一口に「人材育成」と言っても、過去に繰り返してきた研修プログラムを作成することだけでは、企業が厳しいビジネス環境を生き抜くためには、到底物足りないと言わざるをえません。 今回から数回に分けて、企業戦略に合った人材開発を進めるための「人材体系構築法」を解説していきます。
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思わぬ落とし穴「人材体系構築」自体の目的化 |
システム構築の場合は、システムが出来上がったときが、「本来のスタート」であり、実際に顧客が使い始めてどのくらい効果があるかを評価されます。運用計画や信頼性が非常に大切なわけです。 それと同様で、人材体系構築を終えて使い始めるタイミングが、企業にとってのスタートになります。様々な層からの抵抗が必至ですし、うまく浸透させるためには、その前提での周到な準備が必要です。
また、逆にシステム構築と異なるのは、導入後の仕組みの完成度はあまり高くない点で、良くても70%程度だということを認識しておく必要があります。 つまり、運用しながら改善する仕組みも、同時に考えておくことが必須となるわけです。 |
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スキル標準を使うという認識は当初のみ |
「ビジネス目標達成に貢献する人材」を育成するために、企業は投資するのです。このことに異論は無いはずですが、そうすると「iCDを導入している」、もしくは「DXスキル標準を使っている」ということは、さして重要ではなくなります。
IPAの調査などでは企業の何%が使っているか、ということがよく取りざたされますが、これは提供側の視点に立った話しであって、活用側からすると使っているからといって、うまく人材育成のPDCAを廻しているということには、必ずしもつながりません。
運用がうまく行っている企業では、スキル標準を参照したという認識が強く、使っていると発言される方は少ないのです。もちろん、一から作るのは大変であって、スキル標準として提供されているコンテンツを最大限活用していることは、言うまでもありません。
そればかりか、導入作業の途中でスキル標準という言葉自体が登場しなくなるのが、普通のパターンです。スキル標準を有効利用すればするほど、自社の独自性や特徴が見える化され、過不足が明確になります。 ということは、原型から大きく変わっていくことになり、「スキル標準を使っている」という認識は薄れることになるのです。 |
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自社に合った「人材体系」構築、その第一歩は、あるべき姿の検討 |
それぞれ企業では、企業戦略に合った人材体系を構築し、それを使ったTo Beを明らかにして、現状(As Is)を把握してギャップを明らかにする、そしてそのギャップを埋めるための人材投資計画、育成計画を立案するという流れになります。 DX推進においても基本的な考えは同様ですが、短期の目標しか見えない上において、試行錯誤を繰り返す前提での体制づくりや運用が必要であるという点が、異なることになります。
では、企業戦略から自らがどうなりたいかということを明らかにするために、何をどうすれば、また何からとりかかればいいのでしょうか。
図は、ある大手生命保険会社のIT部門で作り上げた「要求モデル」です。 CIOや責任者の方々に絶賛された成果物です。
IT部門は数百名のメンバで構成され、アウトソーシングなど業務委託で同じくらいの数のパートナー人材を活用しています。
このモデルを策定するために読み解いたのは、情報システム部門の事業計画、ビジネス部門のIT戦略・事業計画、人事部門の人材戦略などで、さらにCIOや事業責任者にインタビューも施しています。
企業戦略や事業計画には、人材育成の重要性には触れられています。しかし、それを読んでもメンバには自分が何をすればいいかが、今一歩ピンと来ない場合が多いと言えます。
このモデルように、企業戦略や事業計画から組織力や人材に関して、どうあるべきかを導き出していくと、CIOや責任者、また一般メンバにも理解できるものが出来上がります。
あるべき組織、あるべき人材について説明できるものを用意し、関係者全員に共通認識を持たせる。これが、自社に合った人材体系構築の第一歩となります。
〜その2に続く |
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登録:2022-12-13 20:00:37
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