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コラム
第88話:「ITSS V2」、「UISS」についての理解〜その4 最も効果的な活用法「ITSS V2+UISS」(後編)
 第87話の前編では、ITSS V2/UISSの導入目的の明確化の必要性、3つの目的ごとに考え方が異なること、また、有効活用するにはITSS V2とUISSの両方をうまく活用するべき、というお話をしました。今回はその後編としてさらに詳しい利活用内容についてお話します。
UISS活用プロセスの改良
クリックすると拡大  経済産業省・JUAS発行「UISS概説書」P.31に載っている活用プロセスは、最近この図のように変更になりました。以前は要求分析の次が「業務機能(To-Be)策定」、その次が「UISSとの突合せ・対象範囲確定」となっていましたが、「業務機能(To-Be)策定」に集約されました。理由は、To-Be機能を策定するときに、先に試行錯誤してTo-Beを検討するより、UISS提供の機能定義を参照しながら過不足を検討した方が、はるかに効率的だからです。
 UISSは企業の戦略を基にした独自のキャリアフレームワークやスキルセットを作り出すための素材と手順を提供していますが、この活用プロセスはまさにその手順にあたるものです。
 前編の目的@「企業のビジネス目標達成に貢献する人材を育成するため」に導入するなら、この手順はITサービス企業であっても適用することが可能です。混乱を避けるためにあえて再度記しておきますが、目的A「企業間比較や人材調達」に関しては、考え方が異なります。
 さらに手順だけではなく、UISSとして提供されている「タスク概要」や「機能・役割定義」も、同様にITサービス企業も活用することができます。
 
導入アプローチ概観
クリックすると拡大  この図は、ITSS V2/UISSの導入アプローチから運用のPDCAに至る流れを、大きく捉えたものです。要求分析、機能分析と進めるトップダウン型アプローチを主体としたものになっていますが、どの部分でITSS、UISSのそれぞれ何が活用できるかを示しています。スキルディクショナリはITSS V2/UISSの両方で定義されているスキル項目を一元化したイメージのものです。
 また、人事評価は切っても切れない関係にあるはずなので、どのように人事で定義されている職掌定義などとリンクさせるか、コンピテンシーはどう考えるかなども参考にしていただけるはずです。企業での人材像を定義する場合、コンピテンシーは外すことができないので、熟慮することが必要です。
 さらに、右上にある運用上の育成プロセスや評価プロセスの関わりも大変重要です。評価プロセスでは、ITSS V2の達成度指標の考え方が有効ですし、評価における上司/部下の育成ガイドライン、評価ガイドラインなども十分検討し、整備していく必要があります。
 この概観図で理解いただきたいのは、何かに合わせれば人材に関する問題が解決するのではなく、自らの頭で真剣に考えていく必要があるということです。素材と手順などガイドラインは整っていますが、それを活用する企業の考え方が基本であり、重要だということです。
ITSS V2/UISS活用における「人材像」の構成
クリックすると拡大  ここで、企業で必要な人材像をスキルで表現した場合に、どういう構成になるかを再度定義しておきます。
 最近新聞、テレビ、雑誌などで「スキルが不足している」ということがよく話題になっています。仕事に関することが多いと見受けられますが、実際は個人個人の生い立ちや性格的なことにまで話が及ぶ場合もあります。「スキルとは何か」という問いに対して、適切に答えることができる方がどれだけいるでしょうか?このように抽象的なものに思える「スキル」の捉え方について整理してみます。
まず知識とスキルの違いは次の通りです。

・知識
 仕事でパフォーマンスを発揮するための前提
・スキル
 知識を使って仕事などでパフォーマンスを発揮する能力
 ただし、応用力が利く能力(利かない能力はテクニック)

さらにスキルは、次の3つのスキル構造に分類されます。

・専門能力
 仕事をする上で、前提として持っていないといけないスキル
・ヒューマンスキル(人間理解能力)
 仕事で成果を出すための実行力
・コンセプチュアルスキル(概念化能力)
 他者のレベルに合わせて物事を概念化・抽象化するスキル

 IT系の場合、ITスキルが専門能力に当たります。また、コンセプチュアルスキルを分かりやすく説明すると、仕事内容について部下に指示する場合と、家に帰って何も知らない家族にその内容を話すのとでは全く異なり、分かりやすい内容にしたり、例え話など用意することになります。このように相手が分かるように概念化する能力をコンセプチュアルスキルと言います。
 また、ITスキルやコンセプチュアルスキルは、あくまで仕事をするための前提スキルですが、ヒューマンスキルは、それらを使って実行し成果を出すためのスキルと位置づけることができます。ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルを合わせてコンピテンシーと呼ばれることもあります。

 図は以前も紹介したカッツ教授の「企業における役割とスキルの関係図」です。
専門能力だけがあっても仕事で成果は出せません。ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルは、仕事を進める上だけでなく、人格形成上とても大切な要素になります。

・ヒューマンスキル(人間理解力)
 仕事は人を通して展開されます。したがってヒューマンスキルは重要であり、立場や 役割が変化してもその重要度は変わりません。キャリア開発の実践時の鍵であるとも 言えます。
 次に列挙してあるのは、ヒューマンスキルの代表的なものです。
 −コミュニケーション・スキル
  アクティブリスニング(受信)、アサーション(発信)
  上司が私を分かってくれない←上司に分かるように伝えたか
  (伝えたこと/伝わったことの違い)
 −プレゼンテーション・スキル −ネゴシエーション・スキル −アサーション・スキル
 −リーダーシップ・スキル −コーチング・スキル −カウンセリング・スキルなど

・コンセプチュアルスキル(概念化能力)
 具体的なものを抽象化する能力であり、1を聞いて10を知る洞察力もこの一つです。
 抽象的で概念的な話を聞くと何のことか分からなくなってしまうのは、この能力が不 足していることになります。他の職場で通用しない、他の会社で通用しないのが、典 型的なコンセプチュアルスキル不足の人材になります。

 −戦略的思考力 −情報感度 −情報収集力 −全体把握力 −状況把握力など

 実際にはかなり多くの分類体系になりますが、このように分類されたものを一つひとつ見ていくと、自分に何ができて何が不足しているかが明らかになります。他者を指導する場合も同様で、このような観点は大変有用であり、見える化の第一歩となる考え方です。
▲▽ 関連サイト ▲▽
高橋秀典著「ITSSエンジニアリング」の本
登録:2011-01-30 15:51:41
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