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コラム
第41話:「プロジェクトX」エグゼクティブプロデューサー今井彰氏のお話
 京セラコミュニケーションシステム社(KCCS)のエグゼクティブセミナーが、横浜のインターコンチネンタルホテルで開催され、ご招待いただきました。その中でNHKの超有名番組「プロジェクトX」を作り続けておられる今井彰エグゼクティブプロデューサーの講演がありました。久しぶりにいいお話を聞き、思いも新たになりました。是非紹介したいと思います。
KCCS社恒例のエグゼクティブセミナー
 KCCS社には、私がオラクル時代に大変お世話になりました。データセンターで有名なKCCS社は、KDDIの運用管理を受け持っておられますが、その個人認証システムでオラクルDBを採用されています。その大事な立上げ時に、かなり大きなバグがあり、1ヶ月ほど責任者として泊まり込んだことがあります。もう7、8年前の話になりますが、この話も当時は大変でしたが、今になれば面白いので、別の機会にコラムで取り上げようと思っています。そんな関係のKCCS社の取締役レベルの主要な方々は、その時からお付き合いさせてもらっています。年に2回エグゼクティブセミナーを開催しておられ、今回は横浜で「プロジェクトX」の今井彰氏が講演されました。
「プロジェクトX」スタート前の話
 NHKのアンケートで、親が子供に見せたい番組の1位、そして13歳から19歳までの子供が一番見たい番組が「プロジェクトX」だそうです。すでに185本の番組が制作され、驚異的な視聴率を記録しています。今井氏は過去に薬害エイズを取り上げ、その内容が裁判の証拠品として採用されたほど、社会派のプロデューサーとして有名な方ですが、それでもこの番組をスタートさせることに、NHKの理解を得るのが相当に難しかったと話されていました。理由は単純で、有名人を出せば出すほどその分だけ視聴率は上がるが、知らない人を取り上げて誰も見るわけが無い、ということだったそうです。この番組のトリガーは、「過去、技術力を誇った日本が、今一斉に技術力の低さをアジア各国など世界からパッシングを受けている」ことからだということです。そこで、終戦後(昭和20年8月15日以降)の焼け野原からいかに技術力をつけ経済成長してきたか、そしてその原動力になったのは、中央のリーダーや有名人ではなく、小さな会社のサラリーマンである技術者である、その素晴らしさを浮き彫りにして、多くの日本人に気づきと勇気と夢を与えたい、という考えで番組の構想を練ったそうです。ですから、登場する技術者は殆ど誰も知らない人です。よって、視聴率を稼ぐのは難しい、また、そんなに取り上げれるものもあるわけが無いから長続きしない、という評価になったという事です。
「プロジェクトX」は何故面白いか。
 青函トンネルを25年かけて掘り通した話、胃カメラは30過ぎの大学助教授の発案でできた日本発の世界標準品という話、ホンダの低公害車CVCCは本田宗一郎氏が大反対したという話、ビクターのVHSを作ったのはリストラ寸前の部署だった話、どれも技術者個人個人がチームワークを持って地道に頑張った内容でした。皆さんも見て知っておられると思いますが、感動的な実話ばかりです。これらの中に突き通っているのは、「ゼロからのスタート」、「技術力、物造りの国、日本」という事だと思います。そうです、戦争に敗れ何もかもゼロからのスタートで、いろいろなものを犠牲にして進んできた結果、経済大国、先進国としての日本を築き上げてきたのです。その話に感動しないわけはありません。
現実と今井氏の締めくくり
 戦後の日本を技術大国、先進国にのし上げてきた多くの方々は、団塊の世代やその前の時代の方々です。その輝いた経歴をお持ちの方々ほぼ全員がリタイアされる時期が、間近に迫ってきました。いわゆる2007年問題と言われている内容です。誰がその方々のDNAを継承していくのでしょうか。
現在、技術力で定評のあった大企業のいくつかが、アジアの競合他社に抜き去られて浮かび上がれない状況が目立ってきました。よくよく見てみると技術者出身の経営者が少ないのに気づきます。また、フリータやニートなどという言葉が普通に使われ、今の若者が次代を担えるのか、などという記事や特集があちこちで目に付きます。「プロジェクトX」で描かれている内容が素晴らしいだけ、現状とのギャップのあまりの大きさに愕然とします。
 ITエリアで見ても、若手エンジニアのスキルの低さ、向上心の無さなどは、人を育てるという企業意識の低さも一因となっていると推測していますが、それらは時間をかけて積み重ねられ、現在の状況になっているので、いかんともしがたいものになっています。
 「ITスキル標準」に関わって3年余り、さまざまな方々と話してきて絶望したり愕然とした事が多々ありました。現在でもスタート時期のやる気を維持できているのは自分でも不思議なほど、いろいろな事がありました。余計な事をするなということか、嫌がらせを受ける事もしばしばです。しかし、私は今井氏のお話を聞いて、やればできるはずだ、日本人は優秀なはずだと再度信じる事が必要だと強く思いました。

 今井氏は締めくくりに次のように言われました。

「想いは叶う。」
「逆境であっても努力すれば実現できる。」

大切にしたいと思います。
登録:2011-01-30 15:41:28
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