スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
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コラム
第26話:若手にとっての「ITスキル標準」導入プロジェクト参画の効能
今年に入って6社の「ITスキル標準」導入のコンサルティングと、3社の顧問契約を進めていますが、それらの中で必ず若手の育成を手がけています。導入手法として要求モデルやファンクション・モデルを使いますので、またとない上流工程/システム分析フェーズの実地訓練になるのです。
プロジェクトマネージャーと人材育成
私はコンサルタントでプロのPMではありませんが、今まで色々なプロジェクトの責任を持ってきました。システム構築はもちろん、イベント系から会社のルールや評価プロセスの企画・運用、さらにPMOの責任者まで経験しています。昨年からは「ITスキル標準」導入のプロジェクトが主体です。少し前になりますが、そのような経験を買っていただき、ITセレクト2.0から取材に来られました。IPAの「ITスキル標準ガイドブック」を発刊したメディアセレクト社のIT系の月刊誌です。「プロマネ必須条件5カ条」というタイトルの記事で、4名の登場者の中で私のパートは「人材育成のプロからの提言」で、1ページ分の取材記事が載りました。色々な経験の中から私がずっと思い続けていたことがあり、それを取材の中でお話ししました。6月号に載っていますので、ご覧頂きたいと思いますが、どういうことかというと、プロジェクトの中でエンジニアを育てるのが最も効果的なのは、誰でも思っていることです。ところが、PMの方に「プロジェクトが成功したと評価されるのは、どういうポイントか」という質問をすると、その答えは殆どと言っていいほど以下の3点に集約されます。

・納期・スケジュール
・コスト管理
・顧客満足度

私はずっと「人材育成」が、何故このような時に話題にも出てこないか疑問に思っていました。私は、このことをメインでお話ししましたが、この取材の時に登場された他の3名の方は、やはり「人材育成」に関しては一言も無く、上記の3点のための気構えや方法論のことばかりでした。人を集めればお金になった時代が長すぎて、人材育成を考える基本ができていない、と私はずっと言い続けてきましたが、またここで痛感してしまいました。
「ITスキル標準」導入での若手の育成について
私が今まで指導して一番伸びているのが、ITアソシエイツの樽谷氏です。まだ30歳と若いのですが、この1年は殆ど私と行動を共にしてきました。ITSSユーザー協会の立ち上げに始まり、ファイザー社の導入プロジェクトでは、かなりの重要な役割を果たしてくれました。彼はコールセンターの管理やカウンセリング、コンサルティングを主とした経歴で、システム構築などの経験はありません。ドキュメントのコーナーでも公開していますが、私のコンサルティングは上流工程/システム分析の要求分析と機能分析の手法を使います。スキル策定から入るコンサルタントもおられますが、何故そのスキルセットになるか、説明できないはずです。企業のあるべき姿を機能表現し、そのために必要なスキルは、という形で展開しないとビジネスモデルや企業目標にマッチしたものは構築できません。ということは、その経験が無いとこの部分のコンサルティングは難しい、ということになります。事実私もその様に考えていましたので、はっきり言って樽谷氏には、作業以外の部分にはあまり期待していませんでした。ところが、彼はその考えを思い切りひっくり返してくれました。
KJ法やMind Mapを多用して「要求モデル」や「ファンクション・モデル」を作り上げていく訳ですが、経験のある方はお分かりのように、これは完全にセンスです。如何に顧客の思いをモデルにするか、可視化するかということです。システム構築など経験のある方のほうが、視野が狭くなり顧客の視点に合ったものができないケースも多いということを、彼は自らの実力で証明してくれました。
まだまだ経験不足で、これからという部分もありますが、いいものを持っていてかなりのスピードで伸びているのを見ていると、場を提供したりうまく指導することが、如何に重要かがよく分かります。会社からも成長を評価され私も鼻が高いですが、素直さ誠実さを保持し、現状に満足せず自意識過剰にならずに、さらに伸びてくれることを期待しています。
期待できる若手たち
私が導入コンサルティングの現場で後進を育成する場合、基本的に若手を対象とします。何故なら深い経験を持った方の多くは、自分の経験に基づいた考えに合わないものは、否定する傾向にあるからです。これでは、新しいものを取り入れるのは無理です。私が「ITスキル標準」のからみで、人材開発に関ってこられた方々と接触し始めて分かったのですが、IT系の人材開発を担当してこられた方々の考えが古くて頭が硬いのに驚きました。また、付き合いが大きく広がった中で、さらに実感を得たのが、システム構築の基本的な手順をしっかりと教育された技術者の方が少ないという現実です。論理的な考えや手法を知らないと、同じ結果を得るために無駄に多くの時間がかかるのです。そのような状況を考えると、余り色に染まっていない優秀な若手を鍛える方がものになる、というのが私の考えです。
色々な導入プロジェクトに参画するのは、最高に面白いはずです。導入手法は同じでも、顧客によって全てが全然違います。この客は何を考えているか、どうなりたいと思っているのか、モデリングしていくと簡潔に理解して行けます。何度も何度も経験している私でさえ、新しい発見や驚きが常にあります。これらに直接触れることで、「要求モデル」と「ファンクション・モデル」が如何に重要かが実感できるはずです。これからどのような道に進むにしろ、100%役に立つ内容です。自らが積極的に進めていけば身に付く量が増える、やればやるだけプラスだとはっきりと分かります。どのような新しい技術が出てきて発展しようが、上流工程/システム分析のこの部分こそ、エンジニアやコンサルタントの全ての基礎になる「変わらない技術」だからです。
登録:2011-01-30 15:36:43
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