スキルスタンダード研究所は、各業界へのスキル標準の活用・推進、プロフェッショナル人材育成に向けたコンサルティングサービスを提供します。
ITスキルスタンダード研究所
スキルスタンダード研究所についてニュースサービスドキュメントコラムお問い合わせ
コラム
第30話:「経営戦略からIT戦略へ」その2〜プロジェクト成功のキーは「ITスキル標準」〜
先回に続き、IT戦略を紐解いていきます。今回は経営視点からプロジェクトを捉え、その中でどう「ITスキル標準」を活用するかということをお話しします。
赤字プロジェクト増加の影響
日経コンピュータなどの情報誌でよく取上げられていますが、赤字プロジェクトの企業に及ぼす影響は、ますます甚大なものになっています。失敗プロジェクトで何億円もの赤字を出し、それを埋めるためにさらにいくつものプロジェクトを手がけ、そこでもまた赤字を出すという悪循環で、さらに悪化のスパイラルに入ってしまうというものです。日経ITプロフェッショナル誌の調査によると、プロジェクトの成功率は、何と26.7%の低い値だということです。ですからプロジェクトマネジメントが重要だということで、優秀なプロジェクトマネージャーを如何に養成するか、また如何に獲得するか、はたまた自社に如何につなぎとめるかなどの議論が絶えません。ここ数年はPMブームのような感さえあります。
ハードウェア中心の売り上げを立てていた時期は、ソフトウェア開発の赤字など問題にならないくらいの利益を上げていましたが、昨今ハードウェアはどんどん高性能になっていきますが、逆に価格は加速しながら下がってきています。結果として、ソフトウェア開発での赤字プロジェクトは、完全に白日の下にさらされることになりました。従ってよく言われる「どんぶり勘定」でのプロジェクト管理など犯罪に等しく扱われ、当たり前のように厳しくコスト管理がされるようになっています。そんな中で、PMの責任が益々重大になり、同じくITプロフェッショナル誌が大手ITベンダでの調査で、技術者の10人に1人しかPMになりたいと思っていないという驚愕の数字を出しています。日経コンピュータ誌でも最近特集された「PM残酷物語」だというわけです。
何故成功プロジェクトが減ったか
失敗プロジェクトはPMの能力不足が原因だ、と言ってしまうとそれで終わりですが、ではそれ以外の外的要因は無いのでしょうか。
昔のメインフレーム全盛時代は、ユーザーは1ベンダの提供するソフトウェア/ハードウェアを使っていました。ところがオープン化の波で複数のベンダが関係してくることになりました。また、全社規模のシステムを対象としたプロジェクトが増え、影響範囲が拡大し、社内の利害関係者(部署)が増えました。そうすると複数のサブ・プロジェクトが一斉に走ることになり、難易度が驚異的に増してくるわけです。ということは、PMの責任が増し、より高い管理能力が要求されることになります。このような状況下では、1人で全てを管理するのは土台無理な話で、役割分担できるそれなりに能力のあるリーダークラスのメンバが必要になってきます。では、次のPMをどうやって育てているかというと、OJTということになりますが、これはかなり名ばかりの仕組みで、うまく機能していないというのは、大方の関係者が認識していることです。
成功プロジェクトは本当に成功しているか
では、赤字になっていないプロジェクトが、本当に成功していると言えるでしょうか。
実際のところは、うまくやればもっとマージンを出せたのに、そうなっていないケースもあると考えています。優先順位を最適化し、適正なメンバを効率的に配置し、不足の事態に適切に判断し、対応していたら...どうなっていたか考えるべきものも多いと思います。
また、経営者の方が「うちにはPMがXX人いる」と言っておられるのをよく耳にしますが、それは事実でしょうか。「彼が当たってうまくいかなければ仕方がない」「運が悪かった」というのもよく聞きます。
逆に「うちにはこの案件に対応できるクラスのPMがいない、だから見送ろう」という話もよくあります。それは事実でしょうか。
これらが、自らを正確に把握していないという原因からきているとしたら、大変な無駄や大きな機会損失になっているということです。
では、どう考えるか
述べてきましたように、広範囲の役割や責任を個人のPMレベルでこなすことは、不可能だと言えます。まずやらなければいけないものに、プロジェクト管理手法への対応があります。PMBOKもそうですし、色々な団体で実績のある方々が経験を元にプロセスの標準化をされ、活用できるものは沢山あります。しかし、誰もがその通り実施していけばうまくプロジェクト管理ができるわけではありません。手法というものは、能力のある人間がうまく使ってこそ初めて、より効果的・効率的になるのです。システム構築の手法もそうです。プロジェクトは、どれ1つとっても同じものはありません。標準化された手法の全体を理解した上で、PMがその場その場で必要なものを判断し、時には削り、時には順序を逆にして柔軟に進めて行くのです。
そのようなPMの持つスキルを可視化できるのが、「ITスキル標準」です。スキルセットで表現できれば、単純なOJTではなくて、どのようなスキルを取得していけば目標に近づけるかが、非常に明確になります。また、実績の測定や評価もし易くなり、モチベーションアップにもつながります。さらに人材育成や評価の観点で継続的に進めていける利点もあります。また、PM自身だけではなく、プロジェクト構成員を「必要人材モデル」として「ITスキル標準」で定義でき、このプロジェクトにはどのようなスキルを持ったメンバがどのくらい必要かが明確になります。そうすると、システムの影響範囲が広がりプロジェクト運営が複雑になっても、全体最適を考えることができ、優先順位や最適配置が可能になりますし、運営上の状況判断による変更などにも迅速に対応することができます。
また、先ほどの成功プロジェクトであってもさらに効率化するということや、自社の実力を知ってビジネスを進めていくという上でも、「ITスキル標準」を有効活用できます。
それらを実現していくには、「ITスキル標準」を普通に使っていく土壌を作り上げる必要があります。
大きなチャレンジですが、みんなの力で成し遂げましょう!
登録:2011-01-30 15:38:05
 サイトの利用について | プライバシーポリシー | 情報資産管理方針 |
トップページへ戻る