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コラム
第142話:最新版「ITスキル標準 概説書−人材育成への活用− V3 2008対応版」 解説(1)
 先にお伝えしたように、いきなりIPAXで冊子化された最新版概説書がお目見えしました。
 いち早く数回に分けて内容を解説してみます。
目次から見る構成
クリックすると拡大  まず目次を見てみましょう。
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はじめに
ドキュメント類の活用局面
第1章 情報サービス産業とITスキル標準
1.1 日本企業のIT化の状況
1.2 ユーザー企業から見たITサービス企業の位置づけ
1.3 人材育成はうまくいっているのか
1.4 人材育成の課題
1.5 人材投資をどのように考えるか
1.6 ITスキル標準は企業にとってなぜ必要か
1.6.1 ITスキル標準の狙い
1.6.2 概念構造
1.6.3 どのように企業に適用するか
1.6.4 ITスキル標準の定義範囲
1.6.5 「達成度指標」と「スキル熟達度」を評価に活かす
1.7 人材モデルの必要性とは
1.8 2つの活用の視点
1.8.1 企業戦略の視点
1.8.2 企業間比較、調達視点
第2章 どのように企業でITスキル標準を活用するか
2.1 企業活用の考え方
2.2 活用プロセス
2.3 継続した運用の重要性
2.3.1 企業戦略とエンジニアのキャリア開発
2.3.2 人材育成の方針作り 〜スキル開発とキャリア開発
2.3.3 プロジェクト運用における利活用
第3章 ITスキル標準の構造
3.1 全体構造
3.2 キャリア編 〜ビジネスの各局面に応じた専門職種を定義
3.2.1 キャリアフレームワークの概要
3.2.2 職種の概要
3.2.3 レベル評価方法に関する基本的な考え方
3.2.4 達成度指標の概要
3.3 スキル編 〜成果達成のために習得必要なスキル/知識を定義
3.3.1 スキル熟達度の概要
3.3.2 スキル領域の概要
3.3.3 スキルディクショナリの概要
3.4 研修ロードマップの概要
第4章 ITスキル標準の普及状況と情報技術者試験との関係
4.1 普及状況
4.2 情報処理技術者試験との関係

おわりに
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 大きく、「IT業界や企業の概況」→「ITSSの必要性」→「概念構造、及び人材モデルの考え方」→「活用プロセス」→「詳細構造」と進めており、読み手が途中から入っても大丈夫なような文章構成になっているようです。
画期的な活用フェーズごとのドキュメント構成への変更
クリックすると拡大  「活用の手引き」から徹底されていますが、今まで関連ドキュメントは一冊完結形式で、他ドキュメントとの関係を、あまり考慮せず作成されていたきらいがあります。
 ここにきて、企業導入をベースに、その活用のフェーズに合わせてドキュメント自体も、役割分担させる方針となっています。
 
 図は、「ドキュメント類の活用局面」として載せられています。
IT業界や企業の概況
クリックすると拡大  図は、2006年6月に経済産業省から公表された「新経済成長戦略」の中で、日本企業のIT化のステージを表したものです。

 これを見るとステージは4段階に分けられており、日本企業の74%が第2ステージまでに位置づくとされています。
 第2ステージは、企業内の部門の壁を越えられていないという、言わば多くの企業が部分最適に落ち着いており、第3ステージの全体最適には程遠いというメッセージです。
 ちなみに第3、4ステージの日本と欧米の比較は、第3ステージ24%:41%、第4ステージ2%:11%です。

 IT化の歴史として、人の仕事をコンピュータに置き換えることから始まって、当然のことから部門ごとの細切れのシステムが誕生してきました。
 そういった部分最適を目指す中でのデータは、企業としての戦略策定に活用するには、加工編集などとてつもない工数がかかり、内要としても信頼性の点で問題があると言わざるをえないものでした。

 情報システムは、データを戦略的にうまく扱うためのもののはずですが、人員削減を初めとするコスト面の要求が入ってくることで、管理やプロセスの観点が重要視される形になってきました。

 もともと企業のプロセスは、組織の部門単位が基本になっています。ERPが日本企業で活用しづらいのも、こういった独特の組織の枠内でのプロセスが主流となっており、形式化されたものに合わし難いといったことも原因と考えられています。

 さらに、メインフレームがまだまだ現役として稼動している企業も多く、運用されているシステムも、最新ドキュメントが揃っておらず、多くのブラックボックスを抱えているのが現状です。

 話が少しそれてしまいましたが、その中でうまくIT人材が育っているかというと、忌々しき事態に陥っている感が強いと言えます。

 概説書にも書かれている通り、ITサービス企業の多くは、日本を挙げてのIT化の潮流の中で、人を集めれば仕事になる状態が長らく続きました。その中には人材育成という考えは、あり得ないほど小さな位置づけだったことは否めません。

 同時にユーザー企業は、全てITサービス企業に丸投げする傾向が強く、提案を評価するどころか、RFPを作成することもままならないほど、ITに関する能力は低下してしまいました。
 それに追い討ちをかけるように、コスト面からのアウトソーシングがもてはやされ、システム企画という体のいい名前だけを残し、人員数も大幅に削減することを進めてしまいました。

 当然のことながら、能力の空洞化が顕在化し、企業競争力の多くをITに頼ることになった昨今、経営者からの要求に応えるには組織力、人材能力、パワーなどが欠如していると言わざるを得ません。
企業の目標とITエンジニア個人の目標
 永遠の課題ですが、企業はビジネス目標の達成のための効率的な動きを目指します。一方、ITエンジニア個人は、仕事をする中で自己実現を目指します。

 人によって強弱はありますが、技術者であるITエンジニアは、自己実現を望む気持ちが強いと言えるでしょう。
 誤解を恐れずに言うと、給料は安くてもいいから、目指すものを追いかけていたい、ITエンジニアとしてスキルを上げたいという気持ちが強いのです。

 企業としては、組織力を向上させる必要があります。そのために、スキルの見える化などの実現のために、スキル標準を積極的に取り入れ、目標達成に貢献する人材を育成することに投資するのです。そして、そのための仕組みを用意してトレーニングや経験する場所を提供し、成果に対して公正な評価をするために議論し、試行錯誤していくことになります。

 企業側も個人側も頭に叩き込んでおかないといけないのは、「スキル標準を企業導入する」ということは、そういうことなのです。

 ITエンジニアはそれを前提にして、どうすればその中で自身のキャリアアップや自己実現ができるのかを、考える必要があるのです。
 会社やスキル標準のせいにしてもだめで、真正面から向き合ってどうするかを考えるのは、ITエンジニア自身の責任です。


 〜つづく
登録:2009-05-31 15:17:06
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