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コラム
第11話:「ユーザー用ITスキル標準」について
昨年末に経済産業省の働きかけにより、JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)内に、ユーザー企業が使える「ユーザー用ITスキル標準」策定委員会が設置され、2005年1月から3月に活動されました。可能な範囲でその内容をお話しいたします。
日本情報産業新聞4月4日号
JUASで「ユーザー用ITスキル標準」策定作業が進んでいると、正式で具体的な内容が日本情報産業新聞(4月4日付け1面)紙面で紹介されました。3月の日経コンピュータの特集記事の中でも少し触れられていましたが、敏感に気付いた方は少なかったようです。紙面での記事は、かなり具体的で要約すると次の通りです。

・政府発表の「IT政策パッケージ2005の中で調達スキル標準」を2005年度中に策定すると明言。
・JUASにおいて「ユーザー用ITスキル標準」策定の方針作りが終了し、作成に取りかかる。
・経済産業省も積極的に関与している。
・ユーザー企業の中で、「ITスキル標準」利用方法に関して温度差がある。

この記事を書かれているのは、私も懇意にさせていただいている記者のS氏です。S氏はリリース当時から「ITスキル標準」にフォーカスされ、かなり多くの紙面を割いて特集をされたり、タイムリーな内容を紹介されたりしています。私の知る範囲の中では、一番熱心で「ITスキル標準」を理解された数少ない記者のお一人です。私にもかなりの回数取材され、そのポイントも的を得ています。
なぜ「ユーザー用ITスキル標準」?
昨年末に経済産業省からJUASに働きかけがあり、JUASの方々の素早い動きで委員会ができました。私にもオブザーバでの参加依頼が来ました。何故今までそれほど具体的でなかった話しが、こんなに性急に動いたのか考えると、思い当たる点がありました。昨年12月15日に、都市センターホテルでITSSユーザー協会主催の「ITSSユーザーズ・カンファレンス2005」が開催されました。イギリスのSFIAから来ていただいた基調講演や、ワーキンググループの成果発表、外部からのセミナーなど大盛況で、のべ1600名の方のご参加をいただきました。私もITSSユーザー協会の専務理事として講演いたしました。普通にお話しするだけだと面白くないと思い、講演の中で経済産業省の情振課・平山係長様、私がコンサルテイングさせて頂いたファイザー様、慶應義塾大学の大岩教授からそれぞれコメントを頂いたビデオを流しました。そのファイザー様のコメントの中に、「ITスキル標準」はITベンダーに焦点を当てられた内容になっており、ユーザー企業にはかなり過不足がある、ユーザーで使えるものについて話し合っていく場を作るべきだ、というくだりがありました。経済産業省の方も講演を聞きに来られていたので、この内容にかなりインパクトを感じられたのではないでしょうか。あくまで私の推測ですが。
委員会にはJUASの人材育成部会の主力企業の皆様が出席され、ファイザー様からも3名もの方が委員として参加されました。経済産業省からも毎回5名くらいの方が参加され、力の入れようも伝わって来ました。あと私の他IPA・ITスキル標準センターから1名、同じく情報処理試験センターから1名の方がオブザーバとして参加されました。
ユーザー企業の皆さんの危機感について
委員会自体の報告書は、今後どのような形になるかは分かりませんので、委員会での議論から私の感じたことをお話します。
強く感じたのは、ITサービス提供側よりかなり問題意識と危機感を持たれているということです。
理由としては次の通りです。

・経営者からIT部門に「IT戦略」の提案や実施を強く求められ始めた。
・要求に応えて行くには、以下の大きな問題を解決しなければならない。
 −これまでの経緯でITベンダーへのアウトソースを進めており、スキルを持つ人材が
  内部に少ない。
 −RFPまでベンダーにお任せで、さらに提案された金額を予算化しているケースもある。
 −IT部門のメンバの多くは、IT部門に配属されることを期待していなかった。
  したがって、今の仕事を自分の将来に結びつけるのが難しい。

このような問題を抱えておられ、如何に経営戦略にあった「IT戦略」を立案・実施して行くか、という経営目標を見据えるということを命題として、真剣に捉えておられます。また一方で、IT部門の皆さんのモチベーションをどのように上げ、パフォーマンスを最大限にして行くか、それぞれ個人の将来計画にどう結び付けて行くか、ということも重要な課題です。上司部下のコミュニケーションに、何をどのように使用するかも現実的で大切な課題です。
今後の展開
「ITスキル標準」は、戦略を持った企業が利用すると絶大な効果を発揮する、というのは経済産業省やIPAが発信し続けてきた重要なメッセージです。それを聞き逃し、または理解できず、何も考えずに人事制度に取入れたり、取り合えず診断ツールを適用してみたりと、最近のメディアで取り上げられているような失敗例が多いのは、殆どITサービス提供側です。私もその中に居ながら必死で訴えてきたつもりですが、それもやはりいくら聞いても理解できないのでは、と疑うほどの状態です。なんとも情けなく思っています。ですから、おかしな事例ではなく、ファイザー様のようないい事例を、どんどん紹介していくほか手がないと思った訳です。しかし、ユーザー企業の考えや真摯な取り組み姿勢を目の当たりにして、経済産業省の次の手は正しいと確信しました。2年以上かかって自分のものにできないITサービス提供者を尻目に、ユーザー企業がキャッチアップして突きつけて来られるのは、おそらく間違いありません。人ごとではありません。これでいくら儲かるかでもありません。社員数の多い少ないも関係ありません。企業が繁栄するため、社員のモチベーションをアップさせてパフォーマンスを上げるための取り組みが、本当に必要なのです。
これが理解できない方々はいないはずです。
登録:2011-01-30 15:32:46
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