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コラム
第153話:ITSS、UISS、スキル標準の企業導入と活用
 「導入」と「活用」。 ITSS、UISSなどのスキル標準の活用ステップにより、位置づけが異なります。
 スキル標準を企業で使えるようにする、また仕組みを作り上げることを「導入」、出来上がった仕組みを使って人材育成・開発PDCAを廻していくことを「活用」と呼びます。
 今回は、その定義と「活用」時における注意点などをまとめてみました。
「導入」と「活用」
クリックすると拡大  一見どちらでも良さそうなものですが、定義や使い方をあらかじめ徹底しておくと混乱を招きません。

 図は、IPAから出ている小冊子「ITSS概説書」、及び「活用の手引き」の冒頭に掲載されているものです。
 ここで示されているように、企業が対象であり「導入計画段階」〜「活用開始段階」が「導入」で、「運用・改善」以降が「活用」ということで、大変明確に定義されています。提供ドキュメントの使い方でも、一目瞭然です。
では「導入」の前段階は?
 先ほどの論理でいくと、図の「知識習得段階」が「導入」のさらに前段階となります。
 ここからはあまり深く読み取れませんが、この段階は企業導入することを意思決定する大変重要な位置づけです。

 経営層やCIOからのトップダウンで進むケースは非常にまれで、大抵は人材育成や人材開発責任者・担当者の方が、必要に迫られてITSSやUISSの活用を検討しているという場合が多いと言えます。

 こういったケースは、経営層や現場管理層にメリットなどを説明し、十分理解してもらい同意を得た上で、進めていく必要があります。
 経験された方は痛いほどお分かりだと思いますが、この作業でかなり苦難を強いられることになり、思うように進まないといった事態が生じるのです。

 スキル標準ユーザー協会では、既に活用されている企業の推進責任者を中心とした研究会をスタートさせ、役立つ情報としてまとめていく動きを進めています。
 この試みは、活用視点に重点を置いたIPAの方針とも合致しており、期待される取り組みです。
「導入」ステップ
 先に述べたように、スキル標準の企業活用の取り組みをスタートするということは、企業として正式にオーソライズされたということになります。
 企業で活用できるようにするこのステップを、「導入」と位置づけることができます。

 この手順については、ITSSは「活用の手引き」、UISSは「有効活用ガイド」としてドキュメントになっていますので、かなり明確になっています。
 どちらも、企業のあるべき姿をまとめていくための手順になっていますが、簡単に取組める方法として、Fast Track ITSS(スキル標準ユーザー協会)やFast Track UISS(JUAS)という簡易手順も用意されています。

 提供コンテンツや考え方を部分的に活用している企業も多いようですが、お話を聞いてみると、ほとんどの企業が導入手順の全てのステップを、何らかの形でカバーしていることが分かります。

 これは、導入手順自体がシステム構築のメソッドと同様で、ベースの考えを理解しているから、深くしたり、浅くしたり、飛ばしたり、逆にしたりということができるとうことです。
「活用」ステップに入るために
 共通指標の上で弱み強みを認識するのは、人材育成のPDCAを廻す上でのきっかけには適していますが、同じことを毎年実施しても進歩がありません。

何故なら、以下のような理由からです。

・ITSSの共通枠でのレベルのアップには数年かかり、本人のモチベーションの維持がむつかしい
 共通枠ではレベル3が「何でも独力でできる人材」と規定されています。通常、このような人材は企業でトップクラスに当たります。一方、レベル7は世の中の標準を作る側の人材、IT業界をリードする人材となっていますが、一般企業でこのような人材を目標にはしないでしょう。

・共通枠はあくまで、IT業界共通という意味であり、各企業のビジネスモデルや事業規模、目指すべき姿を現しているものではない
 共通枠ということは、IT業界での位置づけを知ったり、企業と企業、もしくは人と人を比較する場合に効力を発揮します。分かりやすくいうと、共通枠をそのまま使うということは、比較や人材調達を目的とすると言えます。

 IPAの冊子などドキュメント類で明確に示されているのは、ITSSやUISSとして提供されているのは参照モデルであり、企業として作り込んでいくためのコンテンツだということです。UISSの普及が進み、理解されている方が増えましたが、ITSSを活用されている企業では、未だに理解が進まずに同じことを繰り返してる状況も見受けられます。

 これらを理解して、「企業の意志」を注入した「魂の入った」モデルを構築することが企業活用の大前提になり、その方針で提供されている導入手順を十分理解した上で、取組む必要があるということです。
「活用」ステップでのハードル
 先の「導入」ステップでは、多くの場合各部署の代表が集合したプロジェクト形式で進めます。IT系の方々は、基本的にスキルやキャリアパスなどの話が好きです。うまく話をまとめていかないと、いくらでも時間をかけて議論することができる内容なのでスケジュールなどに影響があります。
 このような場合、成果物の完成度を70%程度と想定し徹底するのも一案です。浄水器ではないので、蛇口に取り付ければきれいな水が出るような完成された製品ではありません。試行錯誤して作り上げるあくまで「仮説」なのです。しかしながら完成度を上げるために、ITSSやUISSという便利なコンテンツが提供されているのです。

 完成度はある程度に設定して、運用時に改善のPDCAを廻すことを考えたほうが現実的なわけです。
 また、運用時には仕組みづくりのプロジェクトは解散し、運用部隊に丸投げで後は知らない、といったケースも散見されます。これでは継続に支障をきたす危険があります。現場のメンバで構成されるコミュニティなどを立ち上げ、仕組み自体に意見などを反映すると言った考えも重要です。
 人材育成のPDCAと両輪で仕組み改善のPDCAを廻すというイメージです。

 スキル標準は、その名の通りスキルをメインに定義されていますが、活用時に現場のメンバから出てくるコメントで一番多いのがスキル定義に関してです。

・(使われている言葉などが)分かりにくい
・量が多い(粒度が細かい)
・(粒度が荒くて)分かりにくい
・答え方が分かりにくい

 以上が代表的なコメントですが、現場の方々は元々スキル定義のようなものに慣れておらず、面食らうことも多いわけで、印象だけでのコメントもあると思われます。
 また、対策としては、次のような考えがあります。

・粒度は全てに一律とする必要はない。ビジネス遂行上の必要性でエリアごとに判断する。
・言葉が分からない点に関しては、あえて社内の言葉を優先して変更するか、IT系で一般的に使われている、もしくはITILのように今後標準的に使われるものに合わしていく。あるいはその折衷案を考える。
・量を少なくするために、抽象度の高いものに答えていく方法であっても、コメント的に粒度の細かいものを参照でき内容を確認可能な仕掛けにする。
・答え方は、人によって差ができないように、できるだけ実例を示す。
登録:2009-11-23 14:49:09
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