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コラム
第65話:ついにITSS導入への大きな盛り上がりの気配!ITSS V2の威力!
 ITSS V2のリリースにより、企業導入への気運が一気に盛り上がる気配です!ETSSリリース時に期待していましたが、今ひとつ盛り上がらず残念に思っていました。しかし、ここに来て「情報システムユーザスキル標準:UISS」が発表され、さらに多くの方が待っていたITSS V2がリリースされたことにより、多くの企業が本格導入に乗り出してきました。
活用側が考え、作り出したUISS
 UISSは、経済産業省の委託でJUAS主体に練り上げられました。私も、オブザーバやワーキンググループの委員として参画していました。その中で一番感じたのは、「活用視点を第一に考えられている」ということです。詳しくは64話を読んでいただきたいのですが、ユーザ企業が持つ課題に対するソリューションとして、いかに効果的に活用できるかというポイントが重要視されています。
 
ITSSのリリース、ITSS V2のリリースの意味
 それに対してITSS、特に旧バージョンは活用方法をあまり熟考せずに、まず世の中に早く出すことを優先したものになっています。この判断は評価できるものです。それまで無かったものを作り出すだけでも大変だし、出せる内容にしただけでも大したものです。それで物議をかもし出すのは当たり前で、ようやくそのことでIT業界の変革の一歩になるのです。
 バージョンアップまで3年と少し長く要しましたが、ここにきてV2がリリースされ、それまでの分かりにくさや使いづらさ、また提供側も自分の作品のように考えている方も少なくなりました。中身は構造化され、組み立てて活用するためのコンポーネント化の考えが取り入れられています。これで今後のメンテナンスが容易になり、心配は無くなりました。また、活用する場合にも、本来の参照モデルとしての位置づけで安心して効果的に使えることになりました。さらにISOなどの国際規格の考え方も取り入れられて、形式的にも制約が無くなっています。
ITSS活用に関する総括
 今まで何度もお話していますが、ITSSに取り組んでいるのは企業が主体です。それもITサービス企業が殆どです。その内容は以下のようなものです。

@成果主義などを人事制度上で取り入れている企業が多く、いかに正当に評価すればいいかを苦慮していた。それに対してITSSキャリアフレームワークが人事等級制度枠に似ているので、そのまま評価や制度化に使えると誤解した。
A教育ベンダがトレーニングを売ることを主目的にスキル診断ツールを作った。
B企業間の比較指標に使えるのではないかということで、自社の価値を知る目的で使った。しかし手段がないので、スキル診断ツールを使うケースが多かった。
C人材育成=研修メニュー作成と考える担当が多く、研修メニューを作る目的でITSSを利用しようとした。そのために現状が分からないとどうしようもないと思い、スキル診断ツールを使った。
今までの内容
 先に書いた内容で、導入した多くの企業が遠回りをすることになりました。@BCなどは、導入目的が不明確であったり、ITSSに対する理解不足が原因です。

 @については、人事評価制度は各企業の戦略であり、それを標準化してもあまり意味はありません。企業によって千差万別のビジネス形態であるのに、ITSSという枠にはめた制度化をするということがどういうことなのか、深く議論する必要があります。同じ人事制度に利用している企業でも、考え方などを参考にしているというスタンスがはっきりしている企業は、うまくいっています。
 Aについては、トレーニングを売るという教育ビジネスを進める上では当然のことで、使う側が目的をはっきりさせ手段として利用することが重要です。あくまでスキル診断をすることが目的ではありません。
 Bは、何の目的のために自社のバリューを知る必要があるのか、ということです。ビジネスモデルやサイズの異なる企業、また都心や地方のなど位置づけが異なる企業の平均値と比べても意味が無い場合が多いのです。企業間比較をして自社のバリューを知るというのは大事なことですが、それもあくまで手段であり目的ではありません。
 Cはまさに小さな目的のため、言い換えれば手段を目的としてしまっている典型です。人材育成担当が閑職であるというのも、まだまだ現実として残っています。

 これらは、企業にITSSを導入する目的が明確になっておらず、育成や調達、企業視点や個人視点などが入り混じって混乱している結果です。また自社ビジネスモデルや経営戦略の視点も、希薄になっていることが浮き彫りになっています。
なぜITSS導入気運が盛り上がっているのか
 では、先行して導入した企業が悪いのかというと、全くそんなことは無く、一歩踏み込んでチャレンジしたということは大いに賞賛されるべきです。ただし、場合によっては方向転換する勇気も必要になります。一方踏み出さず待っていた企業は、多くの先行事例が出たわけですから、間違わずに導入を進める責任があります。
 UISSでは活用側の視点で、ファンクション定義とスキル定義をセットで提供することになります。導入する企業のモデルに合わせて必要な機能を選択すると、ベースのスキルセットが出来上がるという仕組みになっています。UISSでは人材像に当たるキャリアフレームワークは(注意:ITSSキャリアフレームワークは人材像ではない)、重要視されていません。なぜなら企業により職種の役割や責任範囲などが異なるからで、それを既成のものに当てはめるということはできないからです。ITサービス企業では、この考えは若干薄まりはしますが、根底は同じであると考えています。
 その考えをITSS V2では明確にしています。そのキーワードは以下の通りです。

・「共通指標」
・「ビジネス戦略に合わせて企業固有に再定義」
・「参照モデル」
・「すべてを必ず使う、そのまま使うという位置づけにはない」

あまり多くの説明をしなくとも、このキーワードだけで理解できる方は、今までITSSにチャレンジして悩んでこられた方です。初めての方も素直に受け取ればいい表現です。
 ITSS V2のリリースで、今まで誤解して遠回りされた企業が気づいてきました。さらにUISSの登場により、ユーザ企業が真剣に取り組む姿勢になってきています。
 「人材が全てだ」と言われていて理解や行動が伴わない経営者が多い中、本当に理解して人材育成に投資し、積極的に進める経営者の方が増えてきたということです。他社と差別化し業績を上げる、また魅力的な企業にするという目的のためには、人材育成が必須であり、それが経営者の最大のミッションだと分からない経営者はいないはずです。

<導入の観点>
@ビジネス目標達成に貢献する人材を育成・調達するためには、ビジネス戦略を元に目標とする人材モデルを定義する必要がある。
 (ビジネス目標達成のためには、どのくらいスキルを持ったエンジニアがそれぞれどのくらいの割合で必要か。)
Aその目標モデルと現在のリソースの状況とのギャップより、人材投資計画を立てる。
Bビジネス目標に対してのエンジニアの貢献度を、どのような尺度で評価するかを明確にする。
C人材育成計画立案、実施、投資効果把握・評価、改善のP-D-C-Aをまわす運用モデルをデザインする。
▲▽ 関連サイト ▲▽
9月20日出版「ITSS V2の分かる本」
登録:2011-01-30 15:46:24
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