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コラム
第129話:組織力強化に欠かせない「人材の育成・確保・保持」
 日を増すごとに目に見えて景気減速が進んでいます。つい最近まで売り手市場で、ITサービス企業やシステム部門では、新卒を確保するのは至難の業でしたが、この急速な景気悪化で採用人数どころか、非正社員の削減まで一気に進む気配です。
状況悪化を示す様々な情報
 10月から現在まで、景気悪化を示す様々な情報が出ています。
その中でも代表的なものを上げてみました。

・有効求人倍率が低下(厚生労働省)
 雇用情勢の悪化が続いています。厚生労働省が10月31日発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は0.84倍と、前月を0.02ポイント下回りました。前月比で下がるのは、8カ月連続で、2004年8月以来、ほぼ4年ぶりの低水準となっています。
 有効求人倍率は公共職業安定所(ハローワーク)で職を探している人1人あたりに何件の求人があるかを示します。9月は職を求める有効求職者数が0.6%増えた一方、企業の有効求人数が2.5%減り、倍率の低下につながっています。有効求人倍率の1倍割れは10カ月連続で、1倍割れの道府県数も35に拡大しました。

・人材派遣最大手のパソナグループの第1四半期(08年6〜8月)決算は、前年同期比44%営業減益
 (日本経済新聞)
 第1四半期は前年同期比44%営業減益となっています。全体売上高の90%を占める主力の人材派遣事業は、1ヶ月以上の契約を結んでいる長期稼働スタッフ数が同2.8%減と3四半期連続で前年同期割れとなるなど厳しい内容です。景気後退による派遣需要の低迷が原因だと推測されます。

・派遣切り:中小企業23%が景気悪化対応策に(2008年11月1日毎日新聞) 
 10月に発表された厚労省の調査は、全国のハローワークが従業員300人未満の中小企業4285社から経済情勢の変化に伴う事業や雇用への影響をヒアリングしたものです。調査では、輸出型製造業を中心に、派遣労働者や契約社員の再契約を停止する「派遣切り」が広がっていることが、明らかになりました。
 「収益圧迫」を感じている企業の対応は、「経費削減」(人件費除く)が69.5%、「価格転嫁」が28.5%、「賃金・雇用調整」が18.8%となっています。「賃金・雇用調整」は前回より3.8ポイント増え、じわりと雇用に影響が出ている様子がうかがえます。その中身は「ボーナス削減」が55.6%でトップですが、前回比では1.4ポイントの減となっています。「派遣やパート、契約社員などの再契約停止」の上昇ぶりが際立っています。
 特に輸出型製造業(43.6%)と製造業(29.4%)で再雇用停止の比率が高く、実際、自動車産業や電機産業で生産調整などの名目で派遣労働者の雇い止めが目立ち始めています。派遣労働者に対する企業の過剰感を示す指数(過剰から不足を引いた割合)は13.5(前回4.5)と急上昇し、輸出型製造業では26.0(同8.9)と突出しています。厚労省は「派遣労働者の雇用が特に厳しくなっている」と分析しています。

・上場企業21%減益 4−9月日経集計 電機や自動車が苦戦(11月2日 日本経済新聞)
 日本経済新聞社が2008年4―9月期決算を集計したところ、連結経常利益は前年同期に比べ21%減りました。金融危機に端を発した世界景気の減速、急激な円高、原燃料高が重しになっています。下期は減益幅がさらに広がりそうで25%減益になる見通しです。09年3月期通期では23%減益が見込まれ、7期ぶりの減益が確実です。

・10月倒産 6年ぶり高水準 上場企業は最多8件(11月11日東京商工リサーチ)
 東京商工リサーチが11日発表した10月の倒産件数(負債1000万円以上)は、前年同月比13・4%増の1429件で今年最多となりました。金融危機が深刻化した9月からさらに21件増加し、10月では6年ぶりの高水準です。また、上場企業の倒産は過去最多の8件を記録しました。
 倒産企業の従業員数は前年同月比26・4%増の1万6883人となり、9ヶ月連続で1万人を超えています。

・大手銀行6グループ:9月中間、大幅減益(11月19日 毎日新聞)
 18日出そろった大手銀行6グループの08年9月中間連結決算は、金融危機による不良債権急増と株安のダブルパンチで最終(当期)利益が前年同期比6割減に落ち込みました。米欧金融機関に相次いで出資し、「救済役」となってきた邦銀ですが、米国発の危機が波及し、一転して「冬の時代」に突入しつつあります。銀行の体力低下は融資の絞り込みにつながり、後退色を強める景気を一段と悪化させかねない状況です。

・自動車メーカー 人員削減拡大 (11月20日 NHKニュース)
 今年度の中間決算以降に、国内の期間従業員や派遣社員の削減を明らかにした自動車メーカーは7社で削減される人数は、これまでにあわせて8100人に上っています。このうち、トヨタ自動車は先月の時点で6000人いた期間従業員を、来年3月末までに半分の3000人に減らすほか、日産自動車は5つの工場で働く2000人の期間従業員を、来月末までに4分の1の500人に削減します。また、マツダは2つの工場で働く派遣社員1800人のうち1300人を来月末までに、スズキは6つの工場にいる600人の派遣社員を来年3月までに削減します。さらに、トラックメーカーのいすゞ自動車は2つの工場の期間従業員と派遣社員あわせて1400人全員を来月までに減らすほか、日産ディーゼルは国内の3つの工場で働く派遣社員1200人余りを来月までに200人削減することにしていて、これらの中には契約を途中で解除するケースもあるということです。このほか、日野自動車がすでに期間従業員を100人減らしています。こうした動きは、世界的に車の販売が落ち込み各社とも生産の縮小を迫られているためで、金融危機による世界経済の悪化は国内の雇用に深刻な影響を与え始めています。
「コストカット」と、「人材の育成・確保・保持」
 コストがかかり企業責任もある正社員を増やさず、いつでも切れる派遣人材を使ってリスク対策をしてきた企業ですが、先に述べたようにこの景況悪化の中、非正社員からの削減を実行しています。
 しかしながら、仕事の絶対数が減るわけではないので、少なくなった人数で対応せざるを得ません。そうすると、作業時間の増加、長時間労働による仕事の質の低下、その結果として離脱、もしくは精神的問題の発生など、さらなる負のスパイラルに入り込む可能性も出てきます。

 これまでも同じような景気悪化の状況があり、企業は人件費の削減や教育費のカットなどコスト削減を一気に進めました。そのときに念頭にあったのは「時間が経てば元に戻るだろう」という感覚で、事実ほぼそれに近い状態を経験してきました。

 しかし、残念ながら今回は、今迄のような単純なものではないようです。グローバル化された構造の中で、全体からすれば小さいとも言えるきっかけから、加速度的に景況悪化が進んでしまった現状を見ても明らかです。

 もちろん、コストカットは引き続きあるでしょうが、並行して企業の成長やビジネスに貢献してくれる人材の育成・確保・保持の機運が、ますます高まることになるでしょう。
 そのような企業に社員は魅力を感じ、夢を持って働くことに意欲を燃やすのです。
そうでないと、優秀な人材から去っていくのは明らかです。
登録:2008-11-23 18:31:21
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