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コラム
第94話:ITスキル標準フォーラム2007in大阪 4月13日(金)のレポートです。
4月13日(金) IPA主催で大阪・全日空ホテルにて本格的なITスキル標準のイベントが開催されました。今回はそのレポートをお送りします。
プログラム
@13:00〜13:10 IPA事業のご紹介
         独立行政法人 情報処理推進機構 理事長 藤原武平太氏

A13:10〜14:40 「高度ITプロフェッショナル人材育成」についての鼎談
 (鼎談者)   松下電器産業株式会社 情報システム担当役員 IT革新本部副本部長 牧田孝衞氏

         株式会社オージス総研 代表取締役社長 加藤正和氏

         独立行政法人 情報処理推進機構 理事長 藤原武平太氏

 (モデレータ) 株式会社日経BP コンピュータ・ネットワーク局 企画編集部 部長 田口潤氏

B14:55〜15:35 ITスキル標準V2 2006の活用
        独立行政法人 情報処理推進機構 ITスキル標準センター センター長 小川健司氏

C15:35〜16:15 組み込みスキル標準(ETSS)の活用
        独立行政法人 情報処理推進機構 ソフトウェアエンジニアリングセンター 研究員 渡辺登氏

D16:30〜17:10 情報システムユーザースキル標準(UISS)の活用
        社団法人日本情報システム・ユーザ協会(JUAS) 情報システムユーザースキル標準センター
        センター長 高本久氏

E17:10〜17:40 情報処理技術者試験の動向について
        独立行政法人 情報処理推進機構 情報処理技術者試験センター センター長 澁谷隆氏
A「高度ITプロフェッショナル人材育成」についての鼎談 BITスキル標準V2 2006の活用
A詳細
「現代社会において、ITの社会への浸透度はますます増大し、その影響力も高まっています。そのような状況の中で、「日本のIT人材力」にかかわる問題が急浮上しています。IT人材の絶対的な量(人数)と質(スキルレベル)の不足、企業内教育や大学教育など人材を育成する仕組みの不完全性、IT技術者という職業の人気低下、高まらない日本のIT産業の国際競争力、ユーザー企業とベンダー企業の不透明な契約と評価など、IT人材にかかわるテーマは枚挙にいとまがありません。本鼎談では、これら様々なテーマの象徴ともいうべき「ハイレベルなIT人材の育成・処遇」に焦点を合わせ、問題の所在・原因やあるべき姿を、鼎談者の立場、経験なども踏まえながら議論していただきます。」

 以下の観点でパネルが進められました。
・実情と問題点
・教育
・活用
・評価にどう反映するか

 牧田役員は、「モノを作る前に人を作る」という有名な松下幸之助氏の言葉を引用されて、人材育成の重要性を話されていました。外に頼り過ぎてきて空洞化していることを是正するとともに、ITの枠に閉じこもらず経営課題に踏み込む「社内コンサル」的位置づけを目指すということです。活用ではITSSの基本的な考えは踏襲されているものの、松下オリジナルのフレームワークや考え方は、かなり議論されたものだと感じました。ITSSしかないタイミングで、ユーザ企業であるのにITSSを使わざるを得ないという状況での活用は、苦労されたと思います。UISSがあればどんなにすっきり活用できたかと想像に難くない内容です。
 加藤社長のお話は、まだ人材育成の考え半ばという印象で、ITSSの考えの大枠の域を出ず、自社に当てはめて試行錯誤されているという印象でした。
 筆者としては、パネルもいいですが松下の内容をもっと突っ込んでお聞きしたいという思いが残った内容でした。

B詳細
「2002年12月、経済産業省において各種IT関連サービスの提供に必要とされる人材の能力を明確化・体系化したITスキル標準が策定されました。現在ではIT産業界における人材育成に広く普及し活用されており、従来に増してわかりやすさと使いやすさを追求するという方針に基づいて、IPAにおいて2006年4月にITスキル標準V2を発表。さらに2006年10月には、初めての定期改訂としてシステム運用を強化するためにITIL等を積極的に取り込んだ「ITスキル標準V2 2006」を発表いたしました。本セッションでは、最新版の「ITスキル標準V2 2006」を紹介するとともに、企業のビジネス戦略に基づく人材育成、投資にむけた活用について説明します。」

 東京で一度お聞きした内容なので、いい復習になりましたが、今後も積極的に改変されていくとイメージが残り、今後さらに良くなっていくという期待感と、あまり変えられては活用側でついていくことができなくなるという、複雑な思いに駆られました。策定側の理論と活用側の考えをぶつける場が必要です。
 また、3つのスキル標準のフレームワークを統合するなど手段に走っている感があり、大きな部分が見えにくくなることを懸念しています。IPAの責任は重いと考えさせられました。
C組み込みスキル標準(ETSS)の活用
C詳細
「2005年5月に、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、わが国の組込みソフトウェア開発者不足が問題となっていることを背景に、組込みソフトウェア開発の分野における人材育成や、人材の有効活用のための指針となる、「組込みスキル標準(ETSS)」を策定しました。本セッションでは、組込みソフトウェア開発者の人材育成・活用に有用な「ものさし」(共通基準)としてのETSSを紹介するとともに、各企業での活用方法について説明します。」

 渡辺氏とは、ETSS構想時点から色々議論している間柄で、今回の説明はそのプレゼンテーション力もさることながら、具体的な内容には共感を覚えました。考え方は大変明確で、あとは実際に活用されたショーケースをいかに世に出していくかだということだと思います。イベント後の懇親会でも会話しましたが、今度は作った人自らが導入させる側に立って、中身をブラッシュアップさせる時期に来ています。渡辺氏もよく自覚されており、今後の展開に期待が持てました。
D情報システムユーザースキル標準(UISS)の活用
D詳細
「2006年6月に、経済産業省は、情報システムの信頼性・安全性の確保が従来にまして強く求められていることを受けて、企業における情報システム機能の最適配置及びこれに必要となる人的資源の把握と的確な人材育成のための「情報システムユーザースキル標準(UISS)」を策定しました。本セッションでは、ユーザー企業の情報システム部に求められる機能、役割と情報システム部員に必要なスキルを表すUISSについて紹介するとともに、実際の活用方法について説明します。」

 UISSは、先行している2つのスキル標準を参考にして、かなり考え込まれた内容になっています(第93話参照)。今までは策定の中心人物である東京電力の沼田氏がITSSUGのイベントなどで紹介役をつとめておられましたが、今回はJUASにUISSセンターが設立されたこともあり、センター長の高本氏の初陣となりました。
 筆者は内容を熟知しているので、説明内容が良く分かるのは当然なのですが、何人かの初めて聞かれた方々の意見から、UISSに対して難解だというイメージを持たれたケースもあったようです。しかし、ITSSの考えとは異なる柔軟性を持つUISSに賛同する方も多かったように思います。
 スタート時での対応などが大きく普及に影響するのは、先行しているスキル標準が実証済みです。5、6月と新しいドキュメント類が出てくるこのタイミングが、UISSにとっての正念場かもしれません。
E情報処理技術者試験の動向について 全体について
E詳細
「情報処理技術者試験は、情報システムを構築・運用する技術者から情報システムを利用するエンドユーザまで、ITに関係するすべての人を対象に、情報技術の背景として知るべき原理や基礎となる技能について、幅広い知識を総合的に評価する国家試験です。本セッションでは、ソフトウェア技術及び市場のグローバル化を背景としたアジア展開など、今後の情報処理技術者試験制度の方向性について説明します。」

 情報処理試験の制度や、その資格を持っているエンジニアは日本の宝とも言える存在です。筆者は以前CAITの時代にデータベーススペシャリストのカリキュラム委員をしており、オラクル時代は部下をデータベースの試験委員に送り込みました。彼は今でも苦労?しているはずです。したがって日本のこの資格の重みや価値を良く分かっているつもりです。簡単に資格を持っていても仕事が出来るはずも無いと、決め付ける輩には腹がたちます。もっと自信を持って進めていっても大丈夫な実績と歴史があると思っています。産業構造審議会の人材育成WGでも方向性が出ていますが、スキル標準との統合には、手段に走らず大きな視点での策定を望みたいところです。

 大阪地区での本格的なイベントは、ITSSUGの立ち上げ時以来で、IPA主催としては初めてです。しかも3つのスキル標準が初めて話された場となりました。今まで東京でもなかったことです。立ち見に近い方々も出たくらいで、かなりの注目度だったと思います。これでやっと関西地区でも火がつくのではないかという予感がします。
▲▽ 関連サイト ▲▽
第93話:UISSについての正しい理解
「ITスキル標準フォーラム 2007 in 大阪」開催のお知らせ
登録:2011-01-30 15:52:49
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