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コラム
第87話:「ITSS V2」、「UISS」についての理解〜その4 最も効果的な活用法「ITSS V2+UISS」(前編)
 企業にとって最も効果的な活用法は、「ITSS V2+UISS」の考え方です。これまで、それぞれの活用ポイントを別々に語ってきましたが、弊社の多くの導入経験から、現在最も効果的なのは、両方をうまく生かした活用法であると確信しています。
くどいようですが、「目的」は何ですか?
 コラムも今回で87話になりましたが、その間一貫して言い続けているのが、ITSSやUISSを導入して、「何の目的で活用するのか」ということです。
 ここで徹底しておきたいと思います。目的を大きく分けると次の3点になります。

@企業のビジネス目標達成に貢献する人材を育成するため
A企業間比較をして自社の位置づけを知る、もしくは人材調達に生かす
Bエンジニア個人にスキルアップする環境の提供

 目的を明確にしておかない限り、社員に対して説明責任を果たせないし、継続的な活用も難しくなってきます。
目的が異なると、その目的を達成するための手段も変わってくるのが一般的です。この場合も例外ではなく、それぞれの方法論が異なってきます。もちろんこれら3点を複合したい場合もあるでしょう。しかし、企業として活用するのですから優先順位を決める必要があります。

 @は、自社のビジネスモデルや経営計画、事業計画などを元に考えて行く必要があります。つまり、自社のビジネス目標を達成するための人材を、To-Beとして定義することになります。これは当然企業によって異なります。どのようなスキルセット、キャリアフレームワークになるのかも、ビジネスモデルや目標によって異なってきます。要らないものまで取り込む必要はありません。To-Beを定義した上で現状を把握すると、ギャップが明確になり、適切な育成プランを立てることが可能になります。また、その投資効果も明らかにできるのです。

 Aは、共通指標としてITSS V2のキャリアフレームワークや定義体をそのまま追加変更なしに使用することになります。これは、単一のIT業界の中にいるITサービス企業のみに有効な考え方です。なぜなら複数の業界に属するユーザ企業のIT部門同士で比較する必要は無いからです。IT部門は自社のビジネスに貢献することが最も大きな使命だからです。また、今のところ人材の流動性に関する議論もユーザ企業に限定して言えば、それほど多くはありません。
 ITサービス企業の経営層の方々は、自社が全体の中でどの辺りに位置づくのか知りたい、もしくはオラクルマスターを何人持っているかと同じように、ITSSのどのレベルに何人いるかを外部に示したいと言われます。これらは手段であって、本来の目的は企業価値を高めて、業績をアップしたいということになるでしょう。手段を目的にしてしまうと、現状把握で終わってしまい、次のステップが無いということになってしまいます。手段として企業間比較や人材調達をしたとしても、結局は@の目的を追求することになるでしょう。

 Bは、エンジニア個人がITエリアでの自分のバリューを認識し、キャリアアップのための一助とできるような環境を提供するということですが、共通指標としてITSS V2のキャリアフレームワークや定義体をそのまま追加変更なしに使用することになります。ただし、ITSS V2の提供物にはビジネスモデルが反映されておらず、あくまで共通指標なので、企業のビジネス目標を示すことはできず、エンジニア個人の汎用的な枠組みとして使用することになります。
導入アプローチの考え方
クリックすると拡大  結論から言えば、企業に導入することを前提に考えると、@の目的を外してはいけないばかりか、優先順位を高く設定する必要があるでしょう。まさか企業の位置づけを確認したり、現状把握だけで満足している経営層の方はいないと思います。現状を知った上で、どういう方針を打ち出し実践して行くのかが重要です。
 この図は、UISSの活用プロセスを簡略化したものですが、UISS概説書に載っている「トップダウン型アプローチ」だけではなく、現状把握から入る「問題解決型アプローチ」も並列で示したものです。トップダウン型で入れる企業は、なぜ必要なのか、どうすれば有効活用できるかを時間をかけて議論したり、試行錯誤した結果から取れる方法論であり、企業戦略や方針が明確になっていないと自信を持って進めることが難しい内容です。しかし、前向きに取り組む姿勢があれば、現状把握から入ったとしても、うまく進めることは可能です。やりやすい方法で進めればいいので、少なくともトップダウンでしかいいものができないと、決めつけるようなものではありません。ただし、現状把握から入っても、要求分析に戻って通常の進め方に戻すことが必須です。どうあるべきかを考える部分を外すと、やはりどうしていいかわからない、次のステップが無いと嘆くことになってしまいます。
なぜ「ITSS V2+UISS」か
 以前から言っている内容ですが、ITSSは成果物を提供していて、それに合わせていくイメージが強いといえます。一方、UISSは企業のビジネスモデルや戦略により、独自のものを作り上げていくための素材と手順を提供しています(第73話:UISS/ITSS V2の導入手順〜その1 導入アプローチ概要参照)。この考え方は、実はITSSにも通じる内容であり、UISSが後発だからこそ提供できたものだと考えています。
 そう考えると先の@の目的を元にするなら、ITサービス企業であっても、ユーザ企業であっても、次のそれぞれの提供物を使うことによって、自社のモデルを策定することが可能であり、最も効果的であると考えることができます。

・キャリアフレームワーク
 → ITSS V2/UISSキャリアフレームワーク そのものではなく、職種やレベルの考え方の適用
・導入手順
 → UISS活用プロセス
・タスクの定義
 → UISS機能役割定義
・スキルセット
 → UISSスキル定義、ITSS V2スキル定義
・評価プロセス
 → 人事評価制度、ITSS V2達成度指標の考え方の適用
・育成プラン
 → To-Be/As-Isのギャップから 研修ロードマップを活用


次回後編は、「ITSS V2+UISS」のさらに具体的な内容をお届けします。
▲▽ 関連サイト ▲▽
高橋秀典著「ITSSエンジニアリング」の本
登録:2011-01-30 15:51:28
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