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コラム
第159話:UISSは使えるのか、使えないのか?!
 「スキル標準は使えるか、使えないか」、ITSSでも散々言われたことですが、さすがに最近は聞かなくなりました。しかし、ここに来てUISSについても、活用しようとする企業から声が上がり、Web上の記事などでも取り沙汰されるようになりました。
 この現象は、使おうとして取組んだ推進担当など当事者の中から出てきたものと、そうではなく、当事者以外の第3者が客観的に評価したものの2種類があるようです。
 客観的な第3者の評価は、実践が伴っておらず、かつ勝手な理論を展開しているものが多く、あまり参考にならないので取り上げませんが、企業が活用しようとして突き当たる課題―、これは、UISSの普及を考えると、そのままにはしておけない問題です。
推進者の悩み
 UISSに関するセミナー受講やネット上での評判から、自社の人材育成に役に立ちそうだと、導入のための調査を始める場合が多いようです。

 そのきっかけを作ったのがCIOや責任者のケースは、トップダウンで物事が比較的スムーズに進みやすい状況が見受けられます。ところが、担当者の方の考えから進める場合は、まずCIOや責任者に理解してもらう活動をしなければなりません。

 後者のパターンが圧倒的に多いようで、「なぜUISSなのか」「導入することのメリットは何か」などの様々な問いかけをクリアする必要に迫られます。責任者がIT系出身か否かの問題ではなく、人材育成の必要性をどのくらい重視しているかに関るものだと考えられます。

 人材育成の必要性を理解していない方はいないと思いますが、昨今の景気悪化からコスト削減の圧力が著しく、あまり優先順位を上げれないということもあるでしょうし、残念ながら経営層が、情報システム部門を「金食い虫」的存在と捉えている場合も、まだまだ多いようです。

 欧米では、ITの有効活用は、企業の競争力向上には必須だと考えられていますが、日本では、まだまだ昔ながらの考えに固執している経営者も多いようです。iPADの登場で出版物の電子化に大慌ての出版業界がいい例です。

 では、ベテランの経営者が皆その状態かというと、案外そうでもありません。新しい考えを取り込むべく、絶えず知識を吸収するためのチャレンジをしている方も、数多く存在します。
 分かりやすくに言うと、そういう方は「すごろくの上がり」だと思っていないということです。常に目標を高く設定し努力する姿は、必ず社員に伝わり賛同者が後に続きます。そのような経営者や責任者に、部下が人材育成の提案をしてくれば、どうやって実現させてやろうか、と考えるものです。つまり、実現するための方法を一緒に考えてくれるのです。

 逆に、上がりだと思っている経営者や責任者は、そうはいきません。今迄苦労してきたのだから、もうやっかいごとはごめんだ、と言わんばかりに「人材育成のメリットは?」的な、答えられないような詰問を繰り返します。
メリットではなく、動かないことのデメリットを理解させる
 まず最初のハードルは、先述の上層部の説得だと仮定しましょう。
経験された方は十二分に認識されている通り、人材育成の効果はすぐに出るものではありません。その効果を具体的に語るのは至難の業です。
 では、能力を持つ人材が情報システム部門にいないとなればどうなるのでしょうか。

 システムの安定運用を維持するのは、情報システム部門の一番大きなミッションだと言えます。しかしながら、バグの無いソフトウェアは存在しませんし、多種多様なソフトウェア・ハードウェアが入り組んだシステムの場合は、事前テストも100%完璧にできるとは言い切れません。
 そのような状態の中で、「障害は起こるもの」との前提で、発生したときの迅速な対応や復旧についての施策を、事前に用意しておくことが重要です。 
 そう考えれば、情報システム部門の担当者は次の能力を持つ必要があります。

・障害の切り分けができ、影響度の把握ができる
・迅速に復旧計画を立て、実行することができる
・ITベンダに的確な指示をすることができる
・ITベンダの対応策を理解でき、妥当性や必要性を判断できる
・障害対応後、監視のポイントを把握し、以降の技術的体制を整えることができる
・他システムでの発生可能性や、影響を調査・判断することができる

 少なくとも以上のことの責任は、ITベンダではなく情報システム部門側にあります。
これをこなせる人材がどのくらいいるでしょうか。
障害は発生するものという考えは、飛躍的ではなく現実的です。発生時にうまくこなせなければどうなるか?経営者や責任者なら容易に想像できるはずです。

 もう一点はコスト面です。
システムの新規作成や再構築の場合、ITベンダに提案させるためのRFPを、現在どのくらい人材が適切に書き起こせるでしょうか。
 また、ITベンダからの提案を、品質・期間・コストの面で、的確に評価判断することができるでしょうか。

 RFPがうまくできていなければ、手戻りが発生するでしょうし、提案書を的確に評価できなければ、ITベンダのいいなりとなり、要求仕様と合っていないことなどで、結果的に考えられないくらいのコスト高となる可能性があります。
現状把握できているか、将来目標を設定できているか
 先のように、もし必要な能力を持った人材がいなければどうなるか、ということは企業にとって切実な問題であり、人材育成の必要性を訴えるには有効な材料になります。

 生保の営業オンラインシステムの障害ならば、多くの営業職の方のビジネスチャンスを妨げることになるでしょうし、通信企業での携帯電話などの本人認証システムの障害ならば、多くのサイトにアクセスできなくなり、信用問題や新聞をにぎわす社会的問題にもなります。
 最近は情報漏えいの問題など、セキュリティに関しても重要なテーマです。ITベンダまかせではなく、内部に情報統制できる能力を持つ人材を用意することや、体制を整えることは、もはや企業にとって当然のことになっています。

 上層部を説得しようとしている方は、自社のシステム、ユーザー部門、情報システム部門に置き換えて考えてみてください。

 しかし、それ以前に「必要なことができているかどうかもよく分からない」というのが、多くの企業の実態ではないでしょうか。
 言い換えると、「今うまくいっているからいいじゃないか」ということにもなりかねません。それでは、いきなりやってくる大問題に対応できず、右往左往することになり、情報システム部門の存在価値を問われることにもなってしまいます。

 情報システム部門全体として、現在どのくらいの能力を持つか、抱えているシステムや業務を運用できているのか、また、3年後の環境を想定すると、今の状態でいいのか、それとも何をどのくらい引き上げていく必要があるのか、そのための方法は・・・と、課題は山積みです。

 仕事をこなすために、どんどん人を採用してきた時代とは異なります。基本に戻って、やるべきことを整理するタイミングに来ています。コスト削減やそのための効率化を進めていく必要があり、役割分担を明確にすることや、必要な人材と組織機能・業務プロセスの定義がますます重要になってきます。

 人材育成は時間がかかるからこそ、なるべく早くこれらを一つずつ明らかにし、仕組みや体制を整えて、地道に進めていく必要があるのです。
登録:2010-04-19 12:49:35
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