スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
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コラム
第165話:リソース計画の目標値が、どの人材像/職種のレベルいくつが何人?! これだけではうまく廻せません
 ITSSやUISSなどスキル標準を導入している企業では、例外なく活用局面で苦労しています。
 以前も触れましたが、うまく活用するためには、企業視点の考え方を基に現場管理者が理解でき、部下を指導できる方法を提供する必要があります。
スキル標準活用の目的は
 最近、活用を始めて数年になる企業の責任者にお話を聞くと、導入のきっかけは「社員がキャリアパスの提示を望んでいる」、「効果的な教育プログラムを提供したい」、ということがよく出てきます。
 ITSSが出始めの頃は、「経営者が、自社がIT業界でどの辺りの位置づけなのか知りたいと言っているので取り組みを始めた」という声を多く聞きましたが、さすがに最近はほとんど耳にしません。
 なぜなら、レベル3以下にほとんどの人材が固まってしまい、経営者が落胆した上に社員のモチベーションが下がるというよろしく無い状態を引き起こしてしまいます。
 また、レベル7が業界の標準を作ったり、業界をリードしていく人材という定義のレベル基準を、そのまま自社に採用することが必要かどうかを理解されてきた表れです。企業に導入するわけなので、大抵はビジネスモデル上、目標達成のためにそこまでの人材は必要ないからです。

 では、効果的なプログラムの提供は当然のこととして、社員にキャリアパスを提示するということは、うまくいっているのでしょうか。
 今迄無かったものを提供することは、それだけで意味がありますが、具体的に提示すればするほど、次のような疑問が出ることになります。

・メンバからすると、人材像やキャリアパスは目指す姿として理解できるが、現実に担当する仕事を選べるわけではなく、スキルアップするために実践する場がない、絵に描いた餅ではないか
・管理者からすると、自分のミッションは部下に仕事をさせることなのに、現実に当てはめるのは難しそうなキャリアパスを提示したことによって、コントロールしにくくなる

 以上のようなことになると、社員がキャリアパスの提示を望んだから、という理屈は結果的に成り立たなくなります。これは言い換えると、社員のスキルをアップさせる、モチベーションを上げるということが導入の目的であったということになります。
企業導入の意味
 社員のスキルやモチベーション向上を図るのは、あくまで手段であって、その先にある目的は、企業や組織の目標達成にほかなりません。
 その観点が抜けてしまうと話が成り立たなくなり、仕組みの運用を担ってもらう現場の管理者や上司が、うまく理解できないばかりか、導入自体の説明が付かなくなって破綻してしまいます。

 企業が導入するのですから、企業力や組織力を上げるのが目的であり、そのためのHowでないと、誰も主旨が腹に落ちず説明できないという状態に陥ります。

 つまり企業視点で物事を捉えないと、人材像など個人視点だけでは、スキル標準の企業導入は成り立たないということです。
キャリアフレームワークの考え方
クリックすると拡大  企業視点で考えると、人材像とレベルで表現した個人視点の「キャリアフレームワーク」だけではなく、自社の経営方針や事業計画を盛り込んだタスク、つまりTo Be機能で表現した「タスクフレームワーク」が必要になります。

 キャリアフレームワークをあらためて定義すると、

 「個人が目標とすべき人材モデル・レベルを可視化する」

 ということであり、個人が中長期の視点で目標をおいて成長を目指すための指針となります。

 ITSSの優れたアーキテクチャとして評価が高いものですが、これだけを基にすると「来年度はPMのレベル4が10人に」というリソース計画になるわけです。

 先ほどの話のように、人材育成の仕組みを廻すのは、現場の管理者が主体となる必要があることから、その管理者の責任エリアでの目標を達成するには、どの人材のレベルいくつが何人で・・・ということになるわけですが、これを考えたことのある方は手に取るようにお分かりのように、自らの目標達成のために人材像/職種のどのレベルに何人というロジックがうまく立てられないのです。

 何故なら、キャリアフレームワークは人材像ごとになっており、仕事の視点になっていないので、その人材像のレベルいくつと責任範囲の仕事が、うまく合わず説明することが難しいのです。

 合わないものは、組み立ての根拠にならず、自信を持って部下にうまく説明できるわけもありません。結果、えいやで何人としてしまうしかなく、これは今迄やっていたリソース計画と、余り違いはありません。
タスクフレームワークの考え方
クリックすると拡大  「タスクフレームワーク」は、タスク(機能)ごとに、その実施における実力がどのくらいのものかを可視化するものであり、これが企業視点そのものの表現方法になります。
 人材像ではなく、タスクで見ることにより、組織の総力が把握できるだけでなく、計画立案の場合にも大きな助けとなります。

 図の例では、「プロジェクトマネジメント−プロジェクトの立ち上げ」のタスクについて、
・レベル1:R1(知識あり)の人材が1名
・レベル2:R2(指導・指示があればできる)の人材が4名
・レベル3:R3(独力でできる)の人材が2名
・レベル4:R4(指導できる)の人材が2名
いることを表しています。

 タスクフレームワークによって、機能単位の強み・弱みを可視化することができ、事業計画や組織のミッションに沿った組織の強化ポイントを確認することができるということです。

 例えば、「プロジェクトマネジメント力の強化」が組織の課題だとすれば、プロジェクトマネジメントの中でも具体的に何を強化すればよいのかを確認することができます。
 また、タスクフレームワークは、キャリアフレームワークと同様、個人単位で見ることにより、個人の強み・弱みを タスクに絞って把握することで、個別の育成・指導を効率よく進めることができるのです。
キャリアフレームワークとタスクフレームワークを活用し、説明できる計画策定を
 企業視点で物事を捉えるためには、タスクフレームワークで現状把握、リソース計画立案を進めることが効果的であると、理解してもらえたことと思います。
 企業導入ですから、この考えが一番初めに無いと、導入の目的が不明確になることや、現場管理者が使いやすいものにならないという状態を引き起こします。

 だからといって、これだけではキャリアパスの提示にはつながらないし、社員にとっては人材像のほうが分かりやすい面もあるので、この両方を使うことによって今迄説明しにくかったことも、驚くほど突破できることになります。

 企業導入の場合は、必須となる考え方です。

 我々が、三菱UFJモルガン・スタンレー証券をコンサルテーションしたときに活用しだした方法で、それ以降のクライアントは、全てこの方法でスキル標準を有効に活用しています。
登録:2010-08-04 10:05:47
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