ITSSやUISSなどスキル標準を、企業において有効に活用するには、経営戦略やビジネス目標に合わせてカスタマイズする必要があることを述べてきました。 カスタマイズして社員の皆さんが使えるようにするまでの工程を「導入」と呼び、出来上がった仕組みを使って運用していくことを「活用」と呼びます。 企業導入したスキル標準を活用する際に、気をつけないといけないことが何点かあります。これを端折ったり見落としたりすると大変な苦難が待ち受けることになります。
今回からは、この活用における課題や対処法を明らかにしていきます。
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活用のための仕組みの準備 |
コストとの兼ね合いもありますが、仕組みとしてExcelなどを採用することは、出来るだけ避けたいところです。
PDCAをうまく廻していくため、また運用責任者や担当者の負担を軽くしていくこと、また使い勝手や分析比較の有用性を考えると、データベースを持つスキル管理システムを選択することが賢明です。 初期コストや運用コストが多少なりともかかってきますが、前述のようなメリットが明らかなので、真剣にお考えの企業ほどスキル管理システムや人材マネジメントシステムの採用が顕著です。
当初は、多くの機能を持つERPの人事系スキル管理や、トレーニング体系などの管理も含めたLMSなどは、使いこなすのが難しいのと、スキル標準の考え方に合っていないものが多く、あまりお薦めではありません。
筆者が評価しているのは、スキル標準ユーザー協会のスキル管理ツール「SSI-ITSS」、「SSI-UISS」です。 このツールは、各種フレームワークをビュー的に自由に作成できる機能を持っており、スキル標準準拠のコンテンツが搭載されているのが大きな特徴です。 |
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スキル管理ツール「SSI-ITSS」、「SSI-UISS」の機能 |
このツールはスキルデータを蓄積していくデータベース搭載したもので、一般的なスキル診断ツールのように、毎回同じようにスキルチェックを繰り返すものではありません。 基本的にIPAの導入活用手順に合ったつくりがされており、定義体の変更や独自のものを追加するなど、柔軟性に富んだ機能を持っています。
また、毎年のように変わる企業戦略やビジネス目標に合わせて、人材像やフレームワークを変更・追加する機能を持っており、スキルデータベースはそのままで、目的に合わせてそれらをビューとして簡単に作成できます。
診断ツールを企業の要望に合わせて作りこむようなことをしても、環境や戦略が刻々変わっていく状況には対応できないことは、言うまでもありません。固定化してしまっては、運用に破綻をきたすということです。 |
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スキル管理ツール「SSI-ITSS」、「SSI-UISS」の使い方 |
先述のように大変柔軟なツールで、仕組みに企業の意思をこめることができるものです。つまり、変化を前提にしたツールなのですが、担当者の方からすると、一度作成したものを簡単に変えたくない、という意志が働く場合があります。
これは、ぜひとも再考してもらいたいところで、これだけビジネス環境が変化する中で、競争力を保っていくためには、うまく変化を受け入れることも必要だと考えます。
ましてや、人材像やスキルセット、キャリアパスなどは、運用していきながら企業のモデルとして改善の必要があり、作成したものを変えずに使うということはありえません。
企業戦略は市場環境や将来性、また競合他社をにらんで策定され、それを基に活動する社員の能力は、まさに考え方として連携していく必要があります。同じ戦略を何年も続ける企業は殆どないといってもいいでしょう。事業ドメインも固定化されてはいません。考えもしなかったまったく新しいビジネスに打って出る企業も増えてきました。
富士フイルムが培ったテクノロジを生かして、化粧品やヘルスケアのエリアに進出したことは、驚きをもって迎えられました。
図のように、ツールの活用法としては、大きく次の3つに分けることが出来ます。
・「戦略」の仕組みに活かす 要員配置 採用・調達 ・「評価」の仕組みに活かす 能力・スキル評価 行動・成果の評価 ・「育成」の仕組みに活かす 教育・育成計画立案 目的に合った研修の手配
〜その2は、社内に展開する際の課題についてお話したいと思います。 |
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登録:2011-02-01 16:22:24
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