IT系企業やユーザ企業情報システム部門において、ITトレーニングは人材を確保する有効な手段であり、とりわけ大きな投資効果を期待しているはずです。しかし、一般的には多くの経営者が発する言葉とは裏腹に、IT人材の育成に消極的に見える企業もあるようです。
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トレーニング効果のROI(投資回収率)分析 |
経営者が人材育成に消極的な理由として、ITトレーニングは大きな支出を伴う一方で、とりわけ実施の根拠や費用対効果が見えにくいと言われることが多いと言われているからです。それは、IT人材育成に投資した結果、ビジネスに対する直接的な効果が表れにくいということになり、先のIT人材の育成に消極的という原因になっていると推測されます。
トレーニング結果を「ROI(投資回収率)分析」することによって、トレーニングの価値を客観的に評価し、コスト節減やトレーニング計画の改善を図ることが可能です。 しかし、具体的な仮説や評価指標を設定しておかない限り、分析結果をから具体的な投資効果を算出することはできません。投資効果を推測や期待しても意味がありません。 また、先述したようにITトレーニングの領域では、しばしば投資効果が不明確なまま多くの支出がされているというのも事実です。ROIは単にコストと利益の比率を計算し、それを投資額に対する比率として表現するものなので、トレーニングの目標達成度がコストに見合う水準に達しているかどうかを調べる指標にすぎないわけです。よって、ROI分析を行ったからといって、簡単に成果が得られるわけではありません。 しかもROI分析の実施には、トレーニングの実施前、実施中、実施後のそれぞれの段階での評価作業を行うこととなり、大変な労力を必要とするので、その必要性は認識しつつも多くの企業が手付かずの状態だったとも言えるでしょう。 |
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ROI分析のポイントとトレーニング戦略 |
ROI分析を実施する場合には、特定のものを切り出して単独で評価するのではなく、プロセス全体に対する継続的な分析を視野に入れて、評価を行う必要があります。 評価や分析のポイントは次の通りです。
・トレーニングに対する受講者の反応の評価 ・トレーニング内容の分析 ・中長期的な技能の習得状況の分析 ・ビジネスへの影響の評価 ・実際にROI分析の実施
トレーニング結果のROI分析をしたからといって、すぐにトレーニングの効果向上や、予算削減を実現することは難しいでしょう。しかし、人材育成責任者はROI分析を効果的に実施することにより、トレーニングの費用を正確に把握し、その効果を具体的な数値とビジネスにいかに貢献できたかという両面で評価することができ、結果としてトレーニングを企業の総合的な事業戦略と確実に一致させることができるようになります。 つまり、責任者にとってROI分析はトレーニング予算の根拠を説明し、その効果を評価してトレーニング計画を改善するためのツールとなり、「ITトレーニングに関する不明確さ」を解決するための材料になるのは確かです。 ただし間違えてはいけないのは、ROI分析をすること自体が目的ではなくて、トレーニングの意義を認識し、内容を改善するとともに、トレーニング戦略そのものを考えることが目的であるということです。 |
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人材育成の効果と人材確保 |
別の観点で言うと、日本におけるIT人材不足はきわめて深刻ですが、一方で自分の技能を高めたいと希望する既存のIT人材も多くなっています。また、現在は学生のIT系企業やIT技術職への人気は低迷していますが、ITの将来性については総じて肯定的です。将来に期待が持てるということです。 この状況の中で、トレーニングの効果を正確に評価できないままだと、多くの浪費を重ねてしまうばかりか、IT技術職に興味を持っている人でも腰が引けてしまい、ますますIT人材を確保できないことにもなりかねません。 |
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登録:2024-06-03 16:47:37
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