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コラム
第22話:「組込みスキル標準」と「ITスキル標準」、その関係の誤解と思い込みについて
最近おかしな話が耳に入ってきます。「ITスキル標準」は使い物にならない?、「ITスキル標準」は「組込みスキル標準」に飲み込まれる? この奇妙な内容を解明してみます。
それぞれの生い立ち
「ITスキル標準」は、2002年12月に経済産業省よりリリースされています。経済産業省主導で大手ハードウェアベンダーやSIベンダーが、その1年ほど前から策定の作業を行なってきました。作り込みがそれぞれの企業に分担されていたこともあり、その出来具合のバランスが悪く、最終のまとめにかなり手間取ったようです。そのせいか、先行していた企業の考え方がかなり入っています。しかし結果的に、その方が良かったと私は判断しています。成熟していない企業の思い込みや勝手な考えが入らなかったからです。しかし、こういったIT人材育成のベースになるものができたのは、初めてだったせいもあり、最初のアナウンスの仕方がうまくいきませんでした。「カスタマイズしていい」などに代表される話しですが、周りから見ると出すだけ出して「どうぞ自由に使って下さい」と放り出したというイメージに近かったかもしれません。私は実際にその中に係わっていましたから、決してそんなことは無いという事を十分理解していますが、第3者から見るときっとそうだっただろうと思います。どのように導入するか、どう使うかのガイドが殆ど無かったのですから。今まであったトレーニング・コースや、独自の考えの診断ツールを「ITスキル標準・準拠」という形で、教育ベンダーなどがビジネスに使い出したのは、ごく自然の姿です。私も教育ビジネスをハンドルしていた経験がありますので、よく理解できます。しかし、それしか無かったとは言え、企業としてどうあるべきかを考えずに採用した方も、問題があります。お金を捨ててしまったばかりか、エンジニアのモチベーションを下げてしまった企業も現実にあります。
私が知る限り、2004年7月にスタートしたファイザー社の取組みが、企業のToBeモデルから入られ、「ITスキル標準」をよく理解された初めての導入ケースです。ユーザー企業からというのが、なんとも皮肉ですが。
「組込みスキル標準」は、2005年5月23日にIPA・ソフトウェアエンジニアリングセンター(SEC)から発表されました。やはり、その1年ほど前から経済産業省主体で、作業が進められていました。経済産業省の紹介で、その作業を中心的に進められていたW氏と2、3度お会いしています。色々と私が「ITスキル標準」に係わって来た中からまとめた内容もお話ししました。経済産業省が主導で作業を進められていましたが、W氏を含めた何名の方かが、新しくIPAに設立されたSECに出向されて、作業を継続されていました。そしてSECから「組込みスキル標準」がリリースされることになりました。
その内容はというと、コラム第15話でも書いた通り、私の考え方とほぼ同じで、感動すら覚えたほどです。そこには「ITスキル標準」の時の分かり難さや、ガイドミスはありませんでした。
誤解と思い込み
6月下旬にSEC主催のフォーラムが開催されました。残念ながら私は仕事のため参加できませんでしたが、参加された方から驚くべき内容の話しを聞きました。関係者の方がセミナーで、「ITスキル標準はスキルを定義していない、使い物にならない」と言われたそうです。何人もの方に確認したので、間違いはないでしょう。その後「組込みスキル標準」関係者の間で、「ITスキル標準は使い物にならないから、組込みの方に吸収してしまおう」ということが、まことしやかに話されているというのです。
大変残念です。私は、もっと日本の未来を考えることのできる方が、引っ張っていくべきだと思います。私は、エンタープライズ系のエンジニアですが、だからと言って組込み系のエンジニアとは全く別だとは考えたことがありません。昔はプロセス系で機械語を使っていました。楽しかったし、そのことが現在のベースにもなっています。キャリアパスが別物とも思ったことがありません。実際、スキル基準の中で定義されている上流工程の部分は、殆ど同じです。
もっと大きく捉えませんか!!
「ITスキル標準」は、エンジニアのあるべき姿を網羅的に捉えた素晴らしい仕組みです。私も3年以上係わって、しかも色々な企業でその導入を実践してみて、それを実感しています。しかし、完全に理解するには半年以上かかっています。ですから、「組込みスキル標準」関係者の方も、到底「ITスキル標準」を理解しているとは言えないということも分かっています。もっと勉強していただく必要があります。
技術者として自分が作ったものは「作品」なので、一番になってしまうのは当たり前ですが、どちらの標準も日本の今後のために必要なのです。2つあって分かりにくく困惑しているのは、実はエンジニア個人です。
「ITスキル標準」リリース時の良くない部分の大半を、「組込みスキル標準」では反面教師で、カバーされました。後から出てきたのだから当然です。私もそれなりに協力していると思っています。考え方も分かり易くなっています。しかし、まだ実際の導入を実践されていません。私は既に何例もこなしていますが、全てのケースがそれぞれ異なります。ビジネスモデルが同じものは無いのです。このように導入を進めていって初めていいものになっていくのです。標準化とはそういうものだと思います。
作った人のためにあるのではないのです。誰のためのものか、真摯に受け止めて日本の将来にとっていい物にしていきませんか!
登録:2011-01-30 15:35:03
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