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コラム
第164話:事例集発行記念セミナー・レポート 〜6月23日SSUG/JUAS共催で実施されたセミナーのレポートです
 今回は、「人材開発推進者の悩み〜スキル標準企業導入の様々な課題・制約に、どう立ち向かうか」の続編は次に回し、6月23日に開催された「事例集発行記念セミナー」(SSUG/JUAS共催)についてレポートします。200名の席が応募開始後数日で満杯になるという盛況振りでした。
事例セミナー
 当日のプログラムは次の通りです。

2010年6月23日(水) 13時00分〜17時00分 アイビーホール(青山会館)
【基調講演】
「岐路の立つIT人材 変革期こそ飛躍のチャンス」
     独立行政法人 情報処理推進機構
     IT人材育成本部 ITスキル標準センター
     グループリーダー 島田 高司氏

【ITSS導入企業事例講演】
「人事制度へのITSS活用(仮)」
     キーウェアソリューションズ株式会社
     人材開発室 人事労務担当マネージャ 山村 富教氏

【UISS導入企業事例講演】
「スキル診断はみんなのために」
 〜成長を実感させ、モチベーションを高める運用とは〜(仮)
     三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
     システム総括部 内部統制課長 遠藤 修氏

 他の講演については別の機会に譲るとして、今回はITSSを導入・活用しているキーウェアソリューションズの山村氏の講演をピックアップします。

 当初の理解不足で、導入したものの運用を継続できないほどの大問題となった状況を、どのように打破したか、大変興味深く今後導入をお考えの企業には、大いに参考になる内容です。
ITSS導入活用事例企業「キーウェアソリューションズ」
 山村氏の語る「初期導入〜失敗〜再導入」の流れは次の通りです。

 キーウェアソリューションズ(KWS)は、2003年にITSSを導入し、人事制度と連携させて全社に展開しました。
 しかし、理解不足からITSSをそのままの形で導入したため、自社のビジネスモデルに合わないことや企業戦略を表現できていないことが判明しました。
 その結果、現場だけではなく管理層からも不満が噴出し、対処する必要に迫られました。
 その状況を乗り越え、2007年に自社の考えを反映できる導入アプローチを採用し、現場の理解と協力を得て仕組みの再構築を終え、本格的な運用を開始、継続しています。
失敗の原因
 先述の通り、KWSの当初のアプローチは多くの失敗企業の例にたがわず、ITSSに何も手を加えずそのままの形でスキル診断を実施し、さらにその結果を人事評価に直接結びつけるというものでした。
 このようにITSSをそのまま使ってスキルチェックをすることを、To Be/As Isのギャップ分析だと言う理解の浅い方々も存在するようですが、これは企業視点には立っておらず、To Beは企業の「経営戦略や事業計画を基にして、意志の入ったもの」でないと意味がありません。ITSSの原型は、参照モデルとして共通化・抽象化されているものであって、企業の意志やビジネスモデルが入っているわけもありません。それをTo Beとして位置づけることは出来ないし、気付きにはなれどそれ以上の意味は殆どありません。

 理解不足の時点ではあまり選択枝がないので、これでいいかもしれないという確証の無い考えで進む場合が多く、いざ本番となり運用していくと、すぐさま何かおかしいと気付きます。そして、真剣に対策を考えれば考えるほど、根本的な考え方の不合理さに、なす術が無く愕然とするのです。

 KWSも同様でした。しかも人事制度に直結させたため、報酬とも密接に関係することになり、あまりの影響度に見直しを迫られることになったのです。
 しかも、2度目は失敗するわけには行かないという窮地に立たされた状態での、再導入作業を強いられることになりました。

成功要因
 失敗の原因から成功するための課題が見えてきますが、一度うまくいかず辛酸を舐めた方の言葉には、相当な重みがあります。

 山村氏が語った成功するためのポイントを、次にそのまま列挙します。

・ITスキル標準は「参照モデル」。自社のビジネスに併せカスタマイズを!
・導入推進者の理解度UPと、導入推進体制の確立
・経営層、社内キーパーソンを取り込み、全社のコンセンサスを!
・第3者は重要。外部のコンサルタントの活用も視野に
・導入手順は、端折らない。「ITスキル標準活用の手引き」を参考に
・全社員の意識統一を!「会社の思い」をしっかり伝える

 失敗→成功のパターンには、担当者の異動が伴うことがあり、その場合は一度リセットされて新たにスタートするイメージですが、KWSのケースは役員の責任者も含め失敗に至った体制のままで、再チャレンジし成功させたというものです。

 これは、自らの失敗を認めることになり、大変難しいデシジョンであったことが容易に想像されますが、あえてそれを認めた姿勢は大変素晴しく、その姿に社員の皆さんも共感されたことと思います。

 IPA「活用の手引き」で示された導入手順は、各ステップの目的が明確で、山村氏の言われるように端折ると辻褄が合わなくなってしまいます。成功に至る重要なポイントは、社員に納得のいくような説明ができることですが、そのためにはどのようなアプローチを取ったか、それぞれの目的は、成果物は、などの点が明確である必要があります。
 がんじがらめに縛ったアプローチではないので、活用の手引きを理解し進めることで、失敗する可能性はかなり低くなることは間違いありません。
熱い語り口
 全般にわたり熱いお話をされた山村氏でしたが、最後に語られた次のことが、強く印象に残りました。

 『人事制度を単に人事評価や給与決定の手段としてのみ捉えていたのでは、社員の「やる気」を喚起したり、社員としての「満足感」や「一体感」を生むことはできません。
 「会社が発展すれば、自分も良くなる」、「自分が頑張れば、会社が発展する」という関係こそが、社員の「やる気」を喚起し、「満足感」や「一体感」を生む重要なポイントだと考えます。』
登録:2010-07-04 11:16:15
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