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コラム
第59話:公表後のITスキル標準 ITSS V2についての反響
 4月1日にITSS V2がリリースされて1週間が経ちました。今までずっとITSSに肩入れしてきた方々、V1.1は成熟していないと活用には時期尚早とV2を待っていた方々、もう1度くらいは使えるか確認しても良いだろうと思っていた方々、マスコミも含めて多くの方々が様々な思いで期待して待っていました。V2を自由に見れるようになり、そういった方々がどのような反応を示されているか、現場感覚で捉えてみました。
様々な方々からの反響
 ITSSの場合はV1がリリースされて3年以上経ってのバージョンアップですので、その間関わっていなかった方々は、今回初めて見るに等しい状態だと言えます。ということは、継続的に何らかの形で接していた方々と、それ以外のあまり知らない方々の大きく2通りの対象が存在すると考えられます。
 以下は、私が会った様々な立場の方々の意見を単純に羅列したものです。

<肯定的>
・全体に使う側を配慮された造りになっている。
・構造化され、格段に分かりやすくなった。
・スキルディクショナリの採用により、スキル熟達度の構造化、簡潔化ができている。
・達成度の選択方式によって、企業規模に左右されにくい柔軟な仕組みとなった。
・概要書の位置づけが明確になり、内容も詳細化されて分かりやすい。
・ポケットブックが大変効果的である。

<否定的>
・以前より構造が複雑で余計に分かりにくくなった。
・概要で100ページ以上あり、概要の役割を果たしていない。
・概要の部分が論文のようになっていて分かりにくい。研究者や学生対象のように感じる。
・概要書の内容が分かりにくい。誰が対象なのか分かっていないのではないか。
・未だに導入方法や活用方法についてのガイドが無く、中途半端である。
・あいかわらずスキル熟達度と達成度が分かりにくい。
・スキルディクショナリの位置づけ、使い方が不明確である。
・職種や専門分野に品質管理が無いのはおかしい。
・説明会などでのV2の説明がうまくない。プレゼンテーション能力に問題あり。
・V2に対するプロフェッショナルコミュニティの貢献が見えない。
・V2に対するITSSユーザー協会の役割が見えない。
・ETSSとの関連がますます分からなくなった。
・ユーザ版ITSSとの関連に不安がある。
ITSS V2の良さ
 どのような物でもそうですが、必ず反対される方々は存在します。今回も余計に分かりにくくなったという声をよく耳にします。ただ、私も旧バージョンまでは、色々な反対意見に言い返すことができないことも多い状況でしたが、V2は全く違います。少なくとも前述の否定的な意見に関しても、根拠をつけた反論ができます。これは大きなことだと自分でも感じています。
 ITSSの意義を理解して何とか活用できないかと考えていた方でも、今までのバージョンでは何かしっくり来ない、物足りないと思われていた方が多いようです。そのような方は日ごろからアンテナを張り、新しい資料を見つけては取り寄せて読み、セミナーがあれば出かけて勉強し、場合によっては講師を捕まえて質問したり、何とかうまく使える道筋が無いかと懸命に努力されています。
 そういう方がITSS V2を見ればその格段にアップした使い勝手に気づくことになります。

・日本語文章の塊りの旧バージョンから、目的毎に分類された構造体に大きく進化している。
・活用についてのITSSの位置づけが、明確に記載されている。
・構造化されたことからメンテナンスなど今後の効果的な運用が期待できる。

 ここではこの3つに集約しましたが、V2はそれだけでは表せない程画期的な内容に変貌を遂げています。ただ、何がどう変わったかの表面的な記事しか載せていなかったり、識者のコメントを曲解したり、また一部を取り上げて意図と合わない内容にしたりというニュース媒体が目立ち、ITSSを本当に良く理解している記者が少ないのが大変気にかかります。
活用についての位置づけ
 先の構造化の話は、ITSS V2の内容をよく見ていただければ分かりますが、活用についての位置づけの明確化は、以下の部分からはっきりと読み取ることができ、強い意図を感じます。

ITSS V2概要・第1部より抜粋:
@「企業によってビジネス戦略が異なる以上、投資すべき対象職種も異なる。このため、ITスキル標準を企業へ適用する場合には、ITスキル標準の定義内容は共通指標として活用し、自社のビジネス戦略に合わせて企業固有の定義内容に置き換えた指標を設定することが求められる。」
A「各企業は、ITスキル標準を共通指標として現場で特定できるレベルで解釈あるいは再定義し、企業固有の指標として適用する。これにより、企業間の解釈による差異を少なくすることができる。」
B「ITスキル標準は、事業活動における個人の貢献を的確に評価しようとする観点から活用することが必要である。人材投資という経営判断やビジネス戦略が伴わないままITスキル標準を導入することは、自社のビジネスや技術を担い、競争力を支えていくプロフェッショナルの重点育成策にはつながらない。ビジネス戦略に乏しく、単に人事管理上の便宜性や処遇制度の見直しのために利用するだけでは、逆に個人のモチベーション低下につながる恐れもある。」
C「また、ITスキル標準の位置づけは、基準や仕様ではなく、参照モデルである。すなわち各社がビジネス戦略の実現を目的に、人材の育成に関わる様々な立場の人が人材育成について共通の認識を持つために参照する指標ということである。「標準」といっても、自社のビジネス戦略の実現に必要な部分だけを参照すればよい。すべてを必ず使う、そのまま使うという位置づけにはないという理解が必要である。」
さらにもう一歩...
 ただ、今回まだ不足しているのは、活用するための導入手法や手順です。まず企業に入れなければ活用できないわけで、その部分のガイドを早急に策定する必要があります。しかしながら、導入実績・経験がなければ何をどうするかが不明確で、うまくガイドできないのは当然です。これからITSS V2の普及を、さらにもう1段加速するには必須のものです。導入事例集も含めて、これらをどのように世に出していくかが、今後を左右する大きなキーだと考えています。
登録:2011-01-30 15:44:58
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