スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
ITスキルスタンダード研究所
スキルスタンダード研究所についてニュースサービスドキュメントコラムお問い合わせ
コラム
第54話:動き出せるか、ITSSを活用した地域の人材育成〜その1 名古屋での企業導入ワークショップ
 地方へ出かけると、ITSSは首都圏を中心にして盛り上がっているだけだろうという声が聞こえてきます。確かに地方は情報不足で制限があることも多いと思いますが、与えてもらうのを待っているだけで、自らで動こうという考えが希薄に見えます。勉強会と称して、いつまでも勉強しているようでなかなか前に進みません。そういう状況でも地道に活動を続けている地域がありますが、ついにその中の代表格・名古屋が動き出しました。
地域ソフトウェアセンター、情報サービス産業協会について
クリックすると拡大  全国19ヶ所に位置する地域ソフトウエアセンターは、IPA(情報処理推進機構)が大株主になっており、地域の高度なITプロフェッショナルの育成をミッションとして活動しています。昨年度よりIPAが独立行政法人になり、地域ソフトウェアセンターも単なる地域の下部組織ではなく、プロフィットを追求する事業体になるべく改革を進めている段階です。地域の情報サービス産業協会は、ほぼ各地域の経済産業局単位に存在しますが、東京の社団法人情報サービス産業協会とは殆ど連携できておらず、地域で自治体や団体などと連携しながら独自の活動を続けています。
地域でのITSS認識度は?
 この1年あまりで私が地方に出かけたのは、大阪、名古屋、北海道、新潟、仙台、福岡、浜松、山形、岐阜、沖縄で、名古屋は3度、北海道は4度訪れています。この2つの地域を除けば、ほぼどこも今だ勉強会の域を出ないと思われます。ここに挙げた地域は、どこも私に指名で講演依頼がありました。それ以外の地域からは声もかかっていません。まずIPAに依頼するのはよくある話ですが、次のステップは実例や具体的な話を聞きたいはずです。他の地域は、まだそこまで意識が行っていないということだと解釈しています。
活発な名古屋と北海道の活動
 北海道には4度講演で訪れたと言いましたが、内容は北大、経済産業局、ソフトウェア協同組合、DEOSのそれぞれからの依頼です。この月末にもDEOSの依頼で訪れる予定で、5度目となります。DEOSではITIL・ITSS研究会と名打って真剣な取り組みが続いています。
 名古屋はITSSユーザー協会の立ち上げ直後に講演会で一度訪れ、その後進め方などの相談を繰り返してきました。それが実り、今回名古屋のいくつかの企業を集めて実践導入のコンサルティングをすることになりました。愛知県情報サービス産業協会(AIA)と名古屋ソフトウェアセンターに音頭を取っていただき、7月から3ヶ月の予定でITSSの実践導入を進める予定です。先にDEOSにもこの方法を提案しましたが、いまのところ実現していない内容です。
ITSS導入の実践とテンプレートの作成
 現在の予定は次のようなものです。

・5社程度の企業を募集して7月から3ヶ月でITSS導入を実践し、名古屋地域で共通的に使えるテンプレートを作成する。
・対象はITSSを導入することを決めた企業であり当然作業が伴い、勉強会のレベルではない。
・1社をモデル企業として取り上げ、通常の導入コンサルの手法で作業を進める。
・モデル企業以外は、モデル企業の成果物を参考にして自社に適用する。

 このテンプレートができれば、地方の企業がコンサルなどを使うことなく、自社で手軽にITSSを活用できるようになると考えています。以前地方の企業の方と話すとITSSは職種専門分野が多すぎ広すぎで地方に合わないので、地方版を作ってほしいという要望が多くありました。これは大きな誤解で、ITSSは共通のフレームワークですから、大企業向けとか、中小向けなど何パターンもあってはいけないのです。まずはこの辺りの理解をしっかりしておかないと、地域で育成すべき人材像を明確にできません。その地域独自のフレームワークをここではテンプレートと呼んでいますが、それを作ることとITSSフレームワークを共通的に企業間などで使うことは別なのです。言い換えると地域で必要な人材を育成するのと、調達や企業比較は根本的に異なるということです。
 私はこのテンプレートをITSS-Template for Nagoyaと名付けました。
名古屋地域の企業はこのテンプレートを使えば、ほぼそのままの状態で人材の見える化ができることになります。ただし、製品ではないので、改善しながら良くして行くという考えの下に成り立ちます。ですから、テンプレートといえど柔軟性のあるものになります。皆さんはこういうものを待っていたのではないでしょうか。

地域の今後の展望
 ITSSユーザー協会をスタートし、スキル管理システムSSI-ITSSのASP事業化を宣言したのが2年前ですが、その時にIPAの人材育成部に地方展開の提案をしました。それは、地域ソフトウェアセンターが中心になり、その地域にITSSを普及させようというもので、次のような内容でした。

・地域ソフトウェアセンターに必ず1人はITSSを熟知し、できればコンサティングもこなせるような人材を育成する。
 これは、ITSS普及の上で絶対に必要だと考え、私が講師になって3日間のトレーニングを実施しています。
・地域ソフトウェアセンターがASP事業者となり、その地域の企業にSSI-ITSSを提供して行く。

 当時地域ソフトウェアセンターは、ITSSをしっかり理解できておらず、どうしてもまず診断ツールで現状を測定して、という考えから脱皮できず、また私が指導したITSS導入での要求分析や機能分析の意味や必要性を理解できず、進展させることができませんでした。
私からすると時間がかかりましたが、ようやくここに来たという感覚です。
 ITSSは何も首都圏の企業のためだけに作られたものではありません。地域まで正しく普及して初めて標準と呼べるものになると思っています。
 名古屋は、AIAの中島専務理事、山崎氏、ソフトウェアセンターの山崎氏の理解と熱い思いで、新たな一歩を踏み出します。首都圏大企業のITSS導入より、これは明らかに大きな前進であり、意味のあることです。
登録:2011-01-30 15:44:35
 サイトの利用について | プライバシーポリシー | 情報資産管理方針 |
トップページへ戻る