「ITスキル標準」が、2002年12月にリリースされて2年半以上経ちました。この間の大まかな出来事や現在の状況、また今後の動きについてまとめてみました。
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リリースから現在までの流れ |
以下はリリースから現在までの大まかな出来事を時系列に並べています。
2002年12月:経済産業省より「ITスキル標準」v1.0リリース 2003年7月:IPA内にITスキル標準センター設置 「ITスキル標準」v1.1、「研修ロードマップ」v1.1リリース 2003年12月:ITSSユーザー協会設立(任意団体) 31会員 2004年1月:IPA プロフェッショナコミュニティ・スタート(ITA、PM、APS) 経済産業省主催「スキル評価ガイドライン策定委員会」*1 (〜2004年3月) 実施 2004年7月:ITSSユーザー協会 NPOとして再スタート (120会員) 内閣府のレポートの中で「ITスキル標準」の普及の目安が、ITSSユーザー協会の会員数として着目 2004年8月:「ITスキル標準ガイドブック・レビュー委員会」*1 実施 2004年9月:「研修ロードマップ」v1.2リリース 「ITスキル標準ガイドブック」発刊 2004年10月:ITSSユーザー協会 会員数150突破 IPA主催「ITプロフェッショナル育成協議会」*1 (〜2005年3月) 実施 2005年1月:JUAS「ユーザー版スキル標準策定委員会」*2 (〜3月) 実施 2005年7月:IPA プロフェッショナルコミュニティ 3職種追加 (Con、ITS、Op)
*1:委員として参加 *2:オブザーバとして参加 |
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「ITプロフェッショナル育成協議会」で決議された今後のスケジュール |
2004年10月から2005年3月にかけてIPA主催で実施されたこの協議会は、BSCの第1人者・専修大の櫻井教授を座長として、IPA主要メンバ(理事長、理事、情報処理試験センター、ITスキル標準センター)、JUAS代表、JEITA代表、JISA代表、ITSSUG代表、プロフェッショナルコミュニティ代表と、オブザーバとして経済産業省から4名ほどを加え、総勢20名ほどで構成されています。基本的に「ITスキル標準」の現状と課題の認識、及び今後の方針決めをする非常に重要な集まりでした。IPAから報告書が出ていますので、是非ご覧下さい。以下はその時今後のスケジュールとしてIPAより提出され、協議会にて承認されたものです。
(1)スキル標準の改訂 イ.スキル標準本体の「概要」を先行的に改訂し公表します。スキル標準をどの様な目的で活用するのか、構成はどの様な考え方で整理されているのか等の説明を充実します【2005年7月予定】 ロ.現在、各プロフェッショナルコミュニティ(ITアーキテクト、プロジェクトマネジメント、アプリケーションスペシャリスト)で検討しているスキル標準のレビューを改訂提言として公表します【2005年7月予定】 上記「イ」「ロ」を踏まえ、スキル標準の改定内容を具体的に示す「改訂計画」を策定します。その後、この改訂計画をもとに利用者の意見などを取りまとめながら作業を進め、 ハ.ITスキル標準ver.2.0、研修ロードマップver.2.0を公表します 【2006年3月予定】
(2)経営者向けITスキル標準概説書の策定 事業戦略の観点からITスキル標準はどの様に役立つのかなど、経営者に向けたITスキル標準の有用性を解説した「経営者向けITスキル標準概説書」を策定、頒布します【2005年10月予定】
(3)プロフェッショナルコミュニティ活動 @活動成果の公表 イ.既に公表しているITアーキテクト育成ハンドブックに続き、「プロジェクトマネジメント育成ハンドブック」「アプリケーションスペシャリスト育成ハンドブック」を公表します【2005年7月予定】 ロ.ITアーキテクト・コミュニティで検討を進めてきた、「リファレンスアーキテクチャ報告書」を公表します【2005年5月予定】 ハ.これまでの活動成果を発表する、「プロフェッショナルコミュニティ活動成果報告会(仮称)」を開催します【2005年度上半期予定】 A職種の拡大【2005年度上半期】 新たに次の3職種のプロフェッショナルコミュニティを立ち上げます。 ・コンサルタント ・ITスペシャリスト ・オペレーション なお、マーケティング、セールス、ソフトウェアデベロップメント、カスタマサービス及びエデュケーションに係るプロフェッショナルコミュニティについても、立ち上げの可能性について検討していきます。 Bテーマ研究【2005年度】 プロフェッショナルコミュニティでは、2005年度も引き続きITスキル標準の改善やプロフェッショナルの育成を目的にテーマ研究に取り組んでいきます。具体的なテーマは、各コミュニティの委員会で決定します。
(4)各種ガイドラインの策定 @研修ガイドラインの策定 プロフェッショナルの育成に資する効果的な研修の開発に必要な、コース企画者、開発者、講師のそれぞれに必要な要件等を取りまとめた「研修ガイドライン」を策定し公表します【2005年10月予定】 A育成・評価ガイドラインの策定 上記「(3)@イ.」で公表される各職種の育成ハンドブックをベースとして、メンタリングを中心とした育成プロセスを取りまとめるとともに、ハイレベル人材に対する的確な評価方法のモデルをプロフェッショナルコミュニティの支援のもとに取りまとめ、「育成・評価ガイドライン」として公表したいと考えます【2005年度下半期予定】
(5)人材育成・管理のあり方検討 上記「2.」の諸論点で示されたとおり、スキル標準を活用して事業戦略に基づいた人材投資を実現するためには、人事教育部門など特定部門だけの取り組みでは困難であることが浮き彫りになりました。そのため、スキル標準の効果的な活用事例の収集と分析を更に進めながら、経営者、事業部門、個人、及び人事教育部門それぞれの立場における人材育成・管理上の役割をガバナンスの観点から整理し、全社最適なスキル標準の活用要件を取りまとめ、公表したいと考えます【2005年度下半期予定】 |
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では、現状どうなっているか |
皆さん覚えておられますか。2003年にIPAから小冊子「ITスキル標準概説書」が、発刊されています。その後ろの方に活用事例が載っています。殆どが人事制度に使いました、というものです。それしか事例が無かったので、仕方が無かったとは思いますが、それらの多くは、現在取り上げられることはありません。私がこのコラムでも何度も強調していますように、人事制度は会社戦略であり、「ITスキル標準」をそのままの形で導入することなど、言い換えると戦略を標準化することなどあり得ないのです。人事担当の方が、制度化することを目的として導入されたとしか思えません。「ITスキル標準」は人材育成のためのツールです。しかし、製品のようにすぐ使えるものではなく、企業が明確な意思を持って、人材育成のために活用しながら良くしていく、という代物です。もちろん評価のために生かしていくことは重要ですが、少なくとも企業の戦略や目標を議論した上で、取組む必要があります。「ITスキル標準」は人事等級制度では無いのです。人事制度だけではなく、とりあえずやってみるという診断ツールの使い方もよくありません。企業戦略から来る企業自身の目標人材モデルが無い限り、ギャップ分析もできないし、次のステップもありません。まだ、人事制度にそのまま取り入れたり、とりあえず現状把握という事で診断ツールを使おうと思っておられる方々は、もう1度良くお考え下さい。私が当然の事を言っていると、すぐにお気づきになるはずです。 経済産業省やIPAからも頻繁に取上げて頂いていますが、ファイザー社の導入事例は、私の知る限り、「ITスキル標準」の考えを守りながら、企業として如何に人材育成に投資していくかということに正面から取組まれ、自社の目標人材モデルを構築された初めての事例です。その後、オムロン・ソフトウェア、テンプスタッフ・テクノロジー、リクルートと、同様の取組みを開始され成果を上げつつあります。「ITスキル標準」のリリース時から取組まれていた伊藤忠テクノサイエンスも、紆余曲折の末、この考えと構築手法を採用され、取り組みを開始されました。 このように、「ITスキル標準」の考え方をベースに、企業戦略から自社目標人材モデル構築というトップダウンの手法で取組まれている企業は、他にはあまり見当たりません。初期理解のまま人事制度にそっくりそのまま取り入れられたか、とりあえず診断ツールだけ実施してそれで終わってしまっている、もしくは、単純に「ITスキル標準」を参考にして独自のものを作られたり、自社のものに「ITスキル標準」をマッピングしてみただけ、というようなものばかりです。しかも大変複雑なものも多いようです。人材育成は継続していくことが重要ですが、どうやって継続させようとされているのか、一番インパクトを受けるのはエンジニア個人なので、心配になります。 このような状態で、普及が進んでいると言えるでしょうか。 もし、そう思っておられる方がいらしたら、あまりに現状をご存じないとしか言いようがありません。
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なぜ普及に弾みがつかないのか |
「ITスキル標準」は、誰が責任を持って普及させるべきなのでしょうか。
リリースした国(経済産業省)でしょうか。 維持管理の責任を受け持ったIPA・ITスキル標準センターでしょうか。 「これを入れると何のメリットがあるのか」と言っている方が経営する企業でしょうか。 「そんなことをしている時間もお金もないんだ」と言われる方が経営する企業でしょうか。 「IT系企業に戦略は無いんだ」と開き直る方が経営する企業でしょうか。 理解もせずに「取り入れろ」と指示を下す方が経営する企業でしょうか。 指示されたからと考えもなしに進める担当者しかアサインできない企業でしょうか。 認定制度をやらせろと集まってきている企業や個人でしょうか。 「ITスキル標準」準拠と名打ってトレーニングを提供している教育ベンダーでしょうか。 自作の診断ツールで診断/コンサルティングビジネスをしている企業でしょうか。 会社から給料をもらって、できるだけ手を抜こうと考えているリスク感覚の欠如したエンジニア個人でしょうか。 TVで中国やインドの特集を見て、「彼らはすごい」とひと事のように言っている危機感の無いエンジニア個人でしょうか。
私は、「人が全てだ」、「人材育成が重要だ」と経営者の殆どの方が言われていながら、自分では理解したり努力されたりしない、人材開発などの担当に優秀な方をアサインしない、そして人材育成のために投資することを考えない、という「人を育てるということを忘れてしまったような」有り得ない現状に、なぜ至ってしまったかを考えないといけないと思っています。 「夢を持って」と「どうやって生き残るか」という2つの課題を、同時にクリアする必要があります。 |
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登録:2011-01-30 15:36:26
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