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コラム
第76話:UISS/ITSS V2の導入手順〜その4 ファンクションモデリング
 74話では「要求モデリング」で企業の経営戦略などから人材に関する要求事項を具体的にまとめることをお話しました。75話では、ITSS V2とUISSの共通インターフェースとなる位置づけが期待されるスキルディクショナリについて具体的に述べました。今回は、導入時に重要なステップの2つ目、「ファンクションモデリング」についての解説です。
ファンクションモデリング〜業務機能分析
クリックすると拡大  「ファンクション・モデリング」については、システム構築の「業務機能分析」に当たります。システム構築の場合には、システムに必要な機能を整理してまとめて行くことになります。これはEA(Enterprise Architecture)の業務分析の部分を実施することと同意になります。その機能をもとにDFD(データフローダイアグラム)などを書いて行き、ブレークダウンして行くとプログラムやモジュールに落ちていくことになります。ITSS、UISSの導入の場合は、3カ年経営計画を元にするということでしたら、3年後に目標を実現するために、企業として必要な機能を定義して行くことになります。これは組織も属人性も削ぎ落とされており、シンプルにビジネスを遂行するためのあるべき姿の機能表現となります。企業にとっての「To-Be ファンクション・モデル」を作り上げるということです。先のステップで人材に関する要求モデリングを実施していますので、その考えを前提とした「To-Beファンクション・モデル」を策定するのです。図は、実際に作成されたファンクション・モデルの一部です。各企業で持っている標準開発手順や業務フローなどが参考にできますし、IPA/SECから出ているSLCP98やPMBOK、ITILなども効果的に活用できます。
UISSは、あるべき機能から入ると言うトップダウンの考え方を基本としており、フルファンクションを提供していますので、必要な機能を選択するだけで、ベースは出来上がることになります。
 お分かりのように、ここまでは一切スキルについては出てきません。また、システム構築はエンジニアの得意分野ですから、この方法ですとエンジニアがレビューに入って来ることが十分可能になります。「ITスキル」は現場のものであり、人事や人材開発、ましてや外部のコンサルが作ったものを使うのではなくて、現場のエンジニアに策定に参加しているという意識を持たせることに大きな価値があります。「ITスキル」は、間違いなく現場のエンジニアたちのものなのです。レビューの中で手法や内容を詳しく説明しなくても、「3年後にそのビジネスを目指すなら、機能をもっとブレークダウンして詳細化しておいたほうが良い」など、積極的な意見がすんなりと出てくることになります。
手法に対する取組み方
 ここまで「要求モデリング」、「ファンクション・モデリング」と進めてきました。これらを読まれた方は、「システム構築の上流など経験したことがない、こんなやり方はとても真似できない」と思われるかもしれません。しかし、これらの内容は何も上流工程に限ったものではありません。物事を進めるのに、目的をはっきりする、それが企業なら明確なビジネス目標として定める必要がある、人材をベースとしているのなら、目標達成のためにさらにどのような人材が必要なのか、ということを明らかにしていくのは当然のことです。それが、スキルから求めていくことで成り立つでしょうか?有り体のスキル診断をして現状を把握するだけで可能でしょうか?自社のビジネスモデルと経営戦略をベースにした目標人材モデルが必要なのです。それを先に頭を使って考える必要があるのです。考えないで、また議論しないでいい結果を出せるような簡単なものではありません。また、他者に説明ができないと浸透させることが難しくなります。いかに現場を巻き込み、自分たちのものだと認識させることはとても重要です。
 今まで取組まれてきた方々が、これらの考え方や手法に接して、もし考え直す必要性を感じたなら、勇気を持って声を上げてください。勇気を持って引き戻すことが大事です。
9月出版の高橋秀典著「ITエンジニアのためのITSS V2が分かる本」翔泳社
 以前から少しづつお伝えしている著書は、出版まで1ヶ月あまりになって最終校のチェックに入っています。内容は、今まで書き続けてきたことを、事例や実話を交えながら集大成したものになっています。ITSS V2だけでなく、UISSも大きく取上げており、さらに今後の展開についてのモデルも明らかにしています。
 単なるスキル標準の導入にとどまらず、変化に柔軟に対応できるあるべき姿の組織作りにフォーカスし、一方ではITエンジニアが将来に向けてどうあるべきかに言及した内容になっています。是非ご期待下さい。


 次回は、「ファンクション〜スキル変換」についてお話しする予定です。
▲▽ 関連サイト ▲▽
9月20日出版「ITSS V2の分かる本」
登録:2011-01-30 15:47:51
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