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コラム
第19話:「スキル熟達度」と「達成度指標」をどうとらえるか
「スキル熟達度」と「達成度指標」は、「ITスキル標準」独自の優れた考え方です。どのように扱えばいいかを考えてみます。
「スキル熟達度」と「達成度指標」
先回の内容を引用し、改めて定義することから始めます。
「ITスキル標準」は、「スキル熟達度」と「達成度指標」で構成されています。「スキル熟達度」は、スキル領域という分類体系でスキル定義項目群としてきちんと整理できます。一つひとつのスキル定義項目は「〜ができる」という形で表現します。
一方「達成度指標」は、過去の実績や経験を表すもので、以下の4つの視点があります。

・責任性
 携わったプロジェクトでの役割(PM、リーダー、メンバ、など)
・複雑性
 どのような内容だったのか(ミッションクリチカル、VLDB、最新技術、など)
・サイズ
 プロジェクトのサイズ(金額、期間、人数、など)
・タスク特性
 社会貢献度(著書、委員会への参加、など)

上の3つが、ビジネスを主体とした観点で、タスク特性はプロフェッショナルとしての貢献度という観点です。
これらの指標が組み合わされて、レベルの相場観を形作っています。
「スキル熟達度」のブレークダウン
先ほど述べましたように、「スキル熟達度」で定義されているスキル定義項目群は、スキル領域という分類体系で整理できます。単なるカテゴリ項目で分類されていますが、ここでは定義項目に重複は無く、それぞれユニークな形で管理することができます。論理的な仕組みにするには、これをスキル管理システムとして使うべきであり、将来的に変化していくスキル定義のメンテナンスも、一括管理できることになります。これを「辞書」と呼んだ方が、私はピッタリきます。職種ごとにスキル定義項目が重複した形でのメンテナンスは、考えただけで気が遠くなってしまいます。「ITスキル標準」の定義を印刷すると800ページになるのは、これが原因です。
ただし、公にはこの形にして見れるものは無く、ITSSユーザー協会の実証結果のものしか見当たりません。「組込みスキル標準」(ETSS)は、この「スキル領域」を「スキル基準」として正式に発表されたわけです。「ITスキル標準」の有名な11職種38専門分野のフレームワークにあたるものは、「組込みスキル標準」では「キャリア基準」として参考的に設定されているだけです。
このスキル定義を使用して、ツールやテストでエンジニアのスキル習熟度を評価することが可能です。
「達成度指標」について
「達成度指標」は、スキル領域で定義されているスキルを発揮して、如何にビジネスに貢献できたかを評価するためのものです。業務経歴書などに書かれる内容をどうすれば評価できるかですが、これはツールやテストで評価するのはかなり難しい内容です。貢献度を文章にして一つひとつ確認していってもあまり意味がありません。「達成度指標」の中の定義項目を、一部「スキル領域」でも使用していますが、これは「ITスキル標準」がまだ成熟していないからだと見るのが妥当でしょう。どのようなプロジェクトだったのか、その中でどういう役割を果たしたのか、納期は?コストは?と、そのプロジェクトの範囲の中で、どのような結果で何ができたかを総合的に判断する必要があるのです。それをツールの中で、一文一文切り取った文章で聞いていっても判断はできません。プロジェクト報告書のようなものを見ながら熟達者が、本人に一つひとつ確認していかないと、実際のところは分かりません。その報告者や、申請書、経歴書などの雛形が、IPAから「評価ガイドライン」として出ています。この辺りの見解はかなりはっきりしたものになっています。ツールでは難しいだけでなく、情報処理試験やベンダー資格でも同じで、それらは「スキル熟達度」の評価がメインであり、如何にビジネスに貢献したかを評価するのは非常に困難です。試験では、論文等がそれに当たりますが、実際には試験対策というものがあって、経験していなくても上手く文章を構成すれば合格しているという現実があるのは確かです。
では、どうすればいいか
「スキル熟達度」はスキル管理システムなどツールによって継続して維持管理ができ、その内容で評価が可能であり、「達成度指標」は、そのスキル管理を含めたプロセスの中で評価するのが妥当だと考えています。プロセスというのは、四半期や半期に一度、アセッサーのスキルと経験を持った方が、インタビューをして「達成度」を評価するというプロセスや体制を持つということです。

何度も言っていますが、人材育成は継続が重要です。社内の色々な方やコンサルが、初めだけ集中していいものを作っても、その体制はその時だけで、最後は維持管理する方だけが残されます。その方もモチベーションを持って人材育成のために、作成した仕組みを継続させていく必要がありますが、異動や退職などで結果的に継続できないということを、今まで各企業が繰り返してきています。その反省も無く、「ITスキル標準」がありながら、また同じことを繰り返すことになるなら、国際状況から言って、日本のIT関係企業・関係者にとって最後のチャンスを失うことになりかねません。どうすれば生き残れるか、さらに繁栄していけるかを真剣に考えるタイミングです。これが分からない企業や個人は、退場することになるでしょう。
登録:2011-01-30 15:35:22
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