。
・社員に対して 危機感が無い 社会人としての常識に欠けている 自社が置かれている環境や状況に無関心 自らの役割を認識していない 勉強しない・向上心がない ・マネジメント層に対して 受身 的確な判断ができない 部下を適切に指導できない 優先順位がつけれない 責任を取れない リーダーシップがない |
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マネジメントの力量不足 |
社会人としての常識については、家庭環境などにも左右され、両親の考え方や育った環境にも大きく影響されると考えられます。ただし、この点は社会に出てからであっても、適切なトレ−ニングを施すことによって、ある程度カバーできる部分でもあります。 それ以外のものについては、仕事をする中での事象で勉強しながら体得していくイメージが強いと言えます。しかしながら、基礎知識に関しては、事前にトレーニングを受けて学んでおくことが前提になります。さらに、実際の仕事の中で、そのような状態に遭遇したときに、一番重要なのが直接的に接するマネジメントの存在です。 マネジメントの適切なアドバイスによって、大きく踏み外すことなく経験しながらスキルを高めていくことができるのです。経営層が社員の方と四六時中話ができるはずも無く、一番大きな影響力を持つのは、当然ながら上司ということになります。
そのマネジメント層の方々が育っていないというのが、経営層の方々が最も危惧されていることだと言えます。 |
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テクノロジ・リーダーは必要か |
一方で、ITエリアなのですから、企業内のテクノロジを引っ張るリーダについても話さないわけに行きません。
筆者自身が過去を振り返ってみると、ITサービス企業の中にいたせいか、ITスキルを持った人にあこがれ、目標としていたという感覚を持っていました。ところが、よく考えてみると、入社して3年くらいは本来の「テクノロジに長けた人」、つまりOSやDBを使いこなしている人を目標としていましたが、それ以降は「仕事のできる人」という定義に変わって行ったと認識しています。
仕事のできる人とは、仕事をするための能力を持っているというテクニシャンではなくて、その能力を使って成果を出せる人、ということになります。分かりやすく言うと、他者の期待がどこにあるかを把握・認識し、その期待に応えることができ、HowではなくWhatを明確にできるリーダーシップがある人、社内コンサルテーションができる人ということになります。
しかし、ITエリアにいるわけですから、あえてそのような人をテクノロジ・リーダーと呼びたいと思います。 テッキーではなくてIT戦略を企画立案・実行できる人材です。テクノロジが何たるかの基礎が分かっていて、ITでそれぞれのビジネスをまわしていくことができる人、それがテクノロジ・リーダーです。ユーザー企業ならば、その方がCIOとなるべきかもしれませんが、ユーザー企業の多くは、IT関係ではない方がCIO職に就かれるケースが多いのが実態だと思います。そのような場合に、そばにいて欲しいのが、テクノロジ・リーダーです。 |
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一つひとつ明確にして積み上げていくのが人材育成 |
話をマネジメント層に戻します。 自社にはできるマネジメントがいない、と嘆いていても物事は好転しません。経営層の一番の責務とも言えることが後進の育成です。人の育成は時間がかかりますが、だからこそ早く着手して、必要とする人材のモデル化をし、何ができていて何ができていないかを明確にしていくことが重要です。To Beを定義することによってAs Isとのギャップが明確になり、どこをどのように埋めることを優先的に進めればいいかも明らかになります。
できるできない、大変か大変でないか、ということではなくて、ITSSやUISSなどスキル標準が用意できている現在において、企業には、効果的な人材育成を今すぐ進めないといけない社会的責任があると考えています。 |
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登録:2008-12-06 16:04:07
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