スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
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コラム
第143話:最新版「ITスキル標準 概説書−人材育成への活用− V3 2008対応版」 解説(2)
 刷新され、IPAから発行された「ITスキル標準 概説書」の解説その2です。
ITスキル標準の狙い
クリックすると拡大  概説書では、ITスキル標準の狙いとして、次の2点が挙げられています。

・情報サービス産業の人材投資の効率化
・IT関連サービスの提供に必要とされるスキルを的確に身に付けた、質の高いプロフェッショナルの効果的な育成

 まず、「人材投資の効率化」について、今までの経緯を含めて掘り下げてみます。

 先の文章で、IT業界では「プロジェクトに必要な要員数を用意さえすれば事業は成り立つという事業形態が長く続いてきた」ことを挙げています。
 また、そのために「社内外を問わずエンジニアを確保することが、主体的な関心事」となっていた事実を指摘しています。

 これらから読み取れるのは、IT業界は表面的には今まで右肩上がりの成長を続けてきたが、その中にITエンジニアのスキルやノウハウを蓄積する仕組みになっていなかった、また、人材育成への取組み意識が極端に希薄だった、ということになります。

 大手企業であっても、人材育成や人材開発担当者には、昇進できなくなった方や、能力的に第一線では成果を出せない人材をアサインしてきたという残念なことが、長らく続いたという事実に、そのことが表れています。

 他業界では、人材育成や人材開発担当には、エリートをアサインするのが当然ですが、IT業界ではありえないことが起こっていたわけです。 ここ数年は、かなり取組み方が変わってきましたが、旧態依然の形が残ったままや、人材育成に関心が薄い企業が多いことも事実です。
人材投資の考え方とは
 やみくもに、ITエンジニアをスキルアップさせると言っても意味がありません。企業はビジネス目標達成が使命であるわけですから、そのためにどういう人材がどのくらい必要かを明らかにすることが先決です。
 これらは、人材戦略策定の要件となりますが、その大まかな流れは次の通りです。

・ビジネス目標達成のために、目標となる人材を分野ごとに明らかにする
・それぞれの人材が持つ能力、および必要人数を定義する(To Be)
・現有勢力での現状把握を行う(As Is)
・To Be/As Isのギャップ分析を行い、その差分を明確にする
・ビジネス目標とこの差分を吟味し、投資優先度を明らかにした上で、適材配置、人材育成計画、採用計画などを人材戦略としてまとめる

 この中での人材投資の対象は、適材配置・人材育成計画・採用計画ですが、その効果を測定して、リプランすることや次の計画に反映する必要のあるものでもあります。
投資効果の測定
 適材配置・人材育成計画・採用計画の中で、特に投資考課が見えにくいのは、人材育成だという意見が大半を占めます。
 その理由としては、次のものが挙げられます。

・人材育成というとトレーニング受講の印象があり、さらに受講後のビジネス貢献度など測定するタイミングも仕組みも無い
・仕事に必要なトレーニングかどうかわからず、とりあえずノルマ的に受講をこなしているだけ
・そのトレーニングで得た知識を、スキルに昇華させるしくみがない
・上司にその意志、ノウハウ、能力がない
・処遇制度など評価のしくみと連動していないので、全体に認識が低い

 さらに筆者が考えるのは、仕事、特にプロジェクトの成功・失敗に結びつくのは、IT人材の能力の差だけではなく、いかに個々人のパフォーマンスを最大化できているか、ということです。

 To Be、As Is、及びそのギャップについては、ITSSやUISSを活用すれば可視化することが可能です。
 しかし、パフォーマンスを最大化するためには、IT人材のモチベーションをアップする以外にはなく、そのためには経営層のリーダシップ、管理職の能力、評価など処遇制度が大きく関係することになります。

 つまり、投資効果とはこのような範囲で考えることが必要であり、単にトレーニングを受けたからその効果は?というのは、ほんの部分的なものに過ぎず、「木を見て森を見ず」とならないよう、注意しなければなりません。
登録:2009-06-14 09:13:48
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