スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
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コラム
第68話:UISS(情報システムユーザスキル標準)のインパクト
 弊社サイトのアクセスがものすごい勢いで伸びてきています。ITSSに関する生の情報が少ないということもあるでしょうが、ここにきてUISS(情報システムユーザスキル標準)の情報を求める方々が急増しています。同じようにコンサルティング依頼も、ユーザ企業の方が多くなってきました。UISSをもっと知りたいという方に、最新情報第2弾です。
UISSリリースの考え方
 ITSSは、ITサービスを提供する側の考え方を元に作成されていいます。これは、内容を少しでも読めばすぐに分かることです。筆者がコンサルティングを手がけたファイザー社は、構築したスキルセットの50%程度しかITSSの内容を使えませんでした。
 ITSSのリリース時にユーザ企業の方からは、「ITSSは、ITベンダ側のルール作りでしょう。早くいい物にして効率的にして下さい。」という意見がほとんどで、定義内容を反映してかまるで傍観者という雰囲気でした。
 ところが最近は、ユーザ企業が抱えている悩みという別の側面からITSSに注目が集まっています。そして絶妙のタイミングで、経済産業省の依頼を受け、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が主体となってUISSが策定されました。内容としては、ITSSやSLCP98、情報処理試験スキル標準などをベースに構成されており、すでに第1版が経済産業省から発表されています。
ユーザ企業の悩み
 現在多くのユーザ企業が課題として捉えている内容は、以下のように集約できます。

・「IT部門」は、経営者からすると「戦略部門」という位置づけで期待が大きいが、実態はそうなっていない。
・その原因は、以下のように考えられる。
 −他の現場部門から見て、単なるインフラ管理部門という認識になっている。
 −アウトソーシングの推進で、ITベンダにかなりの部分を任せている。
  IT部門は人員も少なく、スキルの空洞化がおきている。
 −IT部門のメンバは、自らの企業のビジネスとは直結していないように思え、また希望してIT部門に属していない場合も多く見かけられ、キャリアパスをデザインしにくく、仕事に対するモチベーションが上がらない。

 しかしながら、先にも書いたようにITと企業経営はますます密接になり、経営者のIT部門への期待は大変大きなもので、経営層の方々自らがIT部門のあり方を真剣に考えるようになってきました。
 そして、ユーザ企業の内部に向けた人材育成に対する取り組みについて、次のような考えになってきています。

・ビジネスをマキシマイズするための人材育成に対して、何にどのくらい投資するべきかの判断材料とする。
・継続的なスキルの定量的測定を行い、経営戦略に合った長期的な人材育成の一助とする。
・個人のパフォーマンスを上げるため、キャリアパス構築の指標とし、モチベーションの向上を図る。
・ビジネス戦略上の適材適所を実現するため、各サイト及び各組織における人材スキルの定量的測定を実現する。
・上司、部下間の能力評価時のコミュニケーションツールを提供する。

 さらにユーザ企業の外部に向けては、「調達」という観点が明確になってきました。

・契約先、またはアウトソーサーから提示・提供される見積、提案、成果物などが適正かどうか判断する必要がある。共通のメジャメントとなるものを利用し、評価する。
・適切に活用すると、ビジネス戦略にあった調達が可能。
・費用対効果の明確化が可能。
・コストダウンにつながる。

 このようにユーザ企業での取り組みは、目的が明確なだけに、思いのほか早く進む可能性が高いと考えています。
今後の展開
 64話で解説したように、第1弾として発表されたUISSは、考え方と枠組み、そして活用のポイントについてです。特徴的なのは、活用についての手順としてスキルを求めるところから入るのではなく、あるべき機能を定義するところから入るというものです。UISSでは、ユーザ企業のIT部門として必要な機能を網羅的に定義してあり、そこからUISSを活用する各企業の戦略やビジネスモデルを基に、必要なものを選択してくるという方式です。選択した機能に必要なスキル定義がセットになっているので、機能を選択するだけでスキルセットの基本形ができるという考え方です。活用側に軸足を置いた素晴らしい考え方です。また、これは、企業戦略から入るという理想的なトップダウンでの策定手法と言えます。
 現在のUISSの内容は、まだスキル定義にまでブレークダウンされていない状態で、6月から始まる予定のJUAS内の委員会で、具体的なスキル定義ができ上がる見込みです。したがってUISSを企業で活用するには、スキル定義のリリースを待つ必要があります。
 また、コンピテンシに関しては、企業のあり方によって千差万別であり、企業文化そのものとも言えるため、除外されることになっています。
 弊社のコンサルティングサービスへの引き合いが、以前にも増して多くなってきていますが、ユーザ企業の割合も圧倒的に増えてきました。本格的にITSSやUISSの考え方を元に、仕組みとして導入する必要性が明確になってきたと言えます。ついに人材の質に関して、いかに高めていくかという難題に、企業が正面から向き合おうとする姿勢になってきたと実感しています。何もしなければ魅力の無い企業になり衰退してしまう、質のいい人材を抱え、競争に打ち勝っていくという企業の意識が顕著になってきたということです。
▲▽ 関連サイト ▲▽
9月20日出版「ITSS V2の分かる本」
登録:2011-01-30 15:46:51
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