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コラム
第170話:ITSS・UISSの企業導入時のハードルとは? 〜その2
 スキル標準の企業導入は、その検討のきっかけやステークホルダーが誰かによって、様々なハードルが出現します。それらは、途中で検討をあきらめなければならないほど、導入推進者にとっては大きなインパクトがあります。
 先回に引き続いて、そのパターンを明らかにし、具体的な対応策を探ってみます。

企業導入を検討するきっかけ
 前回も示した通り、検討スタートのきっかけをまとめると次の4点になります。

@経営者、経営層、責任者などが、人材育成の仕組みづくりのために、スキル標準の導入を指示した場合

A経営者、経営層、責任者などが、スキル標準については明言せず、人材育成に力を入れるという方針を出している場合

B現場サイドから声が上がり、人材育成に関する改善策の具体化に迫られた場合

C人材育成担当自身が、現状から人材育成策強化の必要性を感じ、具体化しようとした場合

 @、Aは典型的なトップダウンで、導入意義の共有や社内統制などは整っている場合が多く、比較的スムーズに導入を進めることができる環境だとお話ししました。

 もちろん、社内に向けて浸透させるために、推進者の使命感の強さやリーダシップが必要なことは言うまでもありません。

 しかし、BやCは少し状況が異なります。@、Aに比べて越えなければならないハードルが高くて多いと言えるでしょう。
B現場サイドから声が上がり、人材育成に関する改善策の具体化に迫られた場合
 このケースは、現場の方の意識が高く、企業の人材育成方針や施策に満足していない状況が多く見受けられます。

 また同時に、育成担当者の知識や経験についても、問題がある場合もあります。つまり、現場の経験が長いほど人材育成に関する多くの自論を持つのが普通ですが、その内容が現場の方のほうが育成担当者を上回っているということも多いのです。

 声が上がるきっかけは、セミナーを受講した、もしくは他社の知り合いなど外部の方から情報を得たということが多く、ほとんどの場合スキル診断をしてみると能力が見える化されてよさそうだ、というあいまいなものです。

 もともと現状と育成施策が合っていないなど、自社の育成施策に満足しておらず、その理由は現場の状況を把握していないからだという考えが多いようです。そうすると、As Isの能力を把握するには、スキル標準をベースとしたスキル診断がいいのではないか、という単純なストーリーが出来上がってしまいます。

 そうすると、次の行動としてはインターネット上で検索することになり、たまたまスキル診断ツールを持つ教育ベンダなどのセミナーがあれば飛びつくということです。なければ、ドキュメントを物色しピンポイントで深く突っ込むことになります。

 ここで注意しなければならないのは、自前の仮説を前提として「スキル診断すること」が目的になってしまっていることです。その目的一つで深堀していくという状態です。

 考えをぶつけられた育成担当者は、あまりに具体的な内容だということと、経験の差により、意見の内容の通りに進めることになる場合が多いようです。

 そうでなくとも、育成担当者と現場の関係は微妙であるということと、現場の意見を採用して進めたのだから、という理由付けは大きな意味を持ちます。
偏った意見を見抜く眼が必要
 筆者が目にしてきた中で、現場サイドからの意見でスキル標準導入を進めた場合、結果としてほとんどが経営戦略や事業計画などの企業の意志が入っていないものになっています。

 具体的に言うと、現場から上がってくるのは「ITSSのスキル診断ツールを使えばどうか」ということで、現場の人材はIT業界の中での自分の位置は、という個人視点にしかなっていません。

 そこには、自社のビジネスモデルや将来プラン、目標達成に必要な人材像などは一切ありません。あるのは、IT業界を表現した11職種35専門分野7レベルの有名なフレームワークのどこに自分が位置するか、ということだけです。

 もともとITSSのレベル3は、独力で何でもできるという公式定義なので、普通のIT企業ではかなり上位に位置する人材となります。1度でも教育ベンダなどの提供しているスキル診断ツールを使えば分かりますが、レベル3以下にほとんどの人材が位置づく事実を突きつけられて、現場は急速に興味を失うのです。

 言うまでもなく、その後困るのは人材育成担当者です。
始めたものを途中でやめられない、改善するにしても方法がわからない、とりあえずこのままいくか、ということになりがちです。

 これでは、とてもスキル標準を導入したとは言えません。
企業に導入するのですから、企業視点の考え方が主体とならなければ、仕組みとして成り立ちませんし、継続して活用することもできません。

 導入を推進する方は、スキル標準の中身をよくわかっているということではなく、活用の意義・目的を理解し、自社の戦略を基にしてトップや社員に説明でき、また質問に答えることができないといけません。まさしく、企画力と実践能力、そして使命感が求められるのです。

 次回はCについて話を進めます。
登録:2010-11-13 21:43:49
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