スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
ITスキルスタンダード研究所
スキルスタンダード研究所についてニュースサービスドキュメントコラムお問い合わせ
コラム
第191話:ITSSはどう使われているのか
 先日、あるITサービス企業の教育部門と組んで、「共通キャリア・スキルフレームワーク(CCSF)」の活用についてセミナーを開催しました。そのあと希望者だけ残っていただき、テーブルディスカッションをしましたが、その中で色々とITSSについての現状も明らかになりました。
ITサービス企業は、CCSFにあまり興味を示さない?
 セミナーに参加されたのは、多くがユーザー系の企業でした。このことだけで一概には言えませんが、やはりITSSはITサービス企業にとって確固たる地位を確立していて、ITSS以外にはあまり関心を寄せない、という状況も考えられます。

 もちろん、これは現在の状況や今後を考えると、あまりよろしいことではありません。世の中の状況が刻々と変化し、ITサービス企業自身にもビジネスモデルの再考が求められています。企業で求められる人材像も変わっていくというのは当然のことと言えます。そのような環境の中で、10年間ほぼ変わらないITSSのフレームワークを使うことが適していると言えるでしょうか?
プロフェッションと人材像
 プロフェッションとは、ITエンジニアの専門領域を指します。ITSSのドキュメントやセミナーの中で、過去から散々言われ続けてきた「職種・専門分野は人材像でも役割でもない」というのは、こういう意味からです。

 ITの世界の中で専門領域として定義すると、現在のITSSの職種・専門分野がそれに当たるということです。この専門領域の中で、どのくらいの能力や経験があるかということが、その職種・専門分野のレベルで表現されています。

 個人視点で、自身がITの世界の中では、どのくらいの位置づけかということを評価するには、適した指標といえます。これを、様々なドキュメントで「企業間比較や調達に活用するパターン」と書きました。

 では、企業でITSSを活用するということは、どういうことなのでしょうか。
「自社には、ITスペシャリスト・データベースのレベル4の人材が30人いる」という言い方は、上記の企業間比較にほかなりません。この数を増やすために人材育成をする、というのも間違いではありませんが、あくまで企業間比較や調達のためです。
 企業のビジネスモデルやビジネス目標は、それぞれ異なります。「自社の目標達成に貢献する人材を育成する」というのが、企業におけるITSS活用の骨格でなければ意味がありません。

 目標達成すれば企業価値が上がり、社員にもよりよい環境が提供できます。ですから、刻々変化する将来をにらみ、企業目標を明確にしてその達成の種に必要なTo Beの人材像を定義する必要があるのです。無いと思いますが、我が社には目標などないなどと言われる企業には、誰も魅力を感じません。

 プロフェッションは人材像ではなく、ITの世界における専門領域を指し、企業で必要なのは人材像であり、ITSSを参照モデルとして作りこみ、しっかり定義しなければならない、ということです。
企業での推進担当者の重要性
 セミナーに話を戻します。セミナー終了後に、希望者だけでスキル標準に関してフリーディスカッションする機会を設けました。

 ユーザー企業、ユーザー系情報システム企業、ITサービス企業と三者三様の参加者でしたが、その中のかなり規模の大きなユーザー系情報システム企業の推進責任者の方から話が出ました。

 自社では、もう何年間もITSSを何も変えずにそのまま使ってスキルチェックをしている、ということでした。人事制度には組み入れず、もっぱら教育と連動しているとの内容でしたが、今年もまた同じ方法でスキルチェックする予定ということでした。

 セミナーは、人材像を各社ごとに策定する必要がある、なぜなら・・ということと、そのためにはCCSFが有効だという内容でしたが、ほとんど理解できていないようでした。

 早くからITSSを企業導入している場合の、自分たちが進めていること以外は余り頭に入らない、という典型的なパターンです。このような場合、エンジニアたちがどう思っているかも、肯定的な先入観で考えていることが多いものです。過去にいいと思って構築した仕組みを淡々と継続しているというイメージでしょうか。

 これは専門領域の中での各個人の能力を把握し、それを上げていくたっめのトレーニングプランを策定・実施するという意味であり、それを分かって進めていれば、それなりに意味が出てきます。しかし、多くの場合、企業目標と専門領域のなかでのレベルアプを混同していて、何もリンクされていないことが多いと言えます。

 ITSS活用の推進責任者・担当者は、しっかり勉強して「どのような目的で、どのような方法を取っていくか」を明らかにし共有していく必要があります。

 近視眼的な見方や、視野の狭い考え、他者の意見を聞かないような頑固な考えでは、いずれ必ず破綻します。先のプロフェッションと人材像の定義をしっかり頭に入れて、育成プランのPDCAだけではなく、仕組みや内容の改善のPDCAも、しっかり廻していくことが重要です。
登録:2012-02-13 12:47:28
 サイトの利用について | プライバシーポリシー | 情報資産管理方針 |
トップページへ戻る