スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
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コラム
第14話:「ITスキル標準」をもっと理解するには
「ITスキル標準」を上手く理解できない、理解したつもりになっていたが実は理解できていなかった、と言われる方が未だに多いのが現実です。お問合せが多いこともあり、再度分かりやすくまとめてみました。
何故「ITスキル標準」の定義をダウンロード・印刷すると800ページになるのか。
皆さんもご存知の通り、MetiやIPAのサイトから「ITスキル標準」の内容をダウンロードして印刷すると800ページにもなってしまいます。これを見てこんなものは使えないと、ソッポを向かれた方も多いと思います。頑張って見ていくと、日本語文が長すぎて分かりにくいのと、レベルが替わると文章は同じで金額など数字が変わっているだけというのが、結構目に付きます。ここまで来て、やはりこれは使えないと去って行かれた方も多いと思います。
では、何故ページ数がこんなにも多いのでしょうか。
それぞれの職種・専門分野の定義を見て下さい。スキル定義はスキル領域という分類体系で成り立っています。職種の中に定義されているのは、職種共通スキル項目と専門分野固有スキル項目に分かれています。さらによく見て下さい。その職種共通スキル項目、専門分野固有スキル項目の中身は、「システムデザイン」や「アプリケーションデザイン」といったスキル領域の分類があり、その中に「〜ができる」という形態で、スキル定義が存在します。
   ”「ITスキル標準」導入の考え方”の4ページを参考にして下さい。
   ドキュメントのコーナーからダウンロード可能です。
   http://www.skills.jp/docs/docs_cat_2/ImplementationForITSS.pdf

このスキル領域の分類やスキル定義項目は、色々な職種・専門分野で使われます。つまり同じものがあちこちに出てくる訳です。もうお分かりですね。ダウンロードする定義内容は、「ITスキル標準」フレームワークの通りの職種・専門分野ごとになっていますので、この重複した内容をそのまま印刷することになり、結果として800ページにもなってしまうのです。
「ITスキル標準」フレームワークとスキル領域
システムを構築された経験がある方なら、その重複した内容をメンテナンスしていくには無理があるとお分かりになるはずです。ひとつのスキル定義項目を変更しようとすると、あちこちに重複しているので、定義項目を全てチェックしなくてはなりません。
それなら、職種・専門分野ではなくスキル領域という分類体系で管理していけば、スキル定義項目はユニークになることを中心に考えるべきです。それを印刷すれば10数ページほどの内容になります。
「ITスキル標準」のフレームワークは強烈な印象を持つため、そればかりが先行して語られてしまいますが、その中身を構成するのは、スキル領域という分類体系で管理されている定義項目の集合体です。しかもスキル領域内での項目自体に重複はありません。
「ITスキル標準」の導入目的は何か
導入目的は「人材育成」と言われる方が殆どです。しかし実態は必ずしもそうなっていません。企業はそれぞれ独自のビジネス目標を持っています。そのビジネスモデルも千差万別です。システム構築の上流を主体にしている企業、下流の作りこみを主体にしている企業、ソフトウェア・ハードウェア製品販売を主としている企業、サポートサービスを主としている企業、教育ビジネスを主としている企業、ユーザー企業内のIT部門と様々です。そのようにビジネスモデルが異なる企業に人材育成を目的として「ITスキル標準」をそのまま導入することはできません。何度も聞かれているとは思いますが、「ITスキル標準」は「辞書」です。スキル定義が網羅されています。しかし、企業の人材育成で必要なのは「人材像」です。それは、それぞれ企業の経営戦略から来る人材戦略に基づいた「目標人材像」です。辞書をそのまま取り込んではビジネスに必要の無いスキルまで取り込むことになり、混乱の元になります。「ITスキル標準」は「辞書」なのですから当然のことです。
まずこの「目標人材像」を策定しない限り、人材育成のために効果的な投資をすることはできません。「ITスキル標準」のフレームワークをいくら見ていても、企業のビジネスとは結びつきません。多かったり足りなかったり範囲が違ったりと、標準なのですから企業のモデルと合うわけはないのです。「ITスキル標準」フレームワークの中身が、スキル領域のスキル定義項目をマッピングして作られているように、それぞれ企業のビジネスをベースにした独自フレームワークを作成し、同じくスキル領域からスキル定義項目をマッピングすればいいのです。それが企業としての「目標人材モデル」であり、現状と目標とのギャップから、どこにどれだけ人材育成ために投資すればいいかが具体的に見えてくるのです。
企業間で「ITスキル標準」を使うには
人材育成のために「ITスキル標準」を導入するということは、先に述べましたように経営戦略から入らないと意味がありません。一般的なスキル診断などから入れば、それで終わってしまって次のステップがありません。当然です。何のためにどういう人材が必要か、ということが議論されていないからです。
では、企業間で考えるとどうでしょうか。これは「調達」観点が主体になりますが、言い換えると「何ができるか」になります。この観点であると「ITスキル標準」をそのまま使うことができます。診断ツールも効果的かもしれません。
ところが、調達に使うには「ITスキル標準」には決定的に不足している部分があります。
まず、「業界知識・経験」、「業務知識・経験」が定義されていません。また、情報処理試験やベンダー資格が無いと非常に不便でしょう。さらに、固有名詞や製品名が網羅されていないのも決定的な不足部分です。現場では「プラットフォーム」ではなく、「UNIX」や「Linux」、「Windows」の定義が必要です。また、「データベース」ではなく「Oracle」、「SQLserver」、「DB2」が、調達には必要になってくるケースも多くあります。使い方によって細かいものは必要でない場合も当然あります。しかし、「辞書」なら必要であるかどうかは別にして、全て揃っていないと「辞書」とは言えないと思います。使う側や使い方がそれぞれ異なる限り、これは必要でこれは不要ということは言えないはずです。提供側の提供し易さや管理し易さの観点で決めるのではなく、「標準」なら全ての企業、個人が使えるものにすべきであり、できなければ少なくとも方法などガイドラインは示すべきだと思っています。
分からなければ導入実績のあるコンサルに
エンジニアは企業の財産であり、日本の財産です。育成に力を入れるのは企業とエンジニア自身の大きな責任です。「ITスキル標準」はしっかり理解して推進していかないと、逆にマイナス要因になる諸刃の剣です。経営者の方が人任せでなく、責任を持って取組む内容です。エンジニア個人も危機感を持って自分の将来のために正面から取組むべきです。分かっていない方に任せると大変なことになります。企業の取り組みは後戻りができないことになります。分からなければ、導入実績のある第3者、コンサルタントに協力を求めて下さい。結果的に、その方が効率的・効果的です。優秀な日本人が、こんなことでつまづいてアジア諸国に抜き去られる訳にはいきません。
登録:2011-01-30 15:33:06
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