「ITスキル標準」は、ITサービス提供事業者の視点で定義された内容だということは、誰もがご存知です。しかし何事も相手があって成り立つもの。うまく共通化しないと一方的では意味が無くなります。どう捉えればいいか、掘り下げてみます。
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プロジェクト発足までの流れ |
仕事の殆どをプロジェクトとして表現することが出来ます。 たとえばシステム構築に関わるプロジェクトのスタートまでの流れは、以下のようになります。
■ユーザ企業 @経営戦略や現場の課題に基づき、経営層、経営企画部門を主体にシステム化要求、改善要求をまとめる。 AIT部門が、システム化要求、改善要求を受け、RFPにまとめ、ITサービス提供事業者に提案依頼をかける。 ■ITサービス提供事業者 B顧客担当部署がRFPをもとに提案書を作成する。 Cスケジュールや人員体制、価格などが提案書に盛り込まれるため、経営層の承認を得る。この間、専門部署によるリスク分析などが入るケースもある。 ■ユーザ企業 DITサービス提供事業者からの提案を受け、実現方法、スケジュール、体制、価格などの評価を実施する。 E内容を吟味の上、承認は経営層が行い、結果をITサービス提供事業者に伝える。 ■ITサービス提供事業者 Fプロジェクト開始の決定を受け、社内、パートナを含めて体制を整える。 |
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プロジェクト発足後の流れ |
次に、システム構築プロジェクトを、一般的に大きくまとめると以下のようになります。
@システム分析 Aシステム設計 Bシステム開発 Cテスト・移行 D運用 E評価・改善
この流れの中で経営者視点で言うと、ユーザ企業の経営層にとっては、要件やシステム全体像をまとめる「@システム分析」、そして特に運用開始後の「E評価・改善」フェーズが、経営にインパクトがあり重要で大きく関わる必要があります。それに対して、ITサービス提供事業者の経営層は、関わる場面が極端に少ないことが実情で、トラブルがあった時のみ例外的に前面に立つイメージがあります。 |
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ユーザ企業、ITサービス提供事業者それぞれに必要な能力 |
このようなプロジェクトスタート前、後、そして運用という一連の流れの中で、それぞれが以下のような能力を必要とします。
<ユーザ企業> ・事業戦略からIT戦略を導き出し、策定できる能力 ・経営戦略、エンドユーザ要求からRFPを作成する能力 ・エンドユーザの要求や考えを分析し、必要な機能を導き出す能力 ・ITベンダからの提案書を正しく評価し判断する能力 ・プロジェクトマネジメント能力 ・日々のシステム運用から改善点を提案できる能力 ・障害時に影響を限定的にすることができる判断力とリーダシップ
<ITサービス提供事業者> ・ユーザー企業の要求に合った提案を作成する能力 ・最適な実現手段を選定する能力 ・プロジェクトマネジメント能力 ・新しい技術を理解し実装できる能力 ・障害を起こさないための仕組み作りができる能力、予知能力 ・障害対応能力 ・状況把握、改善提案ができる能力 ・あるべき姿を策定し、現状とのギャップからIT人材戦略、育成計画をたてる能力
これらは、「ITスキル標準」の存在によりフォーカスされ、具体的に議論されるようになってきました。 (第36話につづく) |
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登録:2011-01-30 15:39:41
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